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February 17, 2025

『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』

The_room_next_door_poster

スペインのペドロ・アルモドバル監督は、いつもドラマティックな映画で僕らを楽しませてくれる。その映像、色彩感覚の官能的なことは、世界を見回しても右に出る者がいないんじゃないか。『ザ・ルーム・ネクスト・ドア(原題・The Room Next Door/La habitación de al lado)』はそのアルモドバル監督がアメリカで、英語で撮った作品。

作家のイングリッド(ジュリアン・ムーア)は、かつて親しくつきあったジャーナリストのマーサ(ティルダ・スウィントン)が末期がんであることを知る。二人は同じ雑誌で働き、同じ男を恋人にしたこともある。シングルであるマーサは、違法な薬物を手に入れ安楽死を計画している。彼女はイングリッドに、最後の日々を隣の部屋で一緒に過ごしてほしいと頼み、マーサはそれを承諾する。

ニューヨークに住むマーサの部屋のカラフルだけど品のいいインテリア。壁に飾られた写真や絵画のアート作品。二人が着る服のこれもカラフルなセンスの良さ。最期の日々のために借りた、森のなかの斬新なスタイルの家。二人で見るキートンその他の古い映画。知的セレブリティと言ってしまえばそれまでだけど、二人の会話が面白く次々に登場するモノたちにも目を奪われる。

痩せて鎖骨が浮き出たマーサを演ずるティルダ・スウィントンが、最後にマーサの娘、若い女性として二役で登場したのにびっくり。昔見た『猟人日記』が記憶に残ってるけど、すごい役者だなあ。

と、たっぷり楽しませてくれたが、安楽死を計画するマーサが冷静に事を推し進め、化粧し着飾って死体となる最後の瞬間まで美意識を貫く自我意識の強烈さ(しかも違法行為に親友を巻き添えにして)には、ちょっと引いてしまう。先日見た日本映画の『敵』も、年老いた元大学教授が計画的に自殺する話だったけど、途中から妄想や錯乱にさいなまれる彼のほうに親近感を覚えてしまうのは日本人の故か。

 

 

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