May 19, 2017

前野曜子 最後のアルバム

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ウェブを見ていたら前野曜子のCDが目に留まり、思わず買ってしまった。「TWILIGHT」(1982)。1988年に40歳で亡くなった彼女がその6年前にリリースした、生前最後のアルバムの復刻盤。

当時のフュージョンやソウルのサウンドをバックにした都会のポップスだ。グローバー・ワシントンJr.でヒットした「ワインライト」に日本語の詞をつけて歌っているのが、あの時代を思い出させる。オリジナルでは、「立ち去りかけた夜のうしろ影 青ざめた静寂におびえている」とはじまり、「許して 愛して」とリフレインがつづく「愛の人質」(作詞・冬杜花代子、作編曲・上田力)が切ないラブソング。メローなリズムに乗せ、高音がよく伸び透明だけど官能的な歌声に、ああこれが前野曜子だと一瞬感傷的になる。ほかに、ボーナストラックとしてアニメ「スペースコブラ」の主題歌「コブラ」など。

前野曜子には一度だけ、取材で会ったことがある。「別れの朝」がヒットしたあとペドロ&カプリシャスを抜け(無断欠勤や遅刻が度重なりクビになったらしい)、ロスでしばらく遊んで帰国した後、ソロで「夜はひとりぼっち」を出したときだった。水割りをちびちび飲みながら笑顔でインタビューに答えてくれたが、話の中身はまったくパブリシティにならない本音トークで、ロスのアパートでは毎晩ウィスキーのボトルを一本近く空けてたとか、困り顔のマネジャー氏の前で新曲や仕事への不満も口にした。

「ヨーコ、ラッキーでね。今まで変な苦労がなかったわけ。だから、はっきりいって、キャバレーの仕事なんか大っきらい。第一、バンドが合わないでしょ。歌う10分前に音合わせだから、メタメタになるよね。すごくブルーになっちゃいますよ」

そんなことを平気でしゃべる前野曜子は可愛かった。

この後も休養と復帰を繰り返し、アルコール依存からくる肝臓の病で亡くなった。体調を整え、いいスタッフに巡り合えて成熟したら、どんな歌い手になっていたろう。久しぶりのセンシュアルな歌声を涙なしに聴けない。


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May 23, 2016

コンサートを企画

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元東京クヮルテットのヴァイオリニスト・池田菊衛君と作曲家・ピアニストの淡海悟郎君は中学、高校の同級生。2人のコンサートを同級生仲間5人で企画した。

高校時代に2人が「いつか一緒にやろう」と約束したベートーヴェンのクロイツェル・ソナタを演奏する「邂逅」コンサート(5月22日、やなか音楽ホール)。淡海君が新作をつくり、ニューヨーク在住の池田君のスケジュールに合わせ1年がかり。同級生とその家族、恩師、友人知人、小生の元同僚やヨガ仲間も来てくれて楽しい日曜の午後を過ごした。

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リハーサル中の2人。


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March 12, 2016

酒場でドイツ・リート

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友人の作曲家・淡海悟郎とソプラノ歌手・室井綾子が定期的にやっている「酒場でドイツ・リート」に行く(3月11日、東中野 マ・ヤン)。

シューマンの「女の愛と生涯」「リーダークライス」と淡海悟郎の歌曲集「立原道造の詩による5つの歌」、ヴェルディの「オテロ」から「アヴェ・マリア」など。いっとき体調を崩していた淡海悟郎も元気になって、自作も含め二十数曲を軽々と弾く。淡海君は高校時代から立原道造が好きだったものなあ。室井綾子の艶のあるソプラノをこんな至近距離で聞けるのは至福。

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November 28, 2015

室井綾子コンサート

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Muroi Ayako Japanese liedel concert

東中野の酒場での室井綾子「日本の詩コンサート」へ行く(11月27日、マ・ヤン)。彼女のドイツ歌曲は何度か聞いているけど、日本の歌曲ははじめて。

第一部は「宵待草」「この道」など、誰でも知ってる歌を。彼女、この酒場で「宵待草」の作詞者・竹久夢二描く女性に雰囲気が似てると言われたことがあるそうだ。

第二部は大中恩作曲、寺山修司作詞の歌曲集「ひとりぼっちがたまらなかったら」から14曲。「サッちゃん」「犬のおまわりさん」の作曲家・大中の親しみやすい曲と、寺山らしい詩、室井の美声を堪能しました。ピアノは三好すみれ。

