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December 30, 2019

2019年 10本の映画

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毎年、暮れになるとお遊びでその年の映画ベスト10を考えるのを楽しみにしています。ところが今年は半年以上の入院と通院であまり映画を見られませんでした。新作は20本も見ていないので、ベスト10などおこがましくてつくれません。それでも印象に残る映画が多かったので、順不同で10本を挙げてみました。これをやっておくと、備忘録として役に立ちますので。今年はブログもあまり更新できませんでしたが、おつきあいくださった皆さん、ありがとうございました。良い年をお迎えください。

・象は静かに眠っている
29歳で自死したフー・ボー監督の処女作にして遺作。中国の田舎町に住む青年や老人の、どこにも行き場のない閉塞感。極端に被写界深度の浅いカメラで登場人物に密着する挑戦的なスタイル。切実な主題と文体の冒険が融合して、この一作で映画史に名を刻んだ。

・ROMA
メキシコ出身でハリウッドで活躍するアルフォンソ・キュアロン監督の自伝的映画。都市に住む中産階級の少年の目から見た先住民召使いとの甘美な記憶。点描される革命と反革命の歴史。美しいモノクロームで描かれるネットフリックス・オリジナル。

・Cold War あの歌、二つの心
戦後冷戦で東西に別れた男と女の運命的な愛。背後には常にポーランドの民族音楽とジャズが流れている。モノクロ・スタンダード画面は1950~60年代、黄金期のポーランド映画を思い起こさせた。レア・セドゥに似た主演ヨアンナ・クーリクに見惚れる。

・アイリッシュマン
マフィアの殺し屋として生きた男の一代記。10代からの知り合いというロバート・デ・ニーロとマーティン・スコセッシが、お互いこんな時代を生きてきたんだよなと確認しあっているように感じられた。ネットフリックス・オリジナル。

・運び屋
90歳でメキシコ・マフィアが手がけるドラッグの運び屋になった男。役と同じ90歳に手が届こうとするクリント・イーストウッドが監督兼主演、しかもこれだけ面白い映画をつくってしまうとは化け物と呼ぶしかない。次も期待してしまう。

・帰れない二人
中国の炭鉱町で雀荘を経営する女と恋人のヤクザ者が流浪する。ジャ・ジャンクー監督と彼の映画のミューズ、チャオ・タオが出演した『青い稲妻』『長江哀歌』の地が再び舞台になって、改革開放の中国現代史を綴ってきた二人の集大成的な作品。

・迫り来る嵐
ノワールというジャンルは犯罪を通して、その時代の精神風景を描く。中国国営製鋼所の町を舞台にした連続殺人事件。閉鎖されようとする製鋼所の警備員を探偵役に、灰色の空と激しい雨のなかで時代から取り残された人々の姿が浮かび上がる。

・ジョーカー
貧しいピエロとしてつましく生きる男が、いかにして世間を騒がすジョーカーになったか。その不穏で、見る者をアジテートする画面は、貧富の格差が拡大した社会を背景に『戦艦ポチョムキン』のようなプロパガンダ映画の匂いを漂わせる。

・冬時間のパリ
印象派の絵画を映画にしたらこんな感じかな、というフランス映画。パリに生きる女優や作家や編集者が、おしゃべりと大人の恋愛に明け暮れる。日々の小さな出来事を切り取って、映画的愉しさに満ちている。

・ゴッズ・オウン・カントリー
ヨークシャーの牧場で老いた祖母や父と暮らす孤独な男と、東欧からやってきた季節労働者の男が次第に惹かれあってゆく。寒々とした風景のなかで展開する、ひりひりするような愛。地に足のついたリアリズムはイギリス映画の伝統だろうか。

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Comments

明けましておめでとうございます。
少ない本数と書かれていらっしゃいますが、その中でピックアップされた作品に「アイリッシュマン」や「迫り来る嵐」など、私もとても好きな作品が入っているのが嬉しかったです。
「ROMA」は見逃してしまったので、後悔しきりですが…。やはり、ネット配信作品は、ロードショー公開してくれても短期間だったりするで、ちょっとハードルが高いんですよね…。
また今年ご覧になった作品のご感想をぼちぼちと教えていただけたら嬉しいです。今年もよろしくお願いします。

Posted by: ここなつ | January 04, 2020 08:42 PM

明けましておめでとうございます。
去年は、10歳前後で映画好きになってから、見た本数がいちばん少ない年でした。しかも劇場でなくネットフリックスで見たものも多く。ネットフリックスは「マリッジ・ストーリー」も評判が高く、無視できない存在になりましたね。
「迫り来る嵐」、こういう映画が好きです。
今年もよろしくお願いします。

Posted by: | January 05, 2020 02:49 PM

雄さん、あけましておめでとうございます。
昨年は大変な一年でしたね。それでもこうして映画ベストをアップして下さり感謝です。
『ゴッズ・オウン・カントリー』ご覧になったのですね!ありがとうございます(笑)。
今年も様々な作品との出逢いが多く持てますように。
どうぞよろしくお願いいたします!

Posted by: 真紅 | January 05, 2020 03:05 PM

真紅さん、明けましておめでとうございます。
『ゴッズ・オウン・カントリー』は真紅さんのブログを拝見してDVDを借りました。いかにも真紅さん好みの映画ですね。私も若い頃、『長距離ランナーの孤独』や『孤独の報酬』など「アングリー・ヤングメン」と呼ばれたイギリス映画を見て以来、こういう感じの映画が好きになりました。
今年もよろしくお願いします。

Posted by: | January 05, 2020 07:33 PM

あけましておめでとうございます。
渋いラインナップですね。
「象は静かに眠っている」は観たかった。
最近諸事情で、時間が思うように作れないので、あんまり長いのは行きにくくなってしまいました。
今年はもうちょっと自由になればいいのですけど。
本年もよろしくお願いします。

Posted by: ノラネコ | January 05, 2020 10:15 PM

ノラネコさま、明けましておめでとうございます。
昨年は観賞した本数が極端に少なかったので、今年はできるだけ見たいと思います。
手始めは「ラストムービー」とネトフリの「マリッジ・ストーリー」あたり。週末には「パラサイト」が始まりますね。
今年もよろしくお願いします。

Posted by: | