『哀れなるものたち』
『哀れなるものたち』(原題:POOR THINGS)に主演し、プロデューサーでもあるエマ・ストーンを知ったのは『バードマン』や『ラ・ラ・ランド』だった。彼女の経歴を見ると子供のころから舞台に出たり、主にコメディ分野のTVドラマや日本未公開映画にたくさん出演している。そんなことを調べたのは、この映画のエマが並みのハリウッド女優と違うギミックな演技や激しい性描写で、どんなキャリアの女優か知りたいと思ったから。『女王陛下のお気に入り』で組んだヨルゴス・ランティモス監督と再びタッグを組み、19世紀ヨーロッパを舞台に夢幻的なダーク・ファンタジーになっている。
フランケンシュタインのような容貌の天才外科医ゴドウィン(ウィレム・デフォー)は、身体は大人で精神は幼児のベラ(エマ・ストーン)と、ロンドンのヴィクトリア様式の館で暮らしている。ゴドウィンは、ベラの発育を記録する医学生とベラを婚約させるが、それに飽き足らないベラは遊び人の弁護士ダンカン(マーク・ラファロ)と駆け落ちし、リスボン、アレキサンドリア、マルセイユ、パリと冒険の旅に出る。何人もの大人とつきあい、一方、虐げられた人々を見て、ベラはダンカンの庇護を離れ独り立ちしてゆく。パリでベラは自ら望んで娼館で娼婦として働く。やがてロンドンへ戻り……。
ゴドウィンの顔に醜い縫い痕があったり、ベラの精神と肉体が乖離している秘密。産業革命後のブルジョアジーや貴族の子弟が、大人になるイニシエーションとしてヨーロッパ各地を旅した「グランド・ツアー」。それらを軸にしたゴシック・ロマンふうな物語に、女性の自立や男権社会への風刺が重なってくるのが、いかにも今ふうだ。各都市の幻想的なセットも楽しい。昨年のヴェネツィア映画祭金獅子賞受賞作。
Comments
強烈な体験でした...
好きかと問われれば、NO
だけど、嫌いかと問われれば...
Posted by: onscreen | February 11, 2024 05:52 PM
私も、好きかと問われれば、NOですが。
Posted by: 雄 | February 23, 2024 08:20 PM