エディ・ヘンダーソンを聴く
先日、カーティス・フラー75歳誕生日ライブに行ったとき、ゲストで出ていたエディ・ヘンダーソンのトランペットを初めて聴いて心に染みた。「ヴィレッジ・ヴォイス」を見ていたら彼のグループが出演するとあったので、アッパー・ウェスト・サイドのライブ・ハウス、スモークへ出かける。
ここへ来るのは初めて。こじんまりとして、内装はブラウンに統一され、落ち着いた雰囲気の店だね。
「ヴォイス」の広告にはカルテットとあったけど、演奏の準備がはじまったステージを見るともうひとり、やはりフラーの誕生日ライブに出ていたレネ・マクリーンがいるではないか。今日はトランペットとサックス2管のクインテットということになる。
きっとあの日、ヘンダーソンがマクリーンを気に入り、「今度俺のライブがあるんだけど吹かないか」とでも誘ったんだろう。こういう出入り自由というか、いいかげんなところがジャズの面白さでもあるよね。
ケビン・ヘイズ(p)、エド・ハワード(b)、スティーブ・ウィリアムス(ds)のトリオがイントロを演奏しはじめ、おいおいエディはまだ客席だよと思ったらマイク脇をするりと抜けてステージに上がり、ほんの一瞬遅れたか遅れないかのタイミングでミュートでメロディを吹きはじめる。ミュージカル「オクラホマ」のナンバー。
絶妙のタイミングでの入り方。ミュートのすがれた音。メロディアスな歌もの。最初の1曲、ほんの数十秒で、彼の深々とした世界に引きずり込まれてしまった。
エディ・ヘンダーソンをこれまで聴いたことはなく、70年代にはハービー・ハンコックのバンドでフュージョンをやってたんだよな、くらいの記憶しかない。いま聴くエディは正統派のジャズそのもの。
時にフリューゲルホーンに持ちかえながら、トランペットにはミュートをつけることが多い。演奏したのはウェイン・ショーターの「エル・ガウチョ」、美しい旋律をもつ「ディア・オールド・ストックホルム」、名曲「ラウンド・ミッドナイト」など。ミュートの多用といい、曲目といい、すべてがマイルスを指してるな。
それもそのはず。エディはもともと医者でアマチュア・プレイヤーだったのが(エディ・”ドクター”・ヘンダーソンと紹介されてた)、マイルスの演奏に接してぶちのめされ、「プロのミュージシャンになろう」と決心したのだという。マイルスの音には、医者という収入もステイタスも保障された職業を捨てさせるほどの魅力があったということだろう。
そういえば、レネ・マクリーン(ts,as、ジャッキーの息子です)の加わった2管のクインテットもマイルス・バンドの編成と同じだね。マイルス・バンドの歴代テナーはコルトレーン、ショーターととびきりの大物だけど、マクリーンの野太いテナーとヘンダーソンの突き刺さるようなミュートの対照で聴かせる今日のバンドもマイルスを思い起こさせた。
なんというか、夜が深くなる音。そんなふうに思わせる感覚はジャズの、それも限られた瞬間にしか訪れない。それが来たときの幸福感が応えられない。
シャーリー・ホーンのバックを務めたスティーブ・ウィリアムス(彼もまたマイルスと共演してる)の、柔らかでシャープなドラミングにもしびれた。
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