September 25, 2023
September 20, 2023
写真展ふたつ
写真展をふたつ、見てきた。
鈴木秀ヲ「タイムライン」(~10月1日、小伝馬町・ルーニィ247)。主人公はプーチン。ウクライナの戦争が始まって以来、鈴木さんがインスタグラムやフェイスブックにアップしてきたもの。いつものようにフィギュアや印刷物やプラモを組み合わせた世界。プーチンがまるでおとぎ話の悪い王様のように見える。ニヤリとして楽しめます。
大西みつぐ「川の記憶、水の夢」(~9月30日、清澄白河・RYURO)。隅田川に面した小さなホテル・ロビーでの展示。大西さんが育ち、生活してきた東京の東側、墨田川や小名木川などの水や橋の風景。点数は多くないけど、撮影スタイルや撮った時代が違う何組かの写真が「記憶」と「夢」を紡ぎだします。大西さんらしい遊びもあって、こちらもニヤリ。
きつい陽射しこそないが蒸し暑い日、今の体力ではこれが限界。清州橋のたもとで、しばし川面を眺めて帰りました。
September 15, 2023
「挑発関係=中平卓馬×森山大道」展
「挑発関係=中平卓馬×森山大道」展へ(~9月24日、神奈川県立近代美術館葉山)。
写真家の中平卓馬も森山大道も逗子の住民だったから、鎌倉・逗子・葉山の写真がたくさんある。1960年代から(中平が亡くなった)現在までの、友人であり互いに刺激しあう関係でもあった二人の作品が地域性と時代性を交差させて展示されている。
60~70年代の作品はネガが失われてるものが多いからだろう、プロジェクター映像や雑誌が多い。『現代の眼』『映画批評』『構造』『朝日ジャーナル』『アサヒグラフ』と懐かしいものばかり。
もう50年も前の話。中平さんから、中平森山ふたりとも失業状態だったので逗子の沖にある島に大量の写真雑誌を持っていき、一点一点マルバツをつけた、なんて話を聞いたのを思い出した。90年代、こちらが写真雑誌の編集者時代、その中平さんからカラー作品を見せられて戸惑ったこともある。「作品」意識に捕らわれていたこちらには中平さんのカラーをどう評価したものか、よく分からなかった。そんな私的な記憶も交え、森山大道が逗子を撮った最新作までを楽しんだ。
September 08, 2023
『福田村事件』
『福田村事件』を見た。1923年、関東大震災の5日後、千葉県福田村で行商人9人が朝鮮人と間違われ自警団に殺された事件を映画化したもの。ドキュメンタリー映画をつくってきた森達也監督が初めてつくった劇映画。題材も森監督らしく挑戦的だが、社会派というよりもっと多面的な群像劇で、緑豊かな農村を舞台にした艶っぽい画面に惹きこまれた。
映画はまず地震が起きる前の村の様相をたっぷり描く。植民地の朝鮮で教師をしていた澤田(井浦新)が妻の静子(田中麗奈)と村に帰ってくる。インテリの澤田とモダンな洋装の静子は村では異分子。同時にシベリア出兵で死んだ兵士の遺骨も帰ってくるが、兵士の妻(コムアイ)と船頭の倉蔵(東出昌大)は恋仲になっている。年老いた貞次(柄本明)は息子が軍隊に行っている間に息子の嫁との間に子供をつくった(らしい)。植民地での体験から不能になった澤田に見せつけるように、渡し舟に乗った静子は脚を開いて倉蔵を誘惑する。閉ざされた村のエロスが生々しい(脚本の一人、荒井晴彦の仕事だろう)。名主の家柄である村長(豊原功補)は大正デモクラシーの信奉者だが、宴会では在郷軍人会の長谷川(水道橋博士)ら愛国主義の勢いがいい。そして地震が起きる。
戒厳令が敷かれ、「朝鮮人が襲ってくるらしい」と流言が飛ぶ。在郷軍人を中心に自警団が組織される。村人が不安と猜疑にとらわれるなか、新助(永山瑛太)率いる薬の行商の一団がやってくる。彼らは讃岐から来た被差別部落の住民で、村人は讃岐弁の行商団を朝鮮人かと疑い、詰めよる。村長や澤田、倉蔵は村人を落ち着かせようとするが、興奮した村人を前に無力だ。東京へ出かけた夫が帰ってこず不安を募らせた嫁が、いきなり鎌を新助の頭に突き立てる。行商団が逃げ出すのをきっかけに、殺戮が始まる。といっても、クローズアップや細かいカット割りでドラマチックに描かれるわけではない。カメラは引き気味で、竹槍を持つ村人もへっぴり腰、尻もちをついたりする。広い川原で行商団が殺されてゆく画面がリアル。
映画は殺戮した村人たちを断罪する視点で撮られている訳ではない。ただ、普段は善良な村人たちが憑かれたように行商団を殺してしまう過程を映し出す。集団に同調しない船頭の倉蔵。デモクラシーを口にしながら村人たちを抑えられない村長。朝鮮人に同情を寄せながら加害者になった植民地体験のトラウマで、結局は黙ってしまう澤田。被差別部落の解放運動に目覚めて結束する行商団。いろんな視点からこの事件を見ているのがいかにも森監督らしい。ただ、事件を書こうとする新聞記者のセリフがあまりに立派なのが、かつて新聞社にいた身には少々気恥ずかしかったが。
September 05, 2023
September 02, 2023
DVD「DOUBLE RAINBOW」
九州に住む友人から懐かしいDVDが送られてきた。「DOUBLE RAINBOW」。山下洋輔トリオ結成40年を記念したリユニオン・ライブ。2009年、日比谷野外音楽堂で開かれた。この日、1969年から14年間、第1期から第4期にいたるトリオのメンバーが集まって当時の曲を演奏した。DVDを送ってくれた友人とはニューヨークで知り合ったのだが、その友人夫妻、私とカミさんの4人でこのライブに参加した。途中にわか雨が降り、雨上がりに二本の虹がかかったことがタイトルになっている。
あのときの興奮が蘇る。山下(p)、中村誠一(ts)、森山威男(ds)の第1期トリオは1970年代に新宿ピットインで何度も聞いたから、いちばんなじみがある。第4期トリオ、亡くなった武田和命の代役として演奏した菊地成孔が武田の曲「Gentle November」で長い長いソロを吹き終えたとき、カミさんが感に堪えないような声で「いいわぁ」と呟いたのを映像を見ていて思い出した。これをきっかけに、カミさんとしばらく菊地成孔の追っかけになった。
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