カーティス・フラーを悼む
ジャズ・トロンボーンのカーティス・フラーが亡くなった。御年88歳。
フラーをはじめて聴いたのは大学時代。ジャズ喫茶に何時間もいるとたいてい1回はかかる人気盤『ブルース・エット』だった。フラーはじめベニー・ゴルソン(ts)、トミー・フラナガン(p)、ジミー・ギャリソン(b)の豪華メンバーで、1曲目の「ファイブ・スポット・アフター・ダーク」はテレビCMにも使われ、たいていの人が、ああ、あの曲、と分かる名曲名演奏。フラーの柔らかなトロンボーンとゴルソンの暖かなテナーが重なるハーモニーは、ハードバップを象徴する音のひとつだった。
十数年前にニューヨークに住んでいたとき、フラーが75歳バースデイコンサートと銘打たれたライブに出ると知ってブロードウェイの店に出かけた。写真はそのときのもの(2008年1月19日。イリディウム)。御大はすこし腰が曲がり、歩く姿も弱々しかった。出す音も、かつての艶と張りが薄れ、ややもっこり。もうバリバリの現役ではなかったんだろう。それでもエディ・ヘンダーソン(tp)らのサポートでかつての人気曲を次々に演奏してくれた。それだけで満足した記憶がある。もうフラーを聴く機会はないだろうなと、そのとき思った。そのとおりになってしまったが、今も『ブルース・エット』をかければフラーの音が蘇る。
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