ある民家の肖像・1 縁側
古めかしい日本家屋に暮らしている。名のある建築家でもなんでもない無名の大工がつくった、変哲もない家。建てられたのは1928(昭和3)年。持ち主は尉官クラスの軍人だったらしいが、戦後、僕の祖父母が買い取った。1970年代に土間だった台所と風呂場を改築した以外、そのまま使っている。数年前に、ぼろぼろになった土壁を塗りなおし、襖を張りかえたけれど、家の構造は建てたときのまま。
ここは東京の北側の通勤圏に属する。大きな産業のない戦前からの住宅地で、ひと昔前まで同じような日本家屋や、玄関横に一部屋だけ洋間をつけた「文化住宅」があちこちにあった。でも今ではほとんど新しい家に建てかえられたり、マンションになってしまった。
そのころから、この家を記録しておいてもいいかもしれないと思いはじめた。昭和初期、首都近郊の中層クラスの民家がどんなものだったか。もっとも自分の暮らしを公開するつもりはないので、生活臭のない部分だけ、少しずつ撮っていこうと思っている。
この家に暮らしていちばんの贅沢は、縁側に寝転がっていること。日本家屋は夏の暑さをどうしのぐかを最大のテーマにしているので、家のなかを風が通りぬける。夏は涼しいし、真冬でも太陽が出ていればぽかぽかして、午後3時ころまで開け放したまま本を読んでいられる。
ガラス戸は不用心なんだけど、サッシにする気になれないんだなぁ。
戦前のガラスは今のような品質ではなく平面に微妙に凹凸があり、風景がわずかにゆがんで見える(2枚目の写真にゆがみが写っている)。それも風情といえば風情かも。




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