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September 02, 2025

『美しい夏』

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これだけ猛暑日がつづくと脳も身体もバテてうまく働かない。ともかく気持ちいい映画を見たいなあと思って選んだのがイタリア映画『美しい夏(原題:La Bella Estate)』。これが正解だった。北イタリアのトリノを舞台にした女性2人の青春映画。脆く、はかない、そして残酷でもある時間を感じさせて、いい映画でした。原作はチェーザレ・パヴェーセの同名の小説。

16歳のジーニア(イーレ・ヴァネッロ)は田舎からトリノに出て兄と一緒に暮らし、お針子として働いている。おとなしく、引っ込み思案だが、服つくりの才能は認められている。兄と出かけた郊外のピクニックで、年上のアメーリア(ディーヴァ・カッセル)に出会う。美人で奔放な彼女は画家のアトリエでモデルとして金をかせいでいる。ジーニアはアメーリアに惹かれ、彼女に従ってアトリエに出入りし、画家たちのボヘミアンな世界にも惹かれてゆく。時は1938年、ムッソリーニ政権下。

2人が出会うトリノ郊外の夏の湖はじめ、渋い色彩の風景のなかで2人の仲が、深まってゆく。アメーリアは画家たちと関係があり、ジーニアもひとりの画家に惹かれてゆくが、アメーリアはジーニアに「軽薄な男たちといるより、女同士のほうがいい」と言う。木立のなかを歩いたり、自転車に乗って町を走ったり、落ちて積もった紅葉のなかに身を横たえたり、トリノの町に雪が降ったり、2人の背景の風景を見ているだけで楽しい。

時代を感じさせるショットも短く挿入される。窓の外からムッソリーニの演説が聞こえてくる。壁には彼のポスターが見える。ジーニアが洗濯物を取り込むと、そばにファッショ党の制服、黒シャツが干してある。観客はやがて戦争が始まることを知っているから、2人の時間が一層いとおしく感じられる。

奔放なアメーリアを演ずるディーヴァ・カッセルはモニカ・ベルッチの娘。モニカ・ベルッチは、少年が憧れる年上の女になった『マレーナ』とか、セクシーな高級娼婦になった『シューテム・アップ』とか、何本か見ていて印象に残る女優のひとり。娘のディーヴァは高級ブランドのモデルとして有名らしいが、どんどん映画に出てほしいなあ。

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