「記録をひらく 記憶をつむぐ」展
「記録をひらく 記憶をつむぐ」展(竹橋・国立近代美術館、~10月26日)へ。このタイトルと、看板に使われている松本竣介の絵では何の展覧会かよく分からないけど、近代美術館が持つ戦争画を主体にした展覧会。これが実に見ごたえのある、充実したものだった。
戦後、アメリカ軍は、戦中に日本軍が藤田嗣治、宮本三郎、小磯良平、向井潤吉らに描かせた戦争画約150点を接収し、その後、「永久貸与」という形で近代美術館に返還した。美術館はそれらの戦争画を常設展で数点ずつ小出しに展示してきたが、今回の企画はそこからの24点を中心に、関連する絵画、ポスター、グラフ雑誌、広島市民が描いた被爆の絵などを集めている。それらを「アジアへの/からのまなざし」「戦場のスペクタクル」「神話の生成」「日常生活の中の戦争」といった視点から、関連作を並べるなどして展示。戦争画を単に善悪の問題でなく、歴史のなかに位置づけようとする姿勢から、いろんなことを考えされられる。
常設展で何度か見たものもある。藤田の「アッツ島玉砕」や「サイパン島同胞臣節を全うす」は、プロパガンダでありながら同時に時代を超えようとする画家の醒めた目を感じる。日本画の山口蓬春が描く「香港島最後の総攻撃図」は美しすぎる。猪熊弦一郎「長江埠の子供達」に描かれた中国の子供たちの眼差しは、彼らが何を感じているかを正確に写しとっている。向井潤吉の、日本兵が森林に埋もれ飲み込まれるような「マユ山壁を衝く」と、戦後に農家を描いた「飛騨立秋」が並べられて、戦後、一貫して古い民家を描きつづけた向井の心のうちを想像してみたくなる。
ところで、この展覧会はチラシや図録がつくられていない。いろんな事情があるようだけど、将来に記録をひらく、記憶をつむぐのに図録は必須。それだけは残念だった。その意味でも、見ておかないと二度と見られない展覧会です。





Recent Comments