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August 29, 2025

「記録をひらく 記憶をつむぐ」展

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「記録をひらく 記憶をつむぐ」展(竹橋・国立近代美術館、~10月26日)へ。このタイトルと、看板に使われている松本竣介の絵では何の展覧会かよく分からないけど、近代美術館が持つ戦争画を主体にした展覧会。これが実に見ごたえのある、充実したものだった。

戦後、アメリカ軍は、戦中に日本軍が藤田嗣治、宮本三郎、小磯良平、向井潤吉らに描かせた戦争画約150点を接収し、その後、「永久貸与」という形で近代美術館に返還した。美術館はそれらの戦争画を常設展で数点ずつ小出しに展示してきたが、今回の企画はそこからの24点を中心に、関連する絵画、ポスター、グラフ雑誌、広島市民が描いた被爆の絵などを集めている。それらを「アジアへの/からのまなざし」「戦場のスペクタクル」「神話の生成」「日常生活の中の戦争」といった視点から、関連作を並べるなどして展示。戦争画を単に善悪の問題でなく、歴史のなかに位置づけようとする姿勢から、いろんなことを考えされられる。

常設展で何度か見たものもある。藤田の「アッツ島玉砕」や「サイパン島同胞臣節を全うす」は、プロパガンダでありながら同時に時代を超えようとする画家の醒めた目を感じる。日本画の山口蓬春が描く「香港島最後の総攻撃図」は美しすぎる。猪熊弦一郎「長江埠の子供達」に描かれた中国の子供たちの眼差しは、彼らが何を感じているかを正確に写しとっている。向井潤吉の、日本兵が森林に埋もれ飲み込まれるような「マユ山壁を衝く」と、戦後に農家を描いた「飛騨立秋」が並べられて、戦後、一貫して古い民家を描きつづけた向井の心のうちを想像してみたくなる。

ところで、この展覧会はチラシや図録がつくられていない。いろんな事情があるようだけど、将来に記録をひらく、記憶をつむぐのに図録は必須。それだけは残念だった。その意味でも、見ておかないと二度と見られない展覧会です。

 

 

 

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August 19, 2025

『虚言の国』

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ティム・オブライエン『虚言の国 アメリカ・ファンタスティカ』(ハーパーコリンズ・ジャパン)の感想をブック・ナビにアップしました。

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August 16, 2025

神保町に、ひと棚出店

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神保町すずらん通りにPASSAGEというシェア型共同書店があります。フランス文学者・鹿島茂さんがプロデュースする店で、ひと棚ひと棚を有料で貸し出し、借りた人が自分が売りたい新刊・古書を並べて売るスタイル。鹿島さんが主宰する書評サイトの執筆者はじめ、いろんな個人、グループ、出版社が出店しています。

そのひと棚を借り、昨日、本を運んで並べてきました。現役時代に編集者としてつくった絶版本、フリーになってから出した自分の自費出版本、趣味の映画や写真の本です。棚にはパリの通りの名前がついていて、私の「編集者の本棚」(という棚名)はアレクサンドル・デュマ通り3番地。お近くへお出での際は覗いてみてください。

 

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August 14, 2025

『「桐島です」』

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淡々とした映画なのが、とてもよい。1975年に企業連続爆破事件で指名手配された東アジア反日武装戦線のメンバー、桐島聡の50年に渡る逃亡生活。最初の20分くらいで企業爆破事件を当時の映像を交えて描く。多数の死者を出したことでメンバーは動揺し、以後は電話で予告したり、人のいない時間に爆発させたりする。寄せ場で働く桐島(毎熊克哉)と宇賀神(奥野瑛太)は他のメンバーが逮捕されたのを知り、湘南の神社で会う約束をして逃亡生活に入る。ここまでが序章。

桐島は、偶然に見た募集看板から藤沢の工務店で働くことになる。古い借り上げアパートに住み、毎日、仕事に出かける。朝、歯を磨き顔を洗ってインスタント・コーヒーを飲む。トラックに乗って現場に行く。そんな桐島の日常になるあたりから内田勘太郎のギターが入ってくる。時にブルージーな、時に画面に寄り添う静かな音楽が、この映画のリズムをつくっている。そのあたりで思い出したのは『PERFECT DAYS』。人生を「捨てた」男、役所広司が公衆トイレの清掃員として木造アパートで判で押したような日常を送る、自ら選んだその生の喜びを描く映画だった。ファンタジーとしてよくできた作品だったが、こちらの桐島は自ら選んだわけではない。しかも指名手配されている。寝るときも靴をはき、枕元にバッグを置く。パトカーの音や人声が聞こえれば、起き上がって窓から外を覗く。それでも夜はライブハウスで酒を飲み、河島英五の「時代おくれ」を歌うキーナ(北香那)に好意を寄せられる。桐島は自ら彼女から離れていく。「時代おくれ」はキーナと桐島によって三度歌われる。「目立たぬように はしゃがぬように」という歌詞(阿久悠)は、歌のタイトル(映画の序章で、ガールフレンドが桐島に「時代おくれね」といって去ってゆく)とともに、映画のキーワードになっている。

桐島を演ずる毎熊克哉が素晴らしい。抑えた表情が、優しさと、内に秘めたものを語っている。20代から60代までの変化は髪型と眼鏡の変化で見せる。白髪髭面の60代の桐島は背も丸まり生気を失っている。でも現場の外国人労働者と親しくなり、自室では、安倍首相が安保法制について語るテレビ画面に物を投げつける。素材から予想されるような社会派の映画ではないけれど、現在にもつながっている。

桐島にとって、その日をどう送るかが生きることのすべてだったろう。1日1日をどう送るか。それは、惰性的な日常を送る人間にとっての問いともなる。広く考えれば桐島の同世代者であり、今は癌サバイバーの後期高齢者である小生にとっても他人事でない。髙橋伴明監督。梶原阿貴脚本。

 

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