須田剋太展
埼玉県立近代美術館の常設展示で須田剋太特集が組まれている(さいたま市浦和区、~11月27日)。戦後の抽象画を中心に、戦前の具象画も含めて四十数点。須田は抽象画家として知られるが、1970年代以降、司馬遼太郎「街道をゆく」の挿画を担当したことをきっかけに具象にも復帰した。小生、その「街道をゆく」の担当編集者として須田さんの晩年、司馬さんとともにバスクや中国を旅したことがある。
須田さんの没後、「街道をゆく」挿画展や、晩年の迫力ある具象画展は開かれたが、抽象画を中心にした展示は、これらの作品が寄贈された埼玉県近美ならでは(須田さんは埼玉県出身)。担当編集者だったころ、西宮の須田さんの家に挿画を受け取りにいくと、アトリエに売れない抽象画が山のように積んであったのを覚えている。抽象画といっても須田さんらしくごつごつした質感(マチエール)が素晴らしく、写真の2点はカンバスでなくドンゴロスを使って立体的なものに仕立てられている。
戦前の年老いた男性の人物画も朴訥な人となりを感じさせ、思わず須田さんの自画像と錯覚してしまった。
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