南部へ・「三日月」号の旅 1
ニューヨーク発ニューオリンズ行きの列車「クレセント(三日月)」号は、毎日午後2時15分にマンハッタンのペンシルバニア駅を出発する。メキシコ湾に面した南部のルイジアナ州ニューオリンズまで、2200キロをおよそ30時間かけて走る。
ニューヨーク市内を地下で抜けニュージャージー州へ出ると、都心から20分ほどで、もうこんな風景になる。このあたりはニューアーク空港への往復で通るし、フィラデルフィアまでは数カ月前に行ったことがあるのでなじみがある。
クレセント号の車内。定員2人の個室で、夜には座席が簡易寝台になる。
小生、鉄道マニアではないので、なぜ列車なのかと聞かれても返答に困る。時間もかかるし、料金も高い。おまけにこのラインは、マニアが好む大景観があるわけでもない。地図を見ても途中に山脈も海もなく、ひたすら平原を走る。
あえて答えるなら、それが自分の旅のスタイルとでも言おうか。空の飛行は点から点へ飛ぶだけで、点と点の間に線が引けない。その土地を見て、感じて、移動したという実感が湧かない。だからどこへ旅するときも、できるだけ列車を組み込むようにしている。
アメリカは車社会で、インフラもそのようにできているから、ほんとうは車で走るほうがロードサイドの風景が面白いんだろうけど、あいにく私は30年近く車を運転していない。
北フィラデルフィア(ペンシルバニア州。午後4時)。ペンシルバニアはかつて鉄鋼産業で栄えた地域だけれど、今は衰退し、フィラデルフィア郊外には廃工場が目立つ。かつて労働者が住んだ周辺の家々も人気が少なく空地も目立つ、淋しい風景。
ウィルミントン付近(デラウェア州、午後4時半)。町と町の間隔が大きくなり、人家が少なくなる。線路の両側にはこんな林が延々と続いている。下草は少なく、木漏れ日が差し込んでいる。樹木の種類は違うけれど、武蔵野の明るい雑木林みたいな感じ。
ワシントン(ワシントンDC、午後6時半)に着いた。駅そのものは、首都とも思えないほど小さく、乗降客も少ない。国会議事堂が夕陽に照らされていた。

アレクサンドリア付近(ヴァージニア州、午後7時)。夕焼けのなかをひたすら走る。
マカッサス付近(ヴァージニア州、午後7時半)。ニューヨークを出てからここまで、一度も畑を見なかった。このあたりまで来て初めて延々と広がる麦畑と牧草地を見る。
シャーロットビル駅(ヴァージニア州、午後9時)に停車。まだ空にかすかに青味が残っているけれど、間もなく暗くなるだろう。
シャーロットビルを出た列車は、グオーンという汽笛をしじゅう響かせながら闇のなかを突っ走る。カーブがあるわけでも踏切があるわけでもないから、線路を横切る動物(あるいは人?)への警告だろうか。簡易ベッドに横になると揺れが心地よく、汽笛に耳を傾けているうちに眠ってしまった。
無人のシャーロット駅(ノース・カロライナ州、午前2時半)で、ちょうど目を覚ます。
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コメント
NYから南部へのロードムービーが始まりですね。
今後の展開が楽しみです。
投稿: 812SH | 2008年6月 8日 (日) 19時06分
待ってました!!
つづきが楽しみです。
しかし・・・・写真が巧い
投稿: 鮎 | 2008年6月 9日 (月) 00時48分
>812SHさま
ロードムービーなんて言っていただけると、嬉しいです。少しでも空気を感じていただければ。
>鮎さま
列車の中からの写真はガラス越しなので(それも汚れた)、けっこう苦労してるんですよ。
しかも私のはコンパクト・デジカメで、シャッター・ボタンを押してから実際にシャッターが切れるまでのタイム・ラグが大きく、走っている列車からだとほとんど山カンです。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる、ってとこですか。
投稿: 雄 | 2008年6月 9日 (月) 07時51分