April 13, 2024

写真展ふたつ

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ふたつの写真展を巡る。

ひとつは「安井仲治 1903‐1942」(~4月14日、東京ステーションギャラリー)。1930~40年代に個性的な写真を撮り、若くして亡くなった写真家の回顧展。昭和初期、シュールレアリスムなど前衛的な写真と、後に報道写真と呼ばれるドキュメンタリー的な要素がひとりのなかに共存しているのが興味深い。大胆な光と影の画面がいいな。

もうひとつは大西みつぐ「TOKYO EAST WAVES」(~4月25日、目黒・ふげん社)。自身も暮らす東京東部、川と湾岸の街と人を撮りつづける写真家の1980~90年代のカラー作品。街歩きしながら捉えた小さな光景が積み重なって、バブルと呼ばれた時代のありのままの姿を、ちょっと寂しげに照らし出す写真群。

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February 23, 2024

「中平卓馬 火│氾濫」展

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「中平卓馬 火│氾濫」展(竹橋・国立近代美術館。~4月7日)へ。

中平卓馬とは小生が写真雑誌にいたとき、1970年代前半と1990年代半ばに何度か会っている。70年代には写真家というより論客として、マッド・アマノの著作権裁判や、友人にしてライバルである森山大道について話を聞き記事を書いた。90年代は昏倒・記憶喪失から再起しての作品掲載のためだった。

以前に横浜美術館で開かれた展覧会は再起後のカラー作品に焦点が当てられていたが、今回は60年代の雑誌発表から晩年のカラー作品まで丹念に見せて、ああ、中平卓馬はこういう写真家だったんだと納得がいった。記憶喪失以前の写真と以後の写真には断絶があると言われ、小生もそう感じてきたけれど、撮影スタイルに違いはあるにせよ、ずっと同じものを見て、シャッターを押していたんだと思った。それは彼の写真集のタイトルを借りれば「来るべき言葉のため」の現実の断片ということだろう。

時を同じくして柳本尚規『プロヴォーク 中平卓馬をめぐる50年目の日記』(読書人刊)が出て、雑誌編集者から写真家へ転身する時代の中平卓馬が、親しくつきあった仲間の眼から鮮やかに描きだされている。小生、登場人物の多くに面識があるので、風貌からしゃべり方、その場の雰囲気が目に浮かぶ。

70年代、中平さんと会うのはいつも数寄屋橋の喫茶店で、歌手の安田南がふらっと姿を見せたりした。舌鋒鋭いが、人懐っこい表情でにやりと笑う、あの笑顔が忘れられない。

 

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October 14, 2023

「在日クルド人」展

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全国でいちばんクルド人住民が多い川口市で開かれている写真展「在日クルド人」に出かけた(~10月15日、川口市立アートギャラリー・アトリア)。鈴木雄介、Refik Tekin、上田惠利加の写真家3人の撮影で、クルド現地の人々と風景、今年2月のトルコ大地震による被害の様子、川口・蕨地区に住むクルド人の生活などが展示されている。

トルコ大地震(震源はクルド地域)以後、血縁を頼って川口に避難してくるクルド人が増えているという。言葉や文化が違えばトラブルが起きやすくなる。政府がきちんとした移民政策を取っていないこともあるが、なにより互いを知らないことが大きい。そこに橋を架け「共に暮らす社会を考える契機にしたい」というのが主催者の言(写真はクルドの新年を祝う祭)。

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September 20, 2023

写真展ふたつ

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写真展をふたつ、見てきた。

鈴木秀ヲ「タイムライン」(~10月1日、小伝馬町・ルーニィ247)。主人公はプーチン。ウクライナの戦争が始まって以来、鈴木さんがインスタグラムやフェイスブックにアップしてきたもの。いつものようにフィギュアや印刷物やプラモを組み合わせた世界。プーチンがまるでおとぎ話の悪い王様のように見える。ニヤリとして楽しめます。

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大西みつぐ「川の記憶、水の夢」(~9月30日、清澄白河・RYURO)。隅田川に面した小さなホテル・ロビーでの展示。大西さんが育ち、生活してきた東京の東側、墨田川や小名木川などの水や橋の風景。点数は多くないけど、撮影スタイルや撮った時代が違う何組かの写真が「記憶」と「夢」を紡ぎだします。大西さんらしい遊びもあって、こちらもニヤリ。

きつい陽射しこそないが蒸し暑い日、今の体力ではこれが限界。清州橋のたもとで、しばし川面を眺めて帰りました。

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September 15, 2023

「挑発関係=中平卓馬×森山大道」展

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「挑発関係=中平卓馬×森山大道」展へ(~9月24日、神奈川県立近代美術館葉山)。


 


写真家の中平卓馬も森山大道も逗子の住民だったから、鎌倉・逗子・葉山の写真がたくさんある。1960年代から(中平が亡くなった)現在までの、友人であり互いに刺激しあう関係でもあった二人の作品が地域性と時代性を交差させて展示されている。


 


60~70年代の作品はネガが失われてるものが多いからだろう、プロジェクター映像や雑誌が多い。『現代の眼』『映画批評』『構造』『朝日ジャーナル』『アサヒグラフ』と懐かしいものばかり。


 


もう50年も前の話。中平さんから、中平森山ふたりとも失業状態だったので逗子の沖にある島に大量の写真雑誌を持っていき、一点一点マルバツをつけた、なんて話を聞いたのを思い出した。90年代、こちらが写真雑誌の編集者時代、その中平さんからカラー作品を見せられて戸惑ったこともある。「作品」意識に捕らわれていたこちらには中平さんのカラーをどう評価したものか、よく分からなかった。そんな私的な記憶も交え、森山大道が逗子を撮った最新作までを楽しんだ。


