September 19, 2020
September 18, 2020
『ジ・エディ』 ヨーロッパ風味のジャズ
ネットフリックスのドラマ『ジ・エディ(原題:The Eddy)』でヨーロッパ風味のジャズをたっぶり楽しんだ。全8話のうち2話を『セッション』『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼルが監督している。
パリでジャズクラブ「ジ・エディ」を経営するエリオット(アンドレ・ホランド)は、かつてアメリカで嘱望されたアフリカ系のピアニストだったが今は演奏をやめ、ハウスバンドを売り出そうとしている。別れた白人の妻と暮らしていた娘のジュリー(アマンドラ・ステンバーグ)がニューヨークからやってくる。そんなとき、共同経営者でアラブ系のファリドが何者かに殺される。どうやらギャング組織とトラブルになっていたらしい……。
そんなストーリなのだが、毎回、ジャズの演奏をたっぷり聞かせてくれるのが嬉しい。エリオットが育てているハウスバンドがいろんな国からやってきた民族の混成グループで、アメリカのジャズとはテイストが異なる。よりワールド・ミュージックに近いというか。メンバー全員が役者でなくプロのミュージシャン。ピアノはアメリカのランディ・カーバー(彼は劇中の曲も提供している)。トランペットはアフリカ系フランス人。サックスはハイチ出身、ベースはキューバ出身、ドラムスの女性はクロアチア出身。そしてエリオットの恋人でヴォーカルのマヤを演ずるヨアンナ・クーリクはポーランドの女優・歌手。一昨年公開された『COLD WAR あの歌、2つの心』でもジャズを歌っていて、僕はその歌と、レア・セドゥに似た風貌にしびれてしまった。ちょっと挑戦的な目つきをすることがあって、それがたまらない。
毎回、主な出演者の誰かに焦点を当てる構成。パリ市内だけでなく、移民が多く住む郊外の団地が舞台になるのもリアリティがある。もっとも、ドラマとしては質の高い作品が多いネットフリックスのなかでは、いまひとつ。でもジャズ好きなら間違いなく楽しめます。僕はヨアンナ・クーリクの歌を聞いているだけで満足でした。
September 17, 2020
『蝉、生まれいずるころ。』 沖縄戦の記憶
沖縄在住の写真家、勇崎哲史さんが写真帖『蝉、生まれいずるころ。』を出版した。
チビチリガマなど沖縄戦の戦争遺跡16カ所で、夜、蝉が羽化する風景を撮影したもの。亜熱帯の深い緑の片隅で、闇のなかたくさんの蝉が薄緑のやわらかな羽を震わせて羽化する。75年前の羽化の季節、これらの場所では多くの兵士、住民が命を落とした。ストロボで照らし出された夜の森やガマの風景に、その記憶が重なる。
1990年代に小生が北海道東川町の写真甲子園に4年ほど参加したとき、勇崎さんには写真フェスティバルのオルガナイザーとして大変にお世話になった。その後、勇崎さんは若いころ放浪した沖縄に移住して、撮影のかたわら写真学校を主宰している。
蝉の羽化は2年前から撮影していたものだが、今年の春、勇崎さんは写真展を企画しているさなか病気で入院された。無事に退院されたが、一時は遺作展になるかもと考えていたという。ところが9月、今度は写真展の開催を目前に会場が火災になり、作品が焼失するという事故が起きた。そんなわけで、いま見ることができるのは図録としてつくられたこの写真帖のみ。いずれ写真展も開催されることを期待したい。問い合わせは光画文化研究所。
https://peraichi.com/landing_pages/view/copi
September 10, 2020
東京都写真美術館へ
病院帰りに東京都写真美術館へ回る。ここへ行くのは実に2年ぶりくらい。一昨年暮れに体調が悪くなり入院治療の結果、去年秋に寛解との診断をもらったが、訪れる機会のないままコロナ禍になってしまった。高齢・病歴ありの高リスク組としてまだ映画館に行く勇気はないけど、混雑しない展覧会ならいいだろう、と。見たのは森山大道「ongoing」と「日本の新進作家vol.17 あしたのひかり」。このところ写真を見るのは印刷物かウェブばかりだったので、オリジナルプリントを見るとその質感、ぞろっとした手触りに久しぶりに興奮する。しかもどちらの展示も見せる工夫が凝らされているので楽しめるし。このままコロナが沈静化すれば、少しずつ行動半径を広げていこうか、と思う。
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