『ジ・エディ』 ヨーロッパ風味のジャズ
ネットフリックスのドラマ『ジ・エディ(原題:The Eddy)』でヨーロッパ風味のジャズをたっぶり楽しんだ。全8話のうち2話を『セッション』『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼルが監督している。
パリでジャズクラブ「ジ・エディ」を経営するエリオット(アンドレ・ホランド)は、かつてアメリカで嘱望されたアフリカ系のピアニストだったが今は演奏をやめ、ハウスバンドを売り出そうとしている。別れた白人の妻と暮らしていた娘のジュリー(アマンドラ・ステンバーグ)がニューヨークからやってくる。そんなとき、共同経営者でアラブ系のファリドが何者かに殺される。どうやらギャング組織とトラブルになっていたらしい……。
そんなストーリなのだが、毎回、ジャズの演奏をたっぷり聞かせてくれるのが嬉しい。エリオットが育てているハウスバンドがいろんな国からやってきた民族の混成グループで、アメリカのジャズとはテイストが異なる。よりワールド・ミュージックに近いというか。メンバー全員が役者でなくプロのミュージシャン。ピアノはアメリカのランディ・カーバー(彼は劇中の曲も提供している)。トランペットはアフリカ系フランス人。サックスはハイチ出身、ベースはキューバ出身、ドラムスの女性はクロアチア出身。そしてエリオットの恋人でヴォーカルのマヤを演ずるヨアンナ・クーリクはポーランドの女優・歌手。一昨年公開された『COLD WAR あの歌、2つの心』でもジャズを歌っていて、僕はその歌と、レア・セドゥに似た風貌にしびれてしまった。ちょっと挑戦的な目つきをすることがあって、それがたまらない。
毎回、主な出演者の誰かに焦点を当てる構成。パリ市内だけでなく、移民が多く住む郊外の団地が舞台になるのもリアリティがある。もっとも、ドラマとしては質の高い作品が多いネットフリックスのなかでは、いまひとつ。でもジャズ好きなら間違いなく楽しめます。僕はヨアンナ・クーリクの歌を聞いているだけで満足でした。
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