« 南三陸町・高野会館 | Main | 『シラート』 »

July 06, 2026

『急に具合が悪くなる』

Photo_20260706175101

なんだかよく分からないけど、今まで見たことのない映画を見てしまった。それが『急に具合が悪くなる』(濱口竜介監督)の3時間16分を見終わっての感想。物語の展開で観客を惹きつける大半の映画とは違うし、かといってヌーベルヴァーグ以後の反物語的な手法でもない。端正なスタイルの映画。女性主人公二人のシスターフッド映画に見えるけれど、そうくくってしまっては、この映画の大事なものを取り逃がす気もする。例えば真理が演出する劇中劇は病者と健常者にかかわるもので、それを演ずる役者は自閉症の孫を連れている。これもまた映画の核にかかわってくる。映画は主に二人の会話で進んでいくけれど、言葉をめぐる対話劇でもない。途中から肉体と肉体の接触といった、身体的なものが画面にせりあがってくる。斎藤幸平みたいな資本主義に関する哲学的議論があるかと思えば、夜のセーヌ河や京都近郊らしい山間の、なんとも美しい風景のショットがある。

高齢者施設で「ユマニチュード」という、患者の尊厳を守るケア技法を実践するマリー=ルー(ヴィルジニー・エフィラ)と、舞台の演出家でステージ4の癌を患っている真理(岡本多緒)がパリで出会う。二人がセーヌの河岸で、高齢者施設で、日本の里山の風景なかで、会話によって互いの存在への理解と共感を深めてゆく。二人が「出会うべくして出会った」その道程を、適度な距離を取りながらカメラが見ている。

後半、施設に住むことになった真理が、認知症などを患う入所者に身体を使ったワークショップを行う。それに反応した入所者や真理、介護者も入り混じって身体を触れあわせあう。いくつもの身体の部分と部分が絡みあう息をのむショットが「今まで見たこともない」という感覚を象徴していた。ヴィルジニー・エフィラ(『ベネデッタ』がよかった)と岡本多緒はカンヌ映画祭最優秀女優賞を同時受賞。

 

 

|

« 南三陸町・高野会館 | Main | 『シラート』 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



« 南三陸町・高野会館 | Main | 『シラート』 »