『パラノイド・パーク(Paranoid Park)』
ガス・ヴァン・サント監督の映画を見るのは初めて。『マイ・プライベート・アイダホ』も『グッド・ウィル・ハンティング』も『エレファント』も、その都度気になりながら、なぜか見に行かなかった。還暦を過ぎたジジイとしては、かつて浴びるほど見た青春映画というやつにアンビヴァレントな感情を持ってるからだろうか。
でもこの『パラノイド・パーク』、1990年代からインディペンデントやハリウッドで10本近いキャリアを持っている監督なのに、まるで処女作みたいにみずみずしいのにうなった。
中身だけでなく、製作のスタイルもそう。多分これ低予算映画で、主役はじめ多くの役に素人を使い、監督が拠点にしているポートランドで少人数のスタッフでオールロケしている。
その代わりというか、撮影にウォン・カーウァイ作品の名手、クリストファー・ドイルを『サイコ』に続いて起用した贅沢が、この映画のポイントでしょうね。
「マイ・スペース」で公募した主役のアレックス(ゲイブ・ネヴァンス)がスケートボードで宙を舞い、海辺の砂浜を歩き、夜の鉄道線路を走るさまを、クリストファー・ドイルは35ミリ・ムーヴィカメラ、ビデオカメラ、スーパー8を使い分け、それらを自在に組み合わせながら撮影している。
粒子が荒れたり色彩が微妙に違ったりと、機材によって質感が異なる映像を過去・現在の時間をばらしてつなぎ(そのために映像が説明的でなくなる)、偶然に人を死なせてしまったアレックスの、それまでとその後の行動をひたすら見つめているのがこの映画と言っていいだろう。
夜のスケートボード公園から事故にいたるいきさつや、ガールフレンドとのやりとりなど、ストーリーらしきものも一応あるけれど、それはどうでもいい。
また8ミリなど「ドキュメンタリーふう」な映像から、人を死なせてしまったアレックスの罪悪感を浮き彫りにしようというのでもない。
アレックスを追う映像から、監督が彼の内面に迫ろうとしているようにはまったく見えない。映像にそのような意味を生じさせるのではなく、ただそれらを価値判断なしに、でも美しく放りだしている。それがガス・ヴァン・サント監督のスタイルといえばスタイルなのかも。
もっとも、主役の美少年に対するフェティッシュな感情だけは感じられる。
『エレファント』でカンヌのパルムドールと監督賞を取った堂々たるキャリアの後に、こういうまるで処女作みたいな(実はかなりのテクニシャンだと思うけど)映画をつくったのが面白いね。
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