『蝉、生まれいずるころ。』 沖縄戦の記憶
沖縄在住の写真家、勇崎哲史さんが写真帖『蝉、生まれいずるころ。』を出版した。
チビチリガマなど沖縄戦の戦争遺跡16カ所で、夜、蝉が羽化する風景を撮影したもの。亜熱帯の深い緑の片隅で、闇のなかたくさんの蝉が薄緑のやわらかな羽を震わせて羽化する。75年前の羽化の季節、これらの場所では多くの兵士、住民が命を落とした。ストロボで照らし出された夜の森やガマの風景に、その記憶が重なる。
1990年代に小生が北海道東川町の写真甲子園に4年ほど参加したとき、勇崎さんには写真フェスティバルのオルガナイザーとして大変にお世話になった。その後、勇崎さんは若いころ放浪した沖縄に移住して、撮影のかたわら写真学校を主宰している。
蝉の羽化は2年前から撮影していたものだが、今年の春、勇崎さんは写真展を企画しているさなか病気で入院された。無事に退院されたが、一時は遺作展になるかもと考えていたという。ところが9月、今度は写真展の開催を目前に会場が火災になり、作品が焼失するという事故が起きた。そんなわけで、いま見ることができるのは図録としてつくられたこの写真帖のみ。いずれ写真展も開催されることを期待したい。問い合わせは光画文化研究所。
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