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January 12, 2024

『枯れ葉』

Kuolleet_lehdet_poster

6年前、前作発表後に引退を表明したアキ・カウリスマキ監督の新作『枯れ葉』(原題:KOULLEET LEHDET)がやってきた。カウリスマキにどんな心境の変化があったのか分からない。でも今回の新作では、主人公の部屋のラジオから繰り返しロシアによるウクライナ侵攻のニュースが流れるから、ロシアと国境を接するフィンランドの映画監督として、それも関係しているかもしれない。といって、むろん政治的映画じゃない。カウリスマキの原点に戻るような、孤独な中年の男と女が出会い、惹かれあう。それだけのお話。

ホームレスに賞味期限切れのパンを渡し、自分もバッグに入れたのを咎められ失職したスーパー店員のアンサ(アルマ・ポウスティ)。アルコール依存で仕事していたが、それがバレてやはり失職する溶接工ホラッパ(ユッシ・ヴァタネン)。二人はカラオケで出会い、言葉は交わさないまま惹かれあう。友人を介して知り合い、映画を見たり食事したり。でもアンサはホラッパの飲酒癖を許せない。やがて断酒したホラッパはアンサに電話し、アンサは「すぐ来て」と応えるのだが……。

すべてがシンプルで、余分なものが削ぎ落とされている。いつものカウリスマキだけど、セリフは少なく、役者の動作や表情もぶっきらぼう(それだけに、アルマのかすかな微笑みがいい)。そこから生まれるユーモア。画面は固定カメラで、カット数も少ない。カウリスマキ独特のこのスタイルは、無声映画を見ている感じと言ったらいいか。ただ、画面に流れるたくさんの音楽が感情をつなぎ留め編集する役を果たしている。これも、無声映画に音楽の伴奏がついたと想定すればいいのか。いきなり「竹田の子守歌」が流れ(カウリスマキは日本の歌も好きで、どの作品だったが、いきなりクレイジーケンバンドが流れたのに驚いた)、フィンランドのポップス、シューベルトのセレナーデ、シャンソンの「枯葉」まで。

いつも質素な水色のコートを着ているアルマ・ポウスティが魅力的だなあ。彼女を見ているだけで心なごむ。ラストがこれまたカウリスマキで、ささやかな希望に満ちたショットに「枯葉」が流れると、つい涙腺がゆるむ。

 

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Comments

日本での興収がロングランで1億超えと、カウリスマキ史上初だそうで、結構なことです!

Posted by: onscreen | February 11, 2024 05:54 PM

こういう地味な映画に人が入るのは嬉しいですね。数年に一度しか映画館に行かない友人に勧めたら、感激してました。

Posted by: 雄 | February 23, 2024 08:23 PM

それは嬉しいですね!

つい最近 Perfect Ways もみたんですが
こちらも渋く、音楽の使い方が上手でした

Posted by: onscreen | February 24, 2024 09:30 AM

PERFECT DAYSは選曲がメッセージになっていましたね。

Posted by: 雄 | February 27, 2024 01:57 PM

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