W・マルサリス&リンカーン・センター・オーケストラ
ウィントン・マルサリスが芸術監督を務めるジャズ・アット・リンカーン・センターの秋のプログラムはビッグ・バンドとラテン・ジャズ。そのうちの「Best of The Big Bands」に出かけた。
2004年にオープンしたローズ・ホールに入るのは初めてだ。ステージの後ろにも客席があり、ステージを客席が楕円形に囲んでいる。2階、3階はテラス席になっていて、円柱がしつらえられ、ヨーロッパの歌劇場をモダンにした雰囲気と言ったらいいか。
夜8時。ウィントンを先頭に、17人のミュージシャンが入ってくる。プログラムを見てはじめて知ったけど、トランペットにウィントンだけでなくライアン・カイザーというもう一人のスターがいる豪華編成なんだね。
この日のプログラムは、大恐慌から第二次世界大戦にかけてのヒット曲集。この1930年代前後は、言うまでもなくデューク・エリントン、カウント・ベイシー、ベニー・グッドマンらビッグ・バンドの黄金時代だった。
僕の好みはビバップ以後のモダン・ジャズで、だからビッグ・バンドはエリントン以外あんまり聴かない。でもサックスにトロンボーンとトランペットが重なり、バンドがゆったりスイングしながら「ビギン・ザ・ビギン」のメロディーを紡ぎだしはじめると、一瞬にしてあの時代(自分で体験してるわけじゃない。映画やドキュメンタリーで見る「ジャズ・エイジ」)にタイム・スリップしてしまう。うーん、なんて切れのいい音なんだ。
といって、バンドは30年代のスイング・ジャズをノスタルジックに再現するわけじゃない。ソロパートに入ると、ホーンもピアノもそれぞれのプレイヤーが思いっきり現代ジャズのインプロビゼーションを繰り広げる。ドラムスもベースも複雑なリズムを刻む。全体として見事な、今の時代のスイング・ジャズになってる。
ゲストはアーネスティン・アンダーソン、フレディ・コールと、2人の歌い手。
アーネスティンは介護者に支えられて登場したけど、「センチメンタル・ジャーニー」を歌いはじめると、そんなことはまったく忘れさせる声量。若いころと変わらない歌いっぷりだね。
フレディの「ソリテュード」や「ザット・オールド・フィーリング」も、年季のはいった柔らかな声にバンドがやさしく寄り添って、う、う、涙が出そう。
最後にウィントンが、ディジー・ガレスピーの曲を超絶技巧と思いっきりの高速で吹ききる。スタンディング・オベーション。
僕は正直なところ、ウィントン・マルサリスがそんなに好きなわけじゃない。天才トランペッターとしてデビューした当時、コンサートにも行ったけど、うまい、すごい、とは思ったものの、その演奏に心を動かされなかった。それ以来、リンカーン・センターでの活動をテレビで見る程度で、本気になって聴いたことはない。
でもこのビッグ・バンドはいいね。ウィントンのプロデューサー、バンド・リーダー、編曲者としての才能がきらきら光ってる。
ローズ・ホールのロビーから見たコロンバス・サークル。
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コメント
ウィントン・マルサリスもしばらくフォートグリ−ンに住んでいたそうですよ。
投稿: yucca | 2007年11月20日 (火) 05時56分
ウィントンもここの住民だったんですか。ウィントンにしてもスパイク・リーにしても、アフリカ系アーティストが住みたくなる街なんですね。
投稿: 雄 | 2007年11月20日 (火) 10時57分
ここにライターのネルソン・ジョージのちょっと面白い記事がありますよ。
http://nelsongeorge.com/blog/?postid=77
投稿: yucca | 2007年11月21日 (水) 22時36分
マルサリス兄弟だけでなく、ピアニストのセシル・テイラーも住んでたんですね。
「She's Gotta Have It」も、もう一度見ると、あ、あそこが映ってる、ってなるでしょうね。ありがとうございます。
投稿: 雄 | 2007年11月24日 (土) 08時26分