September 17, 2020

『蝉、生まれいずるころ。』 沖縄戦の記憶

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沖縄在住の写真家、勇崎哲史さんが写真帖『蝉、生まれいずるころ。』を出版した。

チビチリガマなど沖縄戦の戦争遺跡16カ所で、夜、蝉が羽化する風景を撮影したもの。亜熱帯の深い緑の片隅で、闇のなかたくさんの蝉が薄緑のやわらかな羽を震わせて羽化する。75年前の羽化の季節、これらの場所では多くの兵士、住民が命を落とした。ストロボで照らし出された夜の森やガマの風景に、その記憶が重なる。

1990年代に小生が北海道東川町の写真甲子園に4年ほど参加したとき、勇崎さんには写真フェスティバルのオルガナイザーとして大変にお世話になった。その後、勇崎さんは若いころ放浪した沖縄に移住して、撮影のかたわら写真学校を主宰している。

蝉の羽化は2年前から撮影していたものだが、今年の春、勇崎さんは写真展を企画しているさなか病気で入院された。無事に退院されたが、一時は遺作展になるかもと考えていたという。ところが9月、今度は写真展の開催を目前に会場が火災になり、作品が焼失するという事故が起きた。そんなわけで、いま見ることができるのは図録としてつくられたこの写真帖のみ。いずれ写真展も開催されることを期待したい。問い合わせは光画文化研究所。
https://peraichi.com/landing_pages/view/copi

 

 

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September 10, 2020

東京都写真美術館へ

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病院帰りに東京都写真美術館へ回る。ここへ行くのは実に2年ぶりくらい。一昨年暮れに体調が悪くなり入院治療の結果、去年秋に寛解との診断をもらったが、訪れる機会のないままコロナ禍になってしまった。高齢・病歴ありの高リスク組としてまだ映画館に行く勇気はないけど、混雑しない展覧会ならいいだろう、と。見たのは森山大道「ongoing」と「日本の新進作家vol.17 あしたのひかり」。このところ写真を見るのは印刷物かウェブばかりだったので、オリジナルプリントを見るとその質感、ぞろっとした手触りに久しぶりに興奮する。しかもどちらの展示も見せる工夫が凝らされているので楽しめるし。このままコロナが沈静化すれば、少しずつ行動半径を広げていこうか、と思う。

 

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July 18, 2018

猛暑に展覧会3つ

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さいたま市の予想気温37度と出ていた日、東京の方が少しはましかと(嘘です)、昼から展覧会を三つ回る(それにしても暑い)。

まず四谷三丁目のギャラリー・ニエプスで、大西みつぐ・ハービー山口・中藤毅彦3人展「TRINITY」。3人が路上で撮影したスナップショット的なモノクロームが、撮影者の名前抜きで並んでいる。大きなものはだいたい誰の撮影かわかるけど、小さなものになると、うーんこれは誰だろう? そんな楽しみがある。

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次に新宿のニコンプラザで沖縄の写真家、山田實生誕100年を記念した「山田實写真展 きよら生まり島」。1950~60年代、本土復帰前の沖縄の街と人。エキゾチシズムも米軍基地もことさらに強調されず、さりげなく写りこんでいるのは、やはり地元の写真家だから。ちょうどこの時代の沖縄を舞台にした真藤順丈の小説『宝島』を読んでいたので、写っている風景と小説とが重なった。

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最後に上野の東京国立博物館で「縄文」展。全国から出土した縄文の土器・土偶をこれだけ網羅した展覧会ははじめて。考古学の遺物ではなく美術品として展示されているのもいい。縄文の美を堪能。この時代の世界各地の土器も比較展示されているが、どれも実用的な形で、縄文の造形感覚は飛びぬけている。


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May 30, 2018

サンドラ・フィリップス講演会へ

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お手伝いしている日本写真協会賞の今年度国際賞を受けたサンドラ・フィリップスさんの講演会へ(30日、四谷・国際交流基金ホール)。サンドラさんはサンフランシスコ近代美術館(SFMOMA)の名誉学芸員。1990年代から森山大道展や東松照明展などを開き、日本の現代写真が世界的に評価されるきっかけをつくった。

SFMOMAと日本写真のかかわり、自身が企画した写真展、現在手掛けている日本写真のウェブ・データベースの話など。森山大道を始めとする1960~70年代の写真に、その時代の世界に共通して流れていた不安や怒りを感じて惹かれたと語るサンドラさんに、同時代に20代で同じような気持ちをかかえていた者として共感をおぼえた。


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July 21, 2017

2つの写真空間

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Shinya Fujiwara & Daido Morriyama photo exhibitions

