ジェリ・アレンを聴く
昨夜はイリディアムというジャズ・クラブへ出かけた。
ブロードウェイの劇場街にあり、先日行ったハーレムやブルックリンのクラブと違って、日本語のガイドブックにも載っている有名店。この夜はオリバー・レイク(as)、レジー・ワークマン(b)、アンドリュー・シリル(ds)の「TRIO3」に、ゲストとしてジェリ・アレン(p)の出演だった。
地下鉄の駅を降りて店を探すと、ミュージカル「マンマ・ミーア」をやっている劇場の隣。さほど混んでない。僕はバーを予約してたんだけど、テーブルに座りたいかと聞かれたのでイエスと答えたら、ステージ下のいちばんいい席に、もう1人の客(白人のいかにもマニアで、中平穂積のジャズ写真集を持っていた)と相席で座らせてくれた。
お目当てはジェリ・アレン。僕は彼女のピアノのファンなのだ。最初に聴いたのは20年近く前のアルバム。ラルフ・ピーターソン・トリオのピアニストとして、セロニアス・モンクの曲を火の出るような激しさで弾いていて、いっぺんで好きになった。その後、Mtフジ・ジャズ・フェスティバルや青山ブルーノートに来たとき、3度ほどライブを聴いている。
席に座ったとき、ステージではサックスを除いたリズム・セクション3人が音合わせをしていた。1分足らず音を出しただけだったけどびしっと決まっていて、うーん、期待が高まる。
ファースト・セットは8時から。まずはイントロという感じで、知らない曲(多分、レイクのオリジナル)を1曲。アドリブの途中で、レイクのアルト・サックスがフリーぽい音を出しはじめる。そうか、このグループはこういう感じなのか。それならジェリ・アレンがゲストなのもよく分かる。
3曲目にグループは全開した。レイクのサックスがひととおりテーマを吹いた後は、リズムもメロディも複雑に崩したフリー。サックスが「シーツ・オブ・サウンズ」を展開する。レジー・ワークマンが、ベースを弾くというより親指をたたきつけるように荒々しい音を出す。ドラムスもそれを煽る。ジェリ・アレンのピアノは、相変わらず音だけ聴いていると女性とは思えない力強いタッチで、ぽきぽきと1音1音がはっきりしている。
なんだか60年代のフリー・ジャズが再現されたみたいな気分になった。ジェリを除けば、3人とも60代後半から70代になるだろう。ベースのレジーなど、コルトレーンの初期のアルバムに参加しているから、もう80歳近いはず。腰も曲がりはじめた老人が、肩をゆすったり脚を曲げたりの大きなアクションで、年季の入ったベースを弾き、片手間にアフリカのリズム楽器を鳴らしながらフリーの演奏を楽しんでいるのを見ると、こっちも嬉しくなる。ジェリも、気持ちよさそうに彼らをサポートしている。
フリー・ジャズは純粋な音楽というよりパフォーマンス・アートみたいな部分があって、聴くより参加するものだと思う。だからオーディオで音だけのフリー・ジャズを聴いていると、なんだか蝉の抜け殻を見ているような味気なさを感ずることがある。演奏の場に客として参加してこそ、こっちの肉体が刺激され、身体の奥で何かがもぞもぞと蠢きはじめて、フリー・ジャズが楽しくなる。僕だけの意見かもしれないが。
このところそんな機会はなかったし、かつてフリーを演奏していたミュージシャンも、アーチー・シェップがバラードのアルバムを出したように変わってきている。久しぶりにフリージャズを「体験」して、これはこれの面白さがあることを再確認した。
チャージ30ドルとドリンク1杯に、税・チップをつけて50ドル。
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