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January 31, 2015

酒場でドイツ歌曲を

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German lieder in a bar

友人の作曲家、淡海悟郎がピアノを弾き、ソプラノの室井綾子が歌う「酒場でドイツ・リート(歌曲)」を聞きに、東中野の酒場マ・ヤンへ。シューマン、ワーグナー、シューベルト、リヒャルト・シュトラウスの歌曲をたっぷりと。

淡海君は母上の介護に専念していたこともあり、ピアノを弾くのは3年半ぶり。終わった後は友人たちと二次会で盛り上がった。

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東中野駅前のこの一角は昭和の香りただよう小路。ところがここに30階建て高層マンションの計画が持ち上がり、地上げ業者が入っているという。マ・ヤンのオーナーが中心になった「昭和の街を保存する会」の呼びかけに一同で署名する。こういう雰囲気の酒場、小路はいちど壊してしまえば二度とつくれない。

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May 17, 2013

最後の東京クヮルテット

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Tokyo String Quartet last concert

今年解散する弦楽四重奏団、東京クヮルテットの最後の日本ツアーが行われている。東京オペラシティでの公演に出かけた(5月16日)。

第2ヴァイオリンの池田菊衛君は中学・高校の同級生。この10年あまり、アメリカを本拠にするクヮルテットが日本へ来るたびに仲間と聞きにいくのを楽しみにしていた。僕がニューヨークに滞在していたときもカーネギー・ホールの公演に誘ってくれたり、郊外の自宅に招かれてご馳走になったり、すっかりお世話になっている。

この日のメインはベートーヴェン弦楽四重奏曲第14番。ベートーヴェン弦楽四重奏全16曲を録音した「全集」は東京クヮルテットの代表作で、そこからのチョイスが最後にふさわしい。僕は東京クヮルテット以外に室内楽をあまり知らないけれど、初心者が聞いてもそれと分かる入魂の演奏。見事なアンサンブルと絹の手触りの音色。いつまでも拍手が鳴りやまなかった。

コンサート後のレセプション。池田君(左端)が「野球だと打率3割で評価されるけれど、9割以上でもダメなのがこの世界。まだやれるのにと惜しまれるうちに解散することを決めました」と挨拶した。池田君の右が第1ヴァイオリンのマーティン・ビーヴァーさん、その右(手前)の白髪の紳士が創設メンバーでヴィオラの磯村和英さん、右端がチェロのクライヴ・グリーンスミスさん。44年間、お疲れさまでした。


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July 11, 2011

夕暮れのシューマン・コンサート

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Schumann early evening concert

友人の作曲家・淡海悟郎と、彼とたびたびコラボレーションしているソプラノ歌手・室井綾子の「夕暮れのシューマン・コンサート」へ行く(10日、幡ヶ谷・KMアート・ホール)。

シューマンの歌曲とピアノ曲から、年代を追って「ミルテの花」「ミニョンの歌」「女の愛と生涯」を室井が歌い、「森の情景」を淡海がピアノ演奏。

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ハイネやゲーテの愛の詩を歌う室井の透明感ある声に、ツヤと深みが加わったような。

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May 01, 2010

古楽器を聴く

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寺崎百合子さんの展覧会「音楽」については、4月12日のエントリ「鉛筆の力」で書いた。この個展のために彼女が描いた古楽器、ヴィオロンチェロ・ピッコロ・ダ・スパッラによる演奏会があった(4月30日、銀座・ギャラリー小柳)。

ヴィオロンチェロ・ピッコロ・ダ・スパッラの「スパッラ(spalla)」は「肩」の意。通称「肩チェロ」と呼ばれる。写真で分かるように、チェロといってもヴァイオリンを大きくしたような形。革ひもで首にかけ、ヴァイオリンと同じように演奏する。ヴァイオリンより大きいから、弾く姿はちょっと窮屈な感じ。音程はチェロと同じだけど、弦が5本ある(チェロもかつては5本だったが現在は4本)。

ヴィオロンチェロは17世紀イタリアのボローニャでつくられた。当時の楽器はまだ大きさや形が標準化せず、時代や場所によってさまざまな種類のものがつくられていた。ヴィオロンチェロもそのひとつで、バロック時代の絵画に肩かけで演奏する姿が描かれている。数十台がヨーロッパ各地に現存しているという。

