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September 29, 2025

写真展「在日クルド人と共に暮らす」

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写真展「在日クルド人と共に暮らす」(~9月28日、川口市立アートギャラリー・アトリア)に行ってきた。鈴木雄介、Refik Tekin、上田恵利加の写真で、主催はNGO「在日クルド人と共に」。トルコのクルド人地域の暮らしや祭、主に埼玉県で暮らすクルド人家族の生活、ボランティアの日本語学校などの風景。トルコで撮影された生活や歌や踊りの動画も流れている。一方、最近とみに増えたクルド人に対するヘイトの文面も紹介されている。主催者は「日本に暮らすクルド人の背景を知ると同時に、彼女・彼らの生きる力を感じてもらい、共に暮らす社会を考える契機にしたい」と述べている。報道やSNSではヘイトや外国人への規制ばかりが目立つが、最終日、たくさんの市民が見にきていた。

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September 21, 2025

丸木美術館

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東武東上線東松山駅からバスで15分ほど、バス停から15分歩いて丸木美術館へ行く。丸木位里、俊夫妻の「原爆の図」全14双が展示されている。きっかけは、先日見た「記録をひらく 記憶をつむぐ」展(東京国立近代美術館)に、「原爆の図」のうち2双(再制作)が展示されていたこと。以前から見たいと思っていたが、その上、美術館が9月末から2年間リニューアルのため休館と聞いた。この歳になると、2年後に見に行けるとは限らない。小雨のなか、まだ緑濃い丘と大きな実のなった栗畑を見ながら歩くのは気持ち良かった。

「原爆の図」全14双は、図版で見ていたのとは全く違う印象。時間を忘れて見入ってしまった。墨が画面全体を覆っている(位里は日本画家)。墨の黒と、炎と血の朱はずっと記憶に残るだろう。同時に、位里、俊、スマ(位里の母)の名作展もやっていて、3人の絵も楽しめる。9月28日まで。1日がかりだけど、行ってよかった。

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September 19, 2025

土田ヒロミ『Hiroshima Collection』

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土田ヒロミ『Hiroshima Collection』(NHK出版)の感想をブック・ナビにアップしました。

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September 09, 2025

『遠い山なみの光』

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『遠い山なみの光(原題:A Pale View of Hills)』は不思議な感触の映画だった。カズオ・イシグロの原作を石川慶が監督した日・英・ポーランド合作映画。セリフも映像も見慣れた日本映画のそれではないし、イギリスの堅実なリアリズム映画とも違う。ポーランドで映画を学んだ石川監督とポーランド出身のカメラ、ピオトル・ニエミイスキ(いくつもの印象的なショットがある)のチームが醸し出す色でありリズムなんだろうか。加えて、長崎とイギリスが舞台のこの映画で主人公の悦子(吉田羊)が娘のニキと英語でしゃべりはじめたとき、そうだ、原作は英語の小説なんだよな、と気づいた。日本語の小説や日本映画には、日本人には当然のこととされ語られない前提がいっぱいある。日本人の琴線を揺さぶるセリフや映像やリズムも、つくる側、見る側、ともにたっぷり蓄積されている。この映画にはそれがない。それが新鮮だった。

1980年代、イギリスの田舎に住む悦子のもとを、ロンドンに住む娘のニキが訪ねてくる。大学を中退し物書きを志すニキは、イギリス人の父と結婚して渡英した母・悦子の長崎時代の思い出を聞いて作品にしようとしている。

1950年代、長崎で結婚し妊娠していた悦子(広瀬すず)は、川原のあばら家に住む佐知子(二階堂ふみ)とその娘と知り合う。悦子も佐知子も原爆を体験しているが、背景として語られるだけでそこへ深入りはしない。佐知子はアメリカ兵と恋愛し、すぐにもアメリカに旅立つと悦子に語る。佐知子の娘は行きたくないとぐずっている。結婚し社会の常識に沿って生きている悦子と、周囲の目を構わず自分の意思を押し通そうとする佐知子。

若い悦子が妊娠していたのは、ニキの姉にあたる長女で、イギリスで音楽家になるはずだったのに自死していた。老いた悦子は、それが自分のせいではなかったかと自問している。悦子と娘、佐知子と娘。老いた悦子が語る佐知子と娘の記憶が、若い悦子と娘に重なってくる。

二組の相似た母娘について、映画は最後にある謎解きをしている。でも原作にそれはなく、謎は謎のまま宙吊りにされ多様な解釈を許す。謎解きは石川監督が映画化に当たっての原作の解釈。カズオ・イシグロはこの映画のプロデューサーとしてもクレジットされているから、原作の自由な解釈をむしろ楽しんでいるのだろう。

対象から距離を置いたショットが多く、色彩も抑えられ、そのクールな感じがカズオ・イシグロの淡い光の世界にぴったり。 

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September 02, 2025

『美しい夏』

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これだけ猛暑日がつづくと脳も身体もバテてうまく働かない。ともかく気持ちいい映画を見たいなあと思って選んだのがイタリア映画『美しい夏(原題:La Bella Estate)』。これが正解だった。北イタリアのトリノを舞台にした女性2人の青春映画。脆く、はかない、そして残酷でもある時間を感じさせて、いい映画でした。原作はチェーザレ・パヴェーセの同名の小説。

16歳のジーニア(イーレ・ヴァネッロ)は田舎からトリノに出て兄と一緒に暮らし、お針子として働いている。おとなしく、引っ込み思案だが、服つくりの才能は認められている。兄と出かけた郊外のピクニックで、年上のアメーリア(ディーヴァ・カッセル)に出会う。美人で奔放な彼女は画家のアトリエでモデルとして金をかせいでいる。ジーニアはアメーリアに惹かれ、彼女に従ってアトリエに出入りし、画家たちのボヘミアンな世界にも惹かれてゆく。時は1938年、ムッソリーニ政権下。

2人が出会うトリノ郊外の夏の湖はじめ、渋い色彩の風景のなかで2人の仲が、深まってゆく。アメーリアは画家たちと関係があり、ジーニアもひとりの画家に惹かれてゆくが、アメーリアはジーニアに「軽薄な男たちといるより、女同士のほうがいい」と言う。木立のなかを歩いたり、自転車に乗って町を走ったり、落ちて積もった紅葉のなかに身を横たえたり、トリノの町に雪が降ったり、2人の背景の風景を見ているだけで楽しい。

時代を感じさせるショットも短く挿入される。窓の外からムッソリーニの演説が聞こえてくる。壁には彼のポスターが見える。ジーニアが洗濯物を取り込むと、そばにファッショ党の制服、黒シャツが干してある。観客はやがて戦争が始まることを知っているから、2人の時間が一層いとおしく感じられる。

奔放なアメーリアを演ずるディーヴァ・カッセルはモニカ・ベルッチの娘。モニカ・ベルッチは、少年が憧れる年上の女になった『マレーナ』とか、セクシーな高級娼婦になった『シューテム・アップ』とか、何本か見ていて印象に残る女優のひとり。娘のディーヴァは高級ブランドのモデルとして有名らしいが、どんどん映画に出てほしいなあ。

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