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2008年6月14日 (土)

エルパソの旅 2

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ニューヨークの地下鉄駅にある自動改札と似た機械に30セントを入れてバーを押すと、バーが回転して人が1人だけ通れる。気がついたら誰にも何も言われず、地下鉄に乗るのとまったく同じようにアメリカを出国してしまった。

サンタフェ橋の歩行者通路を歩いていくと、アメリカ合衆国とメキシコの国旗がひるがえっている。ここが国境か。

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鉄条網から下をのぞくと、コンクリートの護岸堤にはさまれた運河みたいな細い流れが見える。え? ひょっとして、これがリオ・グランデ川?

なんだか、がっかりしてしまった。もっと雄大な国境の川を想像していたんだけどなあ。

まあ、冷静になって考えてみれば、小生のリオ・グランデ川のイメージはほとんどが昔の映画によってつくられている。

西部劇の古典、『リオ・グランデの砦』や『リオ・ブラボー(リオ・グランデのメキシコ側の呼称)』。少し新しいところでは(いや、ちっとも新しくありません。1970年代)、『ゲッタウェイ』(サム・ペキンパー監督の古いほう)やエルパソが舞台になった『ボーダー』。

そもそもエルパソへ行ってみようという気になったのも、これらの映画でエルパソとリオ・グランデの風景に惹かれた記憶が頭の片隅に残っていたからかもしれない。

ジャック・ニコルソンがエルパソの国境警備官になった『ボーダー』は、メキシコからの不法入国者の問題をリアルに認識した最初の機会だったと思う。

その後、NHK特集で「ウェット・バック」と呼ばれる密入国者がリオ・グランデを渡る映像を見た記憶がある。そのときのリオ・グランデは、もっと広くて滔々たる流れだった。

数年前に見た『メルキアデス・エストラーダ3度の埋葬』でも、そうとは明示されてなかったけど、トミー・リー・ジョーンズたちが渡った激しい流れはリオ・グランデだったはず。

などと言ってもはじまらない。ともかく、ちっともグランデでないリオ・グランデを渡る。

メキシコへの入国も、同じ自動改札。ここでも誰にも何も言われず、パスポートも何も求められずに、30セントのコインを入れてメキシコへ入国した。

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国境のメキシコ側はシウダー・フアレスの町。もともとエルパソとひとつの町だったけれど、アメリカ・メキシコ戦争の結果、リオ・グランデ川が国境になって2つに分れてしまった。

もとはひとつの町だから、エルパソとシウダー・フアレスの町のつくりや建物は共通しているはずだ。でもエルパソは、その後の近代化でアメリカの都市らしい表情を持ち、こちらのシウダー・フアレスは150年前の2つに分かれる前の町のたたずまいをそのまま残しているような気がする。

低層のレンガづくりの家屋。派手な色づかい。サンタフェ橋からつづく道路の両側には、アメリカから来る観光客(そんなに多くない)に向けて両替店、ブーツや銀細工を売る土産物店や食堂が並んでいる。

この日はウィークデーで、観光客向けのオープン・マーケットはほとんどが店を閉めている。そのせいか寂れた感じがする街路に、容赦なく太陽が照りつける(上の写真は、そこから脇へ入る通りのものです)。

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ともかくシウダー・フアレスのメイン・ストリートである9月16日通りへ出て、グアダルーペ・ミッションを目指した。

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ミッションの前に公園がある。この日も摂氏41度。雲ひとつない快晴。国境を越えてここまで来るだけで、刺すような陽射しに焼かれて肌がちりちりする。そろそろ歩くのも限界で、ここでひと休み。同じように日蔭を求めて、たくさんのメキシコ人が座っている。

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男たちがつば広のカウボーイ・ハットをかぶっている理由がよく分かった。小生はキャップをかぶっていたけど、これだと首の後ろが直射日光にさらされてしまう。小生にはまったく似合わないと思うけど、カウボーイ・ハット(もっと大きなソンブレロでも!)がほしくなる。

30分ほど休んで、周辺を歩くことにする。

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この日の朝、エルパソのホテルで朝食を取りながら新聞を読んでいたら、シウダー・フアレスで1人の警官と2人の州調査官が麻薬密輸組織の手で殺された、という記事が載っていた。警察署のドアに殺人予告リストが貼られていたそうだ。

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今年、シウダー・フアレスでは400件以上(!)の殺人が起きていて、その大部分が麻薬組織がらみだという。この町ではアメリカへの麻薬密輸が最大の「産業」で、組織にかかわっている警察官や公務員も多いらしい。

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国境までホテルのシャトルバスで送ってもらったときも、運転手氏が、「メキシコ人は皆いい奴だけど、麻薬組織の人間だけは危険だ」「警官に話しかけられても信用するな」と言っていた。

エルパソの観光案内所の女性も、「シウダー・フアレスでは細い通り、人気のない通りに1人で入らないように」と忠告してくれた。

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しばらく滞在していればなんとなし町の気配が分かってくるものだけど、ほんの数時間の町歩きでは自重して、にぎやかな通りを選んで歩く。

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メキシコのプロレスラーは子どもたちのヒーローであり、ある種の文化的存在でもあるみたいだ。

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30分ほど歩いてまたしても限界に近づいたので、食堂に入ってランチ。アボガドのペーストとトルティージャ。チキンとビーンズ。

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小生はじめ何人かの観光客がいるのを見て、流しの2人組が入ってきた。

メキシコへ入って4時間。短い時間だったけれど、これ以上炎天下を歩けない。アメリカへ(!)戻ることにする。

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サンタフェ橋をもういちど渡り、入国審査を抜けてアメリカ側の道に出たすぐのところに公衆電話があった。一緒に審査の列に並んでいたメキシコ女性が電話をかけている。話す相手はエルパソにいる親戚か友人か。それともこちらで働いている恋人なのか。

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コメント

自分は25年前にサンディエゴ経由、ティファナからメキシコに入国した経験があります。

サンディエゴのリゾートな雰囲気から一転、猥雑で危険な匂いのするティファナ=メキシコに少しおののいた自分を憶えています。

投稿: 812SH | 2008年6月16日 (月) 21時51分

私はほんの数時間滞在しただけで、とてもメキシコへ行ったなんて言えませんが、それでもアメリカと違う混沌とした空気を感じました。フアレスに映画で知るティファナのような歓楽的な雰囲気はありませんでしたが、でも夜になれば分からないですね。

投稿: | 2008年6月17日 (火) 07時19分

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