« 類家心平カルテット | Main | 水の町、三島 »

July 10, 2025

『ルノワール』

Renoir

才能ってこういうものか、と驚いた。『ルノワール』は、早川千絵監督の長編デビュー作『PLAN75』につづく2作目。小学5年生の少女フキ(鈴木唯)を主人公に、ひと夏の体験を描く。そのみずみずしさが素晴らしい。

1980年代の地方都市。フキは学校の作文で「みなしごになりたい」と書いて母親(石田ひかり)を嘆かせる女の子。仕事に忙しい母親に距離を感じてるらしい。父親(リリー・フランキー)は癌で闘病中。フキはTVで流行のオカルトにはまり、同じ団地に住む屈託を抱えた女性(河合優美)に幽体離脱を試してみる。裕福な家の女の子と知り合って、自分の家と違う雰囲気を感じたり、伝言ダイヤルで若い男に誘われて会い、あやうく難を逃れたり。父親の癌は進行していて、両親には溝がある。母親は会社の研修で知り合った男と怪しげな関係になる。

それぞれに苦しみや傷を抱えた周囲の大人たちの傍で、フキはそれを黙って見ている。大きな意志的な瞳が印象的。あるいは、拒絶の意思を首を大きく振って無言で表す。フキが母親の自転車の後ろに乗って川の土手を走る。風に揺れる母親のブラウスにそっと触ってみる。自分で買って父親の病室に飾ったルノワールの少女の複製画を、父親が亡くなった後、自分の部屋にかけて手鏡で太陽の光を当ててみる。そんなショットの積み重ねから、フキの心のありようがじわっと浮かび上がってくる。

11歳の女の子がいろんな経験をして少しだけ大人になるさまを、少ない言葉と見事な映像で納得させてくれる。デビュー作『PLAN75』は社会派的な映画だったけど、やはりセリフは抑制的で、はっとするようなショットがあった。そんな資質が2作目で全開した感じ。

 

|

« 類家心平カルテット | Main | 水の町、三島 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



« 類家心平カルテット | Main | 水の町、三島 »