土曜の夜のブルックリン・ミュージアム
ブルックリン・ミュージアムは毎月第1土曜の5時から通常展示が無料になり、それだけでなく色んな催しが開かれる。催しもすべて無料だから、夜遅くまで人々でいっぱいだ。
いまミュージアムでは「MURAKAMI」「UTAGAWA」という日本美術の展覧会が開かれているし(5月3日参照)、隣のブルックリン・ボタニカル・ガーデンは八重桜が満開で「HANAMI」フェスティバルだから、この日のプログラムは日本関係のものばかり。
音楽が2つ(般若帝国とおおたか静流コンサート、百々徹のジャズ・コンサート)。映画が2本(溝口健二『歌麿をめぐる5人の女』、今敏のアニメ『ミレニアム・アクトレス』)。アーチストMegumi Akiyoshiのパフォーマンス。「MURAKAMI」と「UTAGAWA」をめぐるトーク・セッション2つ。日本人DJによるダンス・パーティ。
これが全部無料なんだからすごい。スポンサーになっているのは、若い層向けのユニークな戦略で成功しているスーパー・マーケットのターゲット。ターゲットにとっては社会還元でイメージを上げ、美術館にとっては多くの人に足を運んでもらえるチャンスをつくる、どちらにとってもプラスになる仕組みだ。
どれにしようかと迷った末、おおたか静流のコンサートと溝口の映画に決めた。
おおたか静流のアルバムは2枚ほど持っている。けっこう好きです。それにしても、ブルックリンで彼女を聞けるとは思わなかった。尺八デュオとの共演で、おおたか静流の持ち歌もこうして聞くと日本のわらべ唄みたいに聞こえてくる。
会場は美術館1階のホール。このフロアの展示はアフリカ美術で、ホールには大きなトーテムも置いてある。臨時の出店も出ていて、ドリンク、アルコール類、サンドイッチを売っている。飲んだり、食べたりしながら音楽を楽しめる仕組み。日本の美術館では到底考えられないだろうね。
溝口はいつか全作品を見ようと思っている。と言いつつ、せいぜい代表作4、5本を見ているだけなので、未見の『歌麿をめぐる5人の女』はいい機会だった。開場を待って並んでいると、前にいた白人の老夫婦に「日本人か」と声をかけられ、話しているうちに奥さんが溝口ファンだということが分かる。うーむ、溝口ファンなんて、今は日本でだってそうそうお目にかかれない。
映画が終わって、おおたか静流を聞いたホールに戻ると、そこはクラブ(「ク」でなく「ブ」にアクセントがあるほう。私らの世代ではディスコと呼ぶ)と化していた。ごった返したホールは、日本人DJによる音楽に合わせて踊る人あり、談笑する人あり。夜10時、美術館とはとても思えない光景です。
ホール隣の「UTAGAWA」展会場を覗くと、こちらも2日前の午後に来たときより遙かに多い人が浮世絵を見ている。ミュージアム・ショップも日本関係のグッズを集めて盛況。
最近は日本の美術館も金曜夜に遅くまで開けてるようだけど、ここの美術館の人を集める仕掛けは、発想も規模もまったく違う。文化的アミューズメント・パークとでもいったらいいか。ともかく美術館がこんなふうにみんなに開かれているのは楽しい。
ショップで買った浴衣と刀を持って、村上隆の前で記念撮影。
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コメント
>うーむ、溝口ファンなんて、今は日本でだってそうそうお目にかかれない。
半年くらい前、やはり溝口特集の映画館パンフを持ってる老人ご夫婦が、銀座四丁目竹葉亭の待ち椅子に坐ってました。思わず声かけちゃいました。「ここは、うな丼が美味しいですよね!」
ちよっと間抜けでした。
投稿: | 2008年5月 5日 (月) 09時47分
投稿: aya | 2008年5月 5日 (月) 09時51分
溝口を見て竹葉亭ですか、いいですね。私は白焼きも好みですが。
去年は溝口の国際シンポジウムも開かれて、溝口にももう一度注目が集まってるみたいですね。学生時代に『雨月物語』を見てそのエロティシズムに驚きましたが、『歌麿』も当時(1947)としてはぎりぎりのエロと笑いが散りばめられてて、楽しく見ました。
投稿: 雄 | 2008年5月 5日 (月) 22時14分
おおたか静流をブルックリンで聴く!!!なかなか面白そうですね。私もかくれ「おおたか静流」ファンですが、それにしても、誰がプロデュースしているのですかね。なかなか彼女を出演させようというプランにはならないと思いますが。
投稿: 正 | 2008年5月 7日 (水) 11時46分
誰なんでしょうね。でも知ってる人は日本のディープな情報に詳しくて、イースト・ヴィレッジのレンタル・ビデオに行くと私が見てない日本映画がごろごろしてます。日本のマンガやアニメの話になると、ぜんぜんついていけないし。
投稿: 雄 | 2008年5月 8日 (木) 11時58分