『夜の外側』
マルコ・ベロッキオ監督『夜の外側(原題:ESTERNO NOTTE)』は、上映時間5時間40分のイタリア映画。午前11時から始まり1時間の休憩をはさんで、終わったのは午後6時近かった。
題材は、1978年にモーロ元首相が左翼グループ「赤い旅団」に拉致・殺害された事件。もともとテレビ用に企画されたもので、6話のエピソードからなる。
といって事件そのものを、あるいはその「事実」や「真実」を描くのではない。冒頭、現実には殺害されたモーロが解放され病院に収容されるシーンが出てくるように、現実と、ありえたかもしれない現実が入り混じった、虚実皮膜のドラマ。6話それぞれが、捜査を指揮する内務大臣、モーロとも親しいローマ教皇、「赤い旅団」のシングルマザーのメンバー、モーロの妻、そしてモーロ本人の視点から語られることで、それぞれの立場の苦悩が見えてくる。モーロを父と仰ぐ内務大臣の逡巡や、身代金を準備した教皇庁、リーダーの方針に異を唱える「赤い旅団」メンバー、政府と党を批判するモーロの妻の毅然とした姿勢、などからは、殺害という結末でなく、別の、ありえたかもしれない現実の種子も見て取れる。解放されたモーロがベッドでうっすら目を開き、面会したアンドレオッティ首相(妥協を拒否した強硬派)、党の書記長、内務大臣を何とも形容しがたい眼差しで見やる。映画を見終わって、冒頭の、ありえたかもしれない現実のショットが思い出された。
ゆったりしたリズム、しかし緊張の持続する画面。堂々たる映画で、5時間40分を長いとはまったく感じなかった。映画漬けを楽しんだ一日。
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