写真のヴィオロンチェロは、演奏しているディミトリー・バディアロフさんがつくったもの。コーカサス生まれのロシア人、ディミトリーさんはバロック・ヴァイオリンの演奏家であり、古楽器研究家であり、古楽器製作の職人でもある。

弾いてくれたのは主にバッハで、「無伴奏チェロ組曲」と「ヴィオロンチェロ組曲」から。僕は「無伴奏チェロ」はロストロポーヴィッチの演奏が耳になじんでるけど、チェロの重厚な響きに比べると軽い。チェロのようにズーンと体の芯に響いてくるのでなく、音がごつごつして耳に突き刺さる感じ(共鳴する胴が小さいから当然だろう)。そのかわり、表情が細かくよく動く。バッハがこの楽器のために作曲した「ヴィオロンチェロ組曲」は、その細かくよく動く感じがよく出てたと思う。

バッハが生きていた時代にはこういう音が鳴っていたのか。古楽器の音を堪能した夜でした。


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July 03, 2007

ESCOLTAの初ライブ

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友人夫婦の息子、吉武大地君がメンバーに加わっているグループ「ESCOLTA」の初ライブに行く(7月2日、六本木・スイートベイジル)。

ESCOLTA(エスコルタ。英語のエスコート)は、クラシック、ミュージカル、R&Bなど異ジャンルの男性ボーカリスト4人で結成されたグループ。谷川俊太郎、阿木曜子、石田衣良といったこれまた異ジャンルの人たちが作詞し、五木田岳彦が作曲したオリジナル曲を中心にレパートリーを組んでいる。

大地君は画家と声楽家夫婦の息子だけど、高校までは絵画にも音楽にも興味を示さずテニスに熱中していた。ところが3大テノールの舞台を見たことから声楽を志し、音楽大学を出てイタリアに留学し、あっという間にオペラ歌手としてデビューした。僕は彼を4、5歳のころから知っているから、初めてのオペラで準主役をもらった「魔笛」の舞台を見たときは自分の子供のこと以上に嬉しくて涙が出た。

「ESCOLTA」はポップスとクラシックの要素、ソロをつないでいく部分とアンサンブルがうまく絡み合って独特のフィーリングを出している。ひとりだけバリトンの大地君はグループのアンサンブルを底のところで支えていた。イケメン4人組とあって、早くも若い女性ファンが詰めかけてる。


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February 08, 2006

セルタブの「エスニックR&B」

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アラブ・ポップスを聴いているのは前にも書いたことがある。(05年1月15日)。今度買ったのはアラブではないけど、同じイスラム圏トルコの歌手、セルタブの「No Boundaries」(SONY)。

タイトルが英語であることや、制作会社がソニーであることから分かるように、トルコ国内ではなく国際マーケット向けのアルバム。一昨年発売され、韓国映画『箪笥』のイメージ・ソングとしてCMにも使われたらしいけど、知らなかった。

セルタブ自身がこのアルバムの音を「エスニックR&B」と言ってるように、西洋音楽とトルコ民族音楽のチャンポン。曲によって、欧米のポップスふうなメロディーに民族楽器(サズ、ウード、ドラム等)の音とビートを乗せたものもあれば、民謡に近いメロディをやはり民族楽器でダンサブルなR&Bに仕立てたのもある。メローなバラードもある。

彼女自身の歌い方も、ポップスふうあり、こぶしをきかせたものあり、部分的にクラシックの発声をしてるのもある。時には堂々と歌いあげ、時にはひどく色っぽくと、トルコのディーヴァと言われるだけのことはある。

歌詞はすべて英語。曲づくりには、ブリトニー・スピアーズに曲を提供しているピーター・クヴィントはじめ、フランス、インドネシアなどいくつもの国のミュージシャンがかかわっている。だからトルコ・ポップスといっても、トルコ人以外にも聴きやすい味付けがされているんだろう。

もっとも、欧米人(日本人も)が「トルコ的」と感ずるエキゾチシズムを意図的に狙った「逆オリエンタリズム」の気配もあるかもしれない。そのあたりは、他にトルコ・ポップスを聴いてないのでよく分からない。

ま、そんな難しいことは考えなくても、歯切れ良く浮き浮きしてくるようなリズムは休日の朝、食事の支度をしたり、部屋の片づけをしたりしながら聴くのに最適。カミさんの家事専用BGMと化しているナワール・エル・ズグビー(レバノン・ポップス)とともに、最近の「元気モード」用の音楽はこれ。


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