クーパー・ヒューイット・デザイン美術館
アッパー・イースト・サイドのクーパー・ヒューイット・デザイン美術館を訪れた。ここはカーネギー・ホールで知られる鉄鋼王、カーネギーの元邸宅だったところで、展示だけでなく、どんな屋敷なのかにも興味があった。
近くにある、やはり鉄鋼で財をなしたフリック邸(フリック・コレクション)は総大理石の宮殿ふうのつくりだけど、カーネギー邸(1903)は石と赤レンガの外観が印象的な豪邸で、内装には廊下、天井、壁、階段と木材が多く使われている。
なかに入ると、階段の手すりや柱、壁の周囲には、びっしりと浮彫りの装飾がほどこされている。細部の装飾が日本人の、あるいは普通の人間の目からは時にグロテスクにも見えるけど、こういう気の遠くなるような金と人手のかかる装飾が、大富豪の邸宅には不可欠なんだろう。もっとも総大理石づくりのフリック邸にくらべると、カーネギー邸は木材の暖かい質感もあって全体としては落ち着いた雰囲気を持っている。
20世紀初頭、全米の資産の85パーセントを4000人の富豪が独占していたと言われる。富の極端な偏在は今にいたるも変わらないアメリカの姿だが、その富を象徴するのが、当時はまだ郊外だった5番街に次々に建てられた富豪の邸宅だった。邸宅の周辺には、セントラル・パーク建設で追い出された人々の小屋が立ち並んでいたという。
(ピラネージ「The Drawbridge」)
企画展は「デザイナーとしてのピラネージ」。
ピラネージは18世紀イタリアの版画家、建築家(空想建築家)。古代ローマの廃墟や幻想的な建築を描いたエッチングのシリーズは、いま見ても新鮮だ。
展示は、デザイナーとして制作した金属製の壺や机、柱などに焦点が当てられていた。どれも古代ローマのデザインを取り入れたデコラティブなものばかり。
「ローマの景観」「牢獄」など代表作のエッチングも数点、展示されている。僕は印刷物でしか見たことがなかったので、特に「牢獄」シリーズの暗い想像力に圧倒される(上の写真は、そのうちの1点)。
カフェでお茶を飲み、冬枯れの寂しいカーネギー邸庭園をながめていたら、ピラネージの廃墟図が重なってきた。
夕暮れのセントラル・パークを散策。風が刺すように冷たい。
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