写真展というより、その場を体感できる写真空間展ふたつ。

藤原新也「沖ノ島」(~8月1日、日本橋高島屋)。神官以外は入れない「禁足の森」が12メートルのパノラマになっているなど、神聖な島の空気にひたれる。来年からは一般人の入島が禁止されるので、貴重な写真展かも。

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森山大道「Prettly Woman」(~9月17日、銀座・AIKO NAGAWAWA GALLERY)。まるで新宿の風俗街に足を踏み入れたよう。


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June 02, 2017

日本写真協会賞受賞作品展

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お手伝いしている日本写真協会賞受賞作品展がオープンした(~6月8日、六本木・富士フイルムフォトサロン)。展示されているのは作家賞の大西みつぐ、有元伸也、新人賞の横田大輔、鶴崎燃、4氏の作品。作品の前に立つ大西さん(プロを被写体に写真の腕が悪くてごめんなさい)。4日午後2時からは大西さんのギャラリートークもある。ぜひご覧ください。


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May 28, 2017

「異郷のモダニズム 満洲写真全史」展

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ボランティアで大阪へ行った帰り、名古屋で途中下車し「異郷のモダニズム 満洲写真全史」展(名古屋市美術館、~6月25日)へ。

満洲の写真は断片的には見ていたけど、「全史」と銘打つだけのことはある。満鉄が内地へのパブリシティとして撮影した昭和初期の記録的な写真、淵上白陽らが撮影した芸術写真、国(満洲国)が主導したプロパガンダの写真など、植民者の日本人が満洲をどう捉え、内地にどう伝えたかを時代を追って跡付ける。最後に、敗戦によってソ連軍や中国共産党軍によってインフラ施設を奪われ廃墟となった、米軍撮影の写真もある。

充実した写真展。立派な図録が出ているけど、名古屋だけの開催はもったいない。


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February 28, 2017

金丸重嶺写真展

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Kanamaru Shigene photo exhibition

「写真家 金丸重嶺 新興写真の時代 1926-1945」展に行く(~3月3日、江古田・日大芸術学部芸術資料館)。

昭和初期、新興写真と呼ばれる都市的な表現に刺激され撮影した初期の作品から、花王石鹸などの広告写真、ベルリン・オリンピック、従軍した武漢作戦、国策宣伝用の写真まで。新聞・雑誌の紙誌面やパンフレット、当時のアルバム、オリジナル・プリントやニュー・プリントで構成されている。

興味があったのは、当時、新装して売り出された花王石鹸の広告写真。発売までの予告は金丸重嶺、発売後は木村伊兵衛が撮影している。雑誌や新聞の広告5点が展示されていた。モンタージュを多用したダイナミックな表現。生活感あふれる木村の広告とはタッチが違う。

ベルリン・オリンピックやヨーロッパのスナップははじめて見た。金丸重嶺は写真家としてより書き手として知っていたけど、この写真群は時代の空気を伝えてくれる。

充実したカタログを無料でいただけるのはありがたい。


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November 23, 2016

ロバート・フランク展へ

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Robert Frank'Books and Films,1947-2016'

ロバート・フランク「Books and Films,1947-2016 in Tokyo」展(~11月24日、東京芸術大学美術館)へ。

ドイツの出版社シュタイデルが出版したフランクの写真集と映画。写真はプリントでなく、新聞用紙に印刷されている。フランクのオリジナル・プリントは高価で法外な保険料がかかるため、ふつうの展覧会はほとんど開かれない。そこで大学など教育機関を会場に、世界中でこんなかたちで開かれているそうだ。印刷した写真を会期終了後に廃棄することで、美術品として流通する写真へのある種のメッセージにもなっている。

なるほど、こういう見せ方もあるんだなあ。いろいろ触れるのも楽しい。こんなスタイルでなければフランクの全貌を知ることはできなかったろう。


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July 01, 2016

チャンビ写真展がすごい

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Martin Chambi photo exhibition

東京・池尻のSUNDAY(世田谷区池尻2-7-12)で7月3日(日)までやっているマルティン・チャンビ写真展が素晴らしい。

ペルーの先住民として生まれたチャンビが1920~50年代にかけてガラス乾板やフィルムで撮影したインディオたちの肖像、クスコの町の風景、マチュピチュ遺跡など。人格がにじみ出るポートレート、くっきりした光と影に縁どられた風景には、未開の地に出かけた白人がエキゾチックな風物を採集する視線でなく、インディオが自ら生きる土地と人々に向けた暖かな視線がある。

チャンビに惚れた写真家の白根全氏が身銭を切って開催にこぎつけた。2日午後1時からギャラリートークもある。


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