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July 10, 2026

『シラート』

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『シラート(原題:SIRAT)』を見て思い浮かべたのは、19世紀末、映画が誕生して間もない時期につくられた『ラ・シオタ駅への列車の到着』。駅のホームにカメラを据え、蒸気機関車が到着するのを撮った1分足らずの映画。観客は機関車がどんどん大きくなって自分に近づいてくるのに、自分が轢かれてしまうのではないかと恐れて逃げ出したという。これが事実だったかどうかは分からない。ただ、観客にそんな不安を与えるほどに、初期の見世物としての映画は驚きを与えるものだった。『シラート』は、そんな映画黎明期の驚異を再現している、と思った。特に、冒頭から最後まで大音量で流れる音楽(音響)と映像が。

アフリカの砂漠で開かれるレイブ・パーティに、中年男と小さな息子が紛れ込んでくる。男の娘が行方不明になり、探しにきたのだ。娘は見つからず、男と息子は小さな車で、次のレイブに行く2台の大型キャンピングカーについてサハラ砂漠と岩山を横断することになる。

砂漠に大型スピーカー20台以上を据えたパーティ。最初から最後まで、聴く者の心をかき乱し、不安をかきたてる重低音大音量の音楽が流れている。そしてサハラ砂漠と、そこに突き出る巨大な岩山の圧倒的な映像。映画を見ている間、その音と映像に晒される。それは映画を「鑑賞」するというより、「体験」するというに近い。地獄めぐりのような一行の旅は、今のわれわれが置かれている世界の比喩だろう。

この凄さは劇場でないと、パソコンやテレビの画面と音では体験できない。音楽・カンディング・レイ、音響・ライア・カサノバス、撮影・マウロ・エルセ、監督・オリベル・ラシェ。この名前は記憶しておこう。プロデューサーはペドロ・アルモドバル。

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