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November 11, 2023

『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

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大作『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』を見て最初に気になったのは、製作費と興行収入の対比。というのは、かつてこの映画と同様に、アメリカ人が見たくないであろうアメリカ史の暗部を主題にした大作『天国の門』が大コケし(製作費4400万ドル、興行収入350万ドル)、製作したユナイト社の経営が傾いてMGMに買収された過去があったから。英語版wikipediaによると、『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』は製作費2億ドルに対して興行収入1.2億ドル。まだ各国で公開中で興行収入は増えるだろうから、『天国の門』のようにはならないだろう。にしても、かなりの赤字が出そうだ。

『天国の門』は西部開拓史でアングロサクソン系移民による東欧系移民の虐殺がテーマだったが、『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』は石油ブーム時代の白人による先住民の連続殺人をテーマにしている。『天国の門』は役者は地味だし作品の出来もよくなかったが、今回はディカプリオ、デ・ニーロの共演にマーティン・スコセッシ監督と3枚看板。3時間超をまったく飽きさせず、作品の出来もいい。

1910年代、オクラホマの居留地に押し込められた先住民オセージ族の土地に石油が出て掘削ブームが起きた。各地から企業家や流れ者が押しかけ、一部のオセージ族は裕福になる。第一次大戦を兵士として戦ったアーネスト(レオナルド・ディカプリオ)が、オクラホマで成功している叔父ウィリアム(ロバート・デ・ニーロ)を頼ってやってきて運転手として働くことになる。アーネストは裕福なオセージ族女性モリー(リリー・グラッドストーン)を送り迎えするうち恋仲になり、叔父の勧めもあって結婚する。モリー一族は石油の収入で財産家だが、相続権を持つモリーの姉弟が次々に殺され、モリー自身も病気のため衰弱していく。他にも豊かなオセージ族の不審な死が相次ぎ、連邦捜査官がやってくるのだが、、、。

デ・ニーロの善人面、慈善家面した悪党がなんともいい。ディカプリオはその悪だくみに気づきつつ、妻への愛は持ちつづけるといった役どころ。モリー役のリリー・グラッドストーンは先住民系の女優で、落ち着いた品のいい演技が素晴らしい。

現実にあった事件を素材にし、オセージ族の協力を得て現地で撮影している。冒頭、荒野に広がる無数の木製掘削井戸の俯瞰は圧巻。実際につくったんだろう。CGではこのリアリティは出てこない。アメリカ史の闇というべきテーマを金のかかった大作としてつくる。ハリウッド、ひいてはアメリカという国の活力なんだろう。ディカプリオとデ・ニーロがプロデューサーとして関わり、アップルも出資している。

 

 

 

 

 

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Comments

<デ・ニーロの善人面、慈善家面した悪党がなんともいい

雰囲気ありましたね!

<ディカプリオは

いつも通りでしたね(笑)


賞レースではあまり期待できないかもですが、
リリー・グラッドストーン には何かあげたいですね!

Posted by: onscreen | November 23, 2023 03:28 PM

デ・ニーロは善人やってもうまいから、悪党が光るんでしょうね。

リリーにはぜひアカデミー賞を。

Posted by: 雄 | November 24, 2023 05:15 PM

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