モニカからの年賀
モニカから新年のグリーティング・カードが届いた。モニカは南米コロンビアからニューヨークへやってきた美術アーティスト。14年前にアメリカで一年間暮らしたとき、マンハッタンの語学学校で知り合った。当時20代半ばだったろう。英語を勉強しながら美術活動をしていて、一度彼女のスクラップブックを見せてもらったら、1ドルショップで売っているような日用品や新聞の切れ端に加工して日々の記録ふうな作品になっていた。
モニカと話すようになったきっかけは授業中の小さな出来事。そのとき彼女はアナイス・ニンの小説を持っていて、そのエロチックな表紙を見た若いクラスメートが「モニカがポルノを読んでる」と言い出し、何人もが「見せて、見せて」と教室中がうるさくなった。教師が困惑顔をしていたので、僕が「アナイス・ニンはポルノじゃないよ。ちゃんとした小説だよ(実はかなりエロチックではあるのだが)」と言ってその場は収まった。授業が終わった後、帰りがけにモニカとしゃべったら、シャーデーの曲とかポランスキーの映画とか好みが共通していて、それから時々話すようになった。日本へ帰ってきてからも、ニューヨークの彼女とフェースブックでつながっていたから折々にメッセージを交換していた。
去年、病気治療をしているあいだに自費で1冊の本をつくり、それをモニカに贈呈した。むろん彼女に日本語は読めないけれど、フランス装で装幀した本の手づくりな触感を気に入ってくれて、自分の作品を飾った部屋の机にディスプレイしたと、その写真をグリーティング・カードとともに送ってくれた。手紙にはもうひとつ、漁網をピンクに染めた「Cherry Blessings」というモニカの作品のポストカードが入っていたので、フレームに入れて本棚に飾った。その写真を彼女にメールで送ったら、さっそく「とても嬉しい」と返事が来て、そんなわけで今日は気分のいい日なのです。
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