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May 10, 2025

『未完成の映画』

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何の予備知識もなくこの映画を見たら、撮影中の映画がコロナ禍で中断されるに至ったドキュメンタリーと思うだろうな。製作中のスタッフが泊まるホテルの部屋や廊下を手持ちカメラが追いかける。スタッフや役者や監督が撮るスマホ映像もたくさん出てくる。そのなかに、実際にコロナでロックダウンされた武漢を撮った本物のスマホ映像も交じり込んでいる。ロウ・イエ監督の『未完成の映画』は、フィクションとノンフィクションが入り混じった、どちらでもありどちらでもないような作品。その緊迫感から、未曽有の事態に直面した人々の不安と混乱が伝わってくる。

監督(マオ・シャオルイ)やスタッフが10年前に中断した映画の映像を発掘し、これを完成させようと主演したジャン(チン・ハオ)に連絡を取る。ジャンは、ゲイをテーマにしたこの映画は完成しても検閲を通らないと反対するが、結局は納得し、武漢近くの町で撮影が始まる。やがて武漢でコロナが発生し、スタッフにも感染者が出る。ホテルも封鎖され、ジャンや監督、スタッフはホテルに缶詰めされ身動きが取れなくなる。ジャンは、北京にいる子どもを産んだばかりの妻(チー・シー)の不安をなだめようと、スマホで連絡を取る。自身も、子どもの写真に慰められる。閉じ込められたスタッフは、スマホで飲み会をしたり、我慢できなくなって廊下に集まって踊り、警備員に制止されたり。やがて封鎖は解かれるが、映画は完成しなかった。

発掘された10年前の映像として映されるのは、ロウ・イエ監督の『スプリング・フィーバー』の未使用映像。これもチン・ハオが主演していた。スタッフも、監督以外は実際のスタッフが実名で登場している。彼らの動きを、まるでメイキングでもつくるみたいにドキュメンタリータッチで撮影している。パソコン画面のように、スマホの複数の分割映像が映される。最初にコロナを公表し当局からデマと断罪された武漢の医師・李文亮が死んだというスマホ画面も登場する。ロウ・イエはどの映画でも実験的なことをやっているけど、その精神がここでは特にはまった。

この作品、中国で公開予定はないという。声高に当局を批判しているわけでないが、そのとき何が起こったかを黙って再現するだけで伝わるものは伝わってくる。

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