「芳幾・芳年」展
カミさんを大学時代から知る友人が、一緒に墓参りに行こう、と言ってくれた。友達はありがたい。二人で静岡県三島へ行き早めに都心に戻ったので、用事のある彼と別れ三菱一号館美術館の「芳幾・芳年」展(~4月9日)へ。
見たかったのは芳年。芳幾ははじめて見る。三十年以上前、週刊誌で「大江戸曼荼羅」というグラビア連載を企画したとき、原稿をお願いした橋本治さんが芳年を取り上げた。「無残絵」と呼ばれる、歌舞伎を題材にした残酷で血糊したたる浮世絵。それ以来、この絵師に興味がある。
二人とも幕末の浮世絵師・国芳の門下でライバル関係にあり、どちらも維新を経て明治に入ってからも同じようなジャンルの絵を描きつづけた。一身で二つ世を経験した人物。それぞれの「無残絵」、古今の武者を描いた「武者絵」、明治の新風俗を描いた「開化絵」、新聞にゴシップ噺を描いた「新聞錦絵」、肉筆画、国芳晩年の人物シリーズなどが展示されている。
芳幾は正統派というか、うまい。国芳は凄い。静と動、動きの極まった瞬間を凍結したような緊張。画面から滲むエロティシズム。魔的なものへの偏愛。期待した「無残絵」が少なかったのは残念だけど、たっぷり楽しみました(写真は国芳「藤原保昌月下弄笛図」明治16)。
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