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March 31, 2023

『ベネデッタ』

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『ベネデッタ』を見たいと思ったのは、ポール・ヴァーホーベン監督の前作『エル ELLE』が面白かったのと、シャーロット・ランプリングが出ているから。シャーロットは『愛の嵐』以来のごひいき女優だけど、彼女の出る映画にはずれはない。期待にそむかずというか、ジェンダー表現にうるさいこの時代に、よくもつくったなあ。

17世紀イタリア、同性愛で裁判にかけられた修道女の記録を基にしている。子どものころから幻視と憑依の能力をもつベネデッタ(ヴィルジニー・エフィラ)が修道院に入り、聖痕が生ずるという奇蹟を起こす。実は彼女の自作自演らしいのだが、教会は人気取りのためこれを認めベネデッタを修道院長にする。ベネデッタは院長室で世話係の修道女と同性愛の関係になる。シャーロット・ランプリングはそれまでの修道院長で、院長を降ろされても、ベネデッタの奇蹟が怪しいことや同性愛を察しても表情ひとつ変えないあたり、彼女の本領発揮。が、娘である修道女がベネデッタの嘘を訴え自殺に追い込まれると、フィレンツェの教皇大使の元へ訴え出る。

ペストで人がばたばた死んでいく時代を背景にしている。そんな世情をよそに、教皇大使は平然と愛人を傍にはべらせ美食にふける。ベネデッタの幻視のなかのキリストは、そのへんの兄ちゃんみたいで神々しさは皆無。同性愛の描写はいかにも『氷の微笑』の監督らしい。最後は教皇大使も元修道院長もペストで死んでゆくが、腐敗と混乱のなかで、ベネデッタが自分の能力と欲望に忠実にすっくと立っていることで、今どきの女性映画になった。


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March 29, 2023

別所沼へ

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20分ほど歩いて別所沼へ。毎年、公園の隅にあるこの古木の桜を見にくる。別の場所では何組もの家族連れやカップルが桜の下で飲んだり食べたりしているけれど、ここはいつもひっそり。散り始めているが、なんとか間に合った。4年前、抗がん剤治療中に来たときには、来年この桜を見られるだろうかと思ったが、今年も見ることができた。

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March 20, 2023

「芳幾・芳年」展

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カミさんを大学時代から知る友人が、一緒に墓参りに行こう、と言ってくれた。友達はありがたい。二人で静岡県三島へ行き早めに都心に戻ったので、用事のある彼と別れ三菱一号館美術館の「芳幾・芳年」展(~4月9日)へ。

見たかったのは芳年。芳幾ははじめて見る。三十年以上前、週刊誌で「大江戸曼荼羅」というグラビア連載を企画したとき、原稿をお願いした橋本治さんが芳年を取り上げた。「無残絵」と呼ばれる、歌舞伎を題材にした残酷で血糊したたる浮世絵。それ以来、この絵師に興味がある。

二人とも幕末の浮世絵師・国芳の門下でライバル関係にあり、どちらも維新を経て明治に入ってからも同じようなジャンルの絵を描きつづけた。一身で二つ世を経験した人物。それぞれの「無残絵」、古今の武者を描いた「武者絵」、明治の新風俗を描いた「開化絵」、新聞にゴシップ噺を描いた「新聞錦絵」、肉筆画、国芳晩年の人物シリーズなどが展示されている。

芳幾は正統派というか、うまい。国芳は凄い。静と動、動きの極まった瞬間を凍結したような緊張。画面から滲むエロティシズム。魔的なものへの偏愛。期待した「無残絵」が少なかったのは残念だけど、たっぷり楽しみました(写真は国芳「藤原保昌月下弄笛図」明治16)。

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March 16, 2023

里見龍樹『不穏な熱帯』を読む

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里見龍樹『不穏な熱帯』(河出書房新社)の感想をブック・ナビにアップしました。

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March 15, 2023

エゴン・シーレ展

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東京都美術館の「エゴン・シーレ展」(~4月9日)へ。


 


エゴン・シーレは、十数年前にニューヨークにいたときメトロポリタン美術館やノイエ・ギャラリーで見たことがある。特に現代ドイツ・オーストリア美術専門のノイエ・ギャラリーのクリムトやエゴン・シーレは充実していて、絵を見たあと、クリムトやシーレが生きた時代のウィーンを模したカフェでお茶を飲むのが楽しみだった。


 


今回の「エゴン・シーレ展」は、シーレの学生時代から28歳で亡くなるまでの作品が「アイデンティティー(自画像)」「女性像」「風景画」「裸体」などに分けて展示されている。だけでなく、クリムトらウィーンで「分離派」に集まった画家の作品も併せて展示され、当時のウィーンの空気がよくわかる。展示作品の大部分がウィーンのレオポルド美術館所蔵というのだから驚く。


 


アカデミーの古典的教育に飽き足らず、クリムトと出会って一気に自分のスタイルをつくりあげる過程が一目瞭然。才能というのはこういうのを言うんだろうな。たくさんある自画像はすごいけど、見る側の歳のせいか、自分を突き詰める鋭さに息苦しさを感じ、はじめて見た風景画に惹かれた。モルダウ河畔の小さな町、クルマウの街並みと川面(写真)がいい。若すぎる晩年の作品にも変化が見えて、成熟したらどんな絵を描いたんだろう。

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March 14, 2023

御嶽神社

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娘の家族と御岳山の御嶽神社へ出かけた。低山でケーブルカーもあるとはいえ、病気してはじめての山。両足が痺れているので、ケーブルカーの駅から参道、鳥居の先の330段の石段を休み休み小一時間かけて上った。ようやく山頂の本殿まで。江戸時代末期に建てられたという御嶽講の宿坊に一泊。

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