 

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June 14, 2022

クルドの写真展

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埼玉県の川口や蕨にはたくさんのクルド人が住んでいる。2000人と言われる、国内最大のクルド人居住地域。そのクルド人のことを知ってもらおうという地元での写真展「トルコから日本へ クルド人の今」を見てきた(~6月20日、Mギャラリー川口、048-254-8021)。狭い会場ながら、トルコでの民族衣装を着てのお祭り、街を破壊され避難する人びと、日本での暮らしが3つのパートに分かれて展示されている。撮影はRefik Tekin、鈴木雄介、横関一浩。在日クルド人の多くはトルコから迫害を逃れてきたのだが、難民申請して認定された人は現在まで一人もいない。法的にきわめて不安定な状態に置かれている。写真は、顔が写るのが危険ということで許可を得て会場の外から撮影。

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September 17, 2020

『蝉、生まれいずるころ。』 沖縄戦の記憶

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沖縄在住の写真家、勇崎哲史さんが写真帖『蝉、生まれいずるころ。』を出版した。

チビチリガマなど沖縄戦の戦争遺跡16カ所で、夜、蝉が羽化する風景を撮影したもの。亜熱帯の深い緑の片隅で、闇のなかたくさんの蝉が薄緑のやわらかな羽を震わせて羽化する。75年前の羽化の季節、これらの場所では多くの兵士、住民が命を落とした。ストロボで照らし出された夜の森やガマの風景に、その記憶が重なる。

1990年代に小生が北海道東川町の写真甲子園に4年ほど参加したとき、勇崎さんには写真フェスティバルのオルガナイザーとして大変にお世話になった。その後、勇崎さんは若いころ放浪した沖縄に移住して、撮影のかたわら写真学校を主宰している。

蝉の羽化は2年前から撮影していたものだが、今年の春、勇崎さんは写真展を企画しているさなか病気で入院された。無事に退院されたが、一時は遺作展になるかもと考えていたという。ところが9月、今度は写真展の開催を目前に会場が火災になり、作品が焼失するという事故が起きた。そんなわけで、いま見ることができるのは図録としてつくられたこの写真帖のみ。いずれ写真展も開催されることを期待したい。問い合わせは光画文化研究所。
https://peraichi.com/landing_pages/view/copi

 

 

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September 10, 2020

東京都写真美術館へ

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病院帰りに東京都写真美術館へ回る。ここへ行くのは実に2年ぶりくらい。一昨年暮れに体調が悪くなり入院治療の結果、去年秋に寛解との診断をもらったが、訪れる機会のないままコロナ禍になってしまった。高齢・病歴ありの高リスク組としてまだ映画館に行く勇気はないけど、混雑しない展覧会ならいいだろう、と。見たのは森山大道「ongoing」と「日本の新進作家vol.17 あしたのひかり」。このところ写真を見るのは印刷物かウェブばかりだったので、オリジナルプリントを見るとその質感、ぞろっとした手触りに久しぶりに興奮する。しかもどちらの展示も見せる工夫が凝らされているので楽しめるし。このままコロナが沈静化すれば、少しずつ行動半径を広げていこうか、と思う。

 

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July 18, 2018

猛暑に展覧会3つ

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さいたま市の予想気温37度と出ていた日、東京の方が少しはましかと(嘘です)、昼から展覧会を三つ回る(それにしても暑い)。

まず四谷三丁目のギャラリー・ニエプスで、大西みつぐ・ハービー山口・中藤毅彦3人展「TRINITY」。3人が路上で撮影したスナップショット的なモノクロームが、撮影者の名前抜きで並んでいる。大きなものはだいたい誰の撮影かわかるけど、小さなものになると、うーんこれは誰だろう? そんな楽しみがある。

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次に新宿のニコンプラザで沖縄の写真家、山田實生誕100年を記念した「山田實写真展 きよら生まり島」。1950~60年代、本土復帰前の沖縄の街と人。エキゾチシズムも米軍基地もことさらに強調されず、さりげなく写りこんでいるのは、やはり地元の写真家だから。ちょうどこの時代の沖縄を舞台にした真藤順丈の小説『宝島』を読んでいたので、写っている風景と小説とが重なった。

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最後に上野の東京国立博物館で「縄文」展。全国から出土した縄文の土器・土偶をこれだけ網羅した展覧会ははじめて。考古学の遺物ではなく美術品として展示されているのもいい。縄文の美を堪能。この時代の世界各地の土器も比較展示されているが、どれも実用的な形で、縄文の造形感覚は飛びぬけている。


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May 30, 2018

サンドラ・フィリップス講演会へ

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お手伝いしている日本写真協会賞の今年度国際賞を受けたサンドラ・フィリップスさんの講演会へ(30日、四谷・国際交流基金ホール)。サンドラさんはサンフランシスコ近代美術館(SFMOMA)の名誉学芸員。1990年代から森山大道展や東松照明展などを開き、日本の現代写真が世界的に評価されるきっかけをつくった。

SFMOMAと日本写真のかかわり、自身が企画した写真展、現在手掛けている日本写真のウェブ・データベースの話など。森山大道を始めとする1960~70年代の写真に、その時代の世界に共通して流れていた不安や怒りを感じて惹かれたと語るサンドラさんに、同時代に20代で同じような気持ちをかかえていた者として共感をおぼえた。


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