『エグザイルド(放逐)』を見に行く
(アンジェリカ・フィルム・センターのカフェ)
今日は日曜だし、昨日は朝から晩まで10日分のブログのアップに追われたので、気分を変えて映画でも見に行こうと思った。
「ヴィレッジ・ヴォイス」と情報誌「タイム・アウト」で目をつけていたのが香港映画『エグザイルド(放逐)』。このところ絶好調のジョニー・トー監督の作品で、2日前から公開されている。
「ヴォイス」では映画欄の巻頭で特集され、「タイム・アウト」でも今週公開の新作では最高の4つ星評価がついていた(ちなみに、今週号の最高評価はリバイバル上映『フレンチ・コネクション』の5つ星。そりゃそうだよね、名作だもん)。
映画館はグリニッチ・ヴィレッジに近いアンジェリカ・フィルム・センター。どちらかといえばインデペンデント系を上映する映画館のようだ。4つのスクリーンを持ち、ほかに「2DAYS IN PARIS」、サンダンス映画祭で賞を取った「MANDA BARA」などを上映していた。
チケット(11ドル)を買って中に入ると、古い映画のポスターが貼られた、しゃれたカフェがある。始まるまで1時間弱、コーヒーを飲みながらフリーペーパー「ニューヨーク・プレス」をひろい読み。ここでも「エグザイルド」が大きく取り上げられている。
上映10分前に館内に入場すると、まだ暗くなっていない場内にはスクリーンにクイズが流れていた。
「コーエン兄弟の映画にブシェーミは何本出演しているか?」
「コッポラはカンヌのパルムドールを何回取ったか?」
「トニー・レオンとマギー・チャンの共演をいちばんたくさん撮っている監督は誰か?」
うーん、まさしくこれはマニア向けの質問だね(30秒ほどすると答えが出る。正解は5本、2本、ウォン・カーウァイ)。最後のだけしか当たらなかった。
『エグザイルド』について、英語字幕がすべて理解できたわけじゃないから思わぬ勘違いがあるかもしれず、以前のブログで書いていたような感想を書くのはやめる。ただ、大いに笑い、涙し、ジョニー・トーの作品のなかでいちばん楽しめたことは間違いない。
「NYプレス」の評がマカロニ・ウェスタンを引き合いに出してたけど、確かに本家のウェスタンや、それを劇画ぽくパターン化したマカロニ・ウェスタンを、さらに「型」にはめて、現代の香港(マカオ)に引きなおした感じ。その意味で、タランティーノの『キル・ビル2』に通ずるものもある。
いつもながら冒頭でたくさんの銃弾が飛び交うシーンの後に、「じゃあ座って話し合おうじゃないか」「でも座ろうにも椅子がない」という感じで、敵味方が一緒になって家財道具を運び込むあたりから、笑いがやってくる。
「型」を徹底させればシニカルな笑いを誘うパロディに近くなってくるけど、この笑いはそうではなく、人の気持ちを和らげる笑いで、そのことが映画をパロディにすることから救っている。コインや缶など小道具を使った笑いも、定石通りとはいえうまい。
(以下、ややネタばれ)途中で仲間の一人が死に、ここから友情・復讐の物語が加速するかと思っていたら、映画は一直線にそちらには行かず、宝探し+ロードムービーの要素が入ってくる。『ヴェラクルス』か『ワイルドバンチ』かといったところ。
がちがちの復讐・友情譚にしなかったのが、ジョニー・トーの余裕というか、楽しめる映画になったところだね。アメリカ人の観客(40人くらい)も大いに笑っていた。
最後、これも定石通りとはいえ、蹴り上げた缶が落下する間のスローモーションの銃撃シーンが快い。
映画館を出て、近くのソーホーを散歩。日曜日とあって、人でいっぱい。話には聞いていたけど、すっかり繁華街になってブランド・ショップばかり。ギャラリーはほとんどない。アートの香りは、かろうじて路上にかすかに残っているような気がした。
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