ヴィレッジのジャズ・クラブで徹夜
近所のyuccaさん夫妻に誘われて、土曜の深夜、ウェスト・ヴィレッジのジャズ・クラブ「smalls」に出かけた。ヴィレッジ・ヴァンガードの近く、西10丁目に面して目立たない入口がある。ガイドブックに載っているような店ではないから、誘われなければ来ることはなかったろう。夫妻に感謝。
店のビラには「NY's Cutting Edge Jazz Club」とあった。とんがったジャズ・クラブ、ってとこかな。
店はカウンターと椅子席で、30~40人で一杯になる適度な密室感。パーカーやマイルスの写真が飾られた店内はいかにも手づくりで、寄せ集めの椅子やベンチやソファーにカップルが思い思いのかっこうで座り、リラックスしてジャズを聴いている。観光客の姿はない。20ドルのチャージ(週末はドリンク別)で、出入り自由、夜通しいても構わない。
この日は土曜の夜とあって、3グループが出演する。店に入った午後11時には、2グループ目のEmilio Sosa & Tango Jazzが演奏していた。
ピアノ・トリオにテナー・サックスとアコーディオンのクインテット。メンバーはアメリカ在住のラティーノ(アルゼンチン? スペイン?)だろう。バンドネオンでなくアコーディオンが入っているのは、コンチネンタル・タンゴのミュージシャンだからか、あるいはバンドネオンではジャズのリズムとインプロビゼーションに対応しにくいのかも。
タンゴやミロンガや、マイナーな旋律の曲。タンゴとアヴァンギャルド・ジャズが混交したみたいな、魅力的な演奏。東欧のロマ・ブラスバンドの匂いもある。皆かなりの腕ききと見たけど、なかでもアコーディオンのインプロビゼーションは、初めて聴いたせいもあるけどすごかった。
世界中のあらゆる文化が交錯しているこの街で聴くにふさわしい。客もおおいに盛り上がり、楽しんでいる。
午前1時からは、3グループ目のHarry Whitakar & "moment to moment"。ハリー・ウィテカーといえば、1970年代から活躍し『ブラック・ルネサンス』や『ソート』など何枚ものアルバムを出しているベテラン。そんな実力派のミュージシャンが深夜のヴィレッジで演奏するのが素敵だ。
演奏が始まるちょっと前に現れたウィテカーは、ご覧のようにお腹がぽこんと突き出して、歩くのも辛そう。病気でもしたんだろうか。
ベース(女性)、ドラムス、サックス&フルート(女性)の若いミュージシャンを従えての演奏。若い3人はまだ修行中といった音で、自分の演奏だけで精いっぱい。カルテットとしてのグルーヴが出なくて、ハリーのピアノだけが突出している。とはいえ、親しみやすい、ノリのいいピアノを聴いているだけで快い。
午前3時近く始まったセカンド・セットでは、クラブにふらりと現れたらしいトランペットが加わった。
どこかの仕事を終えて顔を出したんだろうか、中年のこのトランペット吹きがなかなかの腕。若い3人は置き去りにされて、トランペットとピアノの素晴らしいインタープレイが始まる。ジャズのライブは、ときどきこういうことが起こるから面白い。トランペットにインスパイアされて、ハリーも長く見事なアドリブを聴かせてくれる。眠気もふっとんでしまった。うーん、いいなあ。
ところで、この日の深夜、アメリカは冬時間から夏時間へとシフト。時計が午前2時を打った瞬間が、そのまま午前3時になる。1時間がどこかへ消えてしまった。でもこういう音楽を聴いていれば関係ないか。
たっぷりと5時間。ニューヨークへ来て初めての朝帰りで、アパートの守衛の兄ちゃんに「グッド・モーニング」と挨拶された。
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