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December 26, 2019

『冬時間のパリ』 印象派のような

Doubles-vies

 

今年最後に映画館へ行くので、何を見ようかと考えた。先週はリアリズムの社会派『家族を想うとき』を見たので、違う肌合いのものにしたい。で、選んだのが『冬時間のパリ(原題:Doubles Vies──二重生活)』。全編おしゃべりと大人の恋愛模様の、いかにもフランス映画でしたね。

二組の夫婦の話。一組は、パリで成功している出版社の編集者アラン(ギョーム・カネ)と、妻で女優のセレナ(ジュリエット・ビノシュ)。もう一組は作家のレオナール(ヴァンサン・マケーニュ)と、政治家の秘書をしている妻ヴァレリー(ノラ・ハムザウィ)。四人のうち三人が「二重生活」、つまり不倫している。

編集者のアランは、社内でデジタル化担当の若い女性ロールと関係してる。出版デジタル化のシンポジウムに一緒に出張して同じホテルに泊まって、なんてのはどこの国も同じ。一方、アランの妻セレナは、夫が担当する作家であるレオナールと関係している。レオナールは自分の体験を書く私小説作家で、セレナとは別のタレントとのつきあいを小説にして物議を醸している。レオナールの妻のヴァレリーは政治家秘書としての仕事が忙しく、こちらは政治家の買春スキャンダルの尻拭いに追われている。

友だちづきあいしている二組の夫婦を中心に、まあよくしゃべること、しゃべること。話題は出版のデジタル化。セレナが出演している警察ものテレビ・シリーズの話。政治の話、などなど。そんなおしゃべりのなかで、日々の小さな出来事が起こってゆく。編集者のアランはレオナールの新作の出版を断るが、原稿を読んだ妻のセレナは面白いといい、結局は出版することに。出版社のオーナーは、会社をイタリア資本に売ることを考えている。女優のセレナはレオナールと別れることを決め、自分のことは絶対に書かないでねと迫る。レオナールは承諾するが、さっそく彼女とのことを小説にする構想を練っているらしい。大きなドラマはなく、いってみれば普通の日常生活を、ある時間切り取ってみせた映画。それでいて楽しいというか、愉しい。

監督のオリヴィエ・アサイヤスは、かつて「絵画における印象派のような映画への道、方法を探していた」と語っている。この言葉は『冬時間のパリ』にも当てはまりそうだ。たとえばモネ「草上の昼食」の登場人物が現代に蘇って動き出し、おしゃべりをはじめたら、こんな映画になるんじゃないかな。どちらの夫婦も収まるところに収まって、最後にレオナールとヴァレリーが海を望む林で寝そべっているショットなんか、光あふれる印象派そのもの。

アサイヤス監督の映画は、日本ではこんな軽い恋愛模様を描いたものを中心に公開されてきたけど、10年前にニューヨークで『ボーディング・ゲート』という全くテイストの異なる映画を見たことがある。あえてB級アクションふうな女殺し屋の物語。後半、いきなり舞台が香港へ飛び、香港ノワールになって面白かった。監督はもともと『カイエ・デュ・シネマ』の批評家出身で、マギー・チャン主演の映画をつくり、おまけに結婚していたこともあると知れば、それも納得。一筋縄ではいかない監督のようだ。

 

 

 

 

 

 

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