『ベネデッタ』
『ベネデッタ』を見たいと思ったのは、ポール・ヴァーホーベン監督の前作『エル ELLE』が面白かったのと、シャーロット・ランプリングが出ているから。シャーロットは『愛の嵐』以来のごひいき女優だけど、彼女の出る映画にはずれはない。期待にそむかずというか、ジェンダー表現にうるさいこの時代に、よくもつくったなあ。
17世紀イタリア、同性愛で裁判にかけられた修道女の記録を基にしている。子どものころから幻視と憑依の能力をもつベネデッタ(ヴィルジニー・エフィラ)が修道院に入り、聖痕が生ずるという奇蹟を起こす。実は彼女の自作自演らしいのだが、教会は人気取りのためこれを認めベネデッタを修道院長にする。ベネデッタは院長室で世話係の修道女と同性愛の関係になる。シャーロット・ランプリングはそれまでの修道院長で、院長を降ろされても、ベネデッタの奇蹟が怪しいことや同性愛を察しても表情ひとつ変えないあたり、彼女の本領発揮。が、娘である修道女がベネデッタの嘘を訴え自殺に追い込まれると、フィレンツェの教皇大使の元へ訴え出る。
ペストで人がばたばた死んでいく時代を背景にしている。そんな世情をよそに、教皇大使は平然と愛人を傍にはべらせ美食にふける。ベネデッタの幻視のなかのキリストは、そのへんの兄ちゃんみたいで神々しさは皆無。同性愛の描写はいかにも『氷の微笑』の監督らしい。最後は教皇大使も元修道院長もペストで死んでゆくが、腐敗と混乱のなかで、ベネデッタが自分の能力と欲望に忠実にすっくと立っていることで、今どきの女性映画になった。
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