「発掘・植竹邦良」展
京王線で府中へ行き「発掘・植竹邦良」展(府中市美術館、~7月9日)を見てきた。「発掘」とあるように、ほぼ無名の画家。サブタイトルは「ニッポンの戦後を映す夢想空間」で、これが何とも濃密で、幻想的で、細密で、絵を見る愉しみをたっぷり味わえた。
ポスターにもなっている「最終虚無僧」は、画面上部で虚無僧が尺八を吹き、下部にメタリックな虚無僧笠(銃弾のようにも見える)が並ぶ。笠の列は画面奥で蛇行する列車に変貌している。画面中央に、未来あるいは古代都市ふうな金色の壁。上部の虚無僧の背後に赤い円があり、周囲には渦巻く灰色の雲(皺しわの日の丸に見える)。過去のようでもあり未来のようでもあり、懐かしくもあり禍々しくもある。この虚無僧笠は70年安保前後、学生運動のヘルメットの群れから発想したらしい。
他にも東大紛争安田講堂陥落と弘田三枝子「人形の家」を重ねた「人形の行く風景」、ヒマラヤ上空の視点から山がうねる東アジアの地形を遠望し、大日本帝国のアジア侵略の図が添えられた「窓より(東アジア展望)」など、シュールレアルな大作が並ぶ。社会的政治的な出来事を素材にしても生なメッセージでなく、すべて異様な夢を見ているようだ。
絵を始めたきっかけが藤田嗣治の戦争画を見たことだというのもうなづける。藤田の戦争画もリアリズムを超えた宗教絵画のようだった。こういう画家がまだ埋もれているんだな。
常設展も小山田二郎や中村宏(植竹と同じグループで、やはりシュールで挑発的)、牛島憲之など充実している。
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