『ザ・バイクライダーズ』
『ザ・バイクライダーズ(原題・The Bikeriders)』は写真家ダニー・ライアンの同名の写真集(1968)に基づいてつくられた映画。僕がこの写真集をはじめて見たのは1970年代前半、写真雑誌の編集部に配属されたときだった。写真には素人だったが、アートシアターで見たアメリカのインディペンデント映画『アメリカの影』(ジョン・カサヴェテス監督)にも通じる、同時代の生々しい空気を感じた。ライアンは、シカゴの「アウトローズ」というバイク集団と数年にわたって行動を共にして彼らを写真に撮り、インタビューをおこなった。ジェフ・ニコルズ監督がそれをもとに脚本を書き、監督している。
主な登場人物が3人。バイク集団のボスであるジョニー(トム・ハーディ)。ジョニーは荒くれ者の集団を統率し、リーダーの座に挑戦してくる者に「拳か、ナイフか」と選ばせて闘い、叩きのめす。集団を抜ける者には、血でけじめをつける。リーダーのジョニーに憧れるのは、若くて血の気の多いベニー(オースティン・バトラー)。普通の女の子のキャシー(ジョディ・カマー)は、ふとしたことからベニーと出会い、結婚することになる。
映画は、写真家のダニーがニコンとテープレコーダーを手にキャシーにインタビューするスタイルで、彼女の市民的な視点からアウトロー集団の行く末を語る。1960年代風俗の懐かしさと、アメリカとアメリカ人の原型を見るような粗暴ともいえる荒々しさが同居した映画だった。トム・ハーディはイギリスの役者だけど、写真集からそのまま抜け出てきたような気配をまとっている。
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