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2008年6月15日 (日)

エルパソの旅 3

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ふだん旅に出ると午前中から夕方までフルに動くことが多いけど、気温40度以上のエルパソでは、せいぜい4時間が限度だった。

だからいちばん暑くなる午後2時すぎにはホテルに戻り、シャワーを浴びて本を読んだり窓の外の景色を眺めながらぼんやり過ごすことにした。ま、ジジイの旅はこのくらいでいいのかもしれない。

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ホテルの部屋からの眺め(東) 夜明け前のフランクリン山脈。

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ホテルの部屋からの眺め(西) 丈の低い草が生えているだけの砂漠の岩山。

本や景色にも飽きてうたた寝をし、気がつくと午後7時をすぎている。この時間になると、さすがに太陽も西に傾いている。まだ外は昼間の明るさだけれど、午後の強烈な陽射しではなさそうだ。で、ホテルを出てあたりを散歩し、適当にレストランを見つけて夕食を取る。

初日、2日目と同じことをつづけるうち、7時ごろから暗くなりきるまでの2時間近くが、エルパソでいちばん美しい時間であり、またいちばん気持のよい時間であることに気づいた。

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昼間の抜けるような青空もいいけれど、暗くなりかけ、少しずつ藍が濃く深みを増していく空と、その下で徐々に闇に溶けていく風景は、空気が乾いている砂漠だからだろうか、マクドナルドの看板やら何やら昼間のアメリカ的な即物性が一変して神秘的な感じすらする。

しかも真昼の苛烈な陽射しはなく、暖かで柔らかい風が肌をなでてゆく。なんとも心地よい。この風景とこの風のなかにいるだけで、エルパソに(さしたる理由もなく)来た甲斐があると思った。

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陽が傾いたとはいえ、この町でジョギングしている人がいるのには驚く。

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ホテルはダウンタウンから車で10分ほどのところにある。エルパソはダウンタウンからスプロール状に広がった町のつくりになっている。

旧市街のダウンタウンはどちらかというとメキシコ人相手の店が多く、エルパソの(特に白人の)住民が行くレストランやカフェやファスト・フードはロードサイトに散らばっているから、車がないとどうにも動きが取れない。ホテルの周辺を歩いていても、人を見かけるのは駐車場と店の間だけで、歩行者とすれ違うことはほとんどない。

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カフェの屋外テーブルに座って陽が沈むのを眺めていると、文字通り時間のたつのを忘れてしまう。ホテルまでの帰り道は人けがないから、暗くなりきる前に帰らなければならない。でもテーブルを離れがたくて、もう少し、もう少しとなかなか腰が上がらない。

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ホテルへ戻り部屋から外を見ると、岩山に三日月が浮かんでいた。

この夜はホテルのシャトルバスを頼んで、フランクリン山脈中腹の、町を見下ろせる展望スポットへ出かけることになっている。

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わお、と思わず声が出た。手前がエルパソの町。遠くのひときわ輝いているあたりがメキシコのシウダー・フアレス。人口密度の差が一目で分かる。その間に、国境であるリオ・グランデ川が流れている。

無数の灯りひとつひとつの下に、ひとつひとつの生があるのかと思うと、旅の終わりに、ちょっと切ない気分になる。

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コメント

素晴らしい旅行記をありがとうございました。
最後の写真、街の光に私もちょっとうるっときましたよ。

投稿: 鮎 | 2008年6月15日 (日) 22時49分

楽しんでいただけたなら嬉しいです。
素人写真ながら、この旅では少し気合を入れて撮りました。なかなか空気や匂いを写すまではいかないけど、旅の雰囲気を多少なりとも感じでいただければ幸いです。

投稿: | 2008年6月17日 (火) 07時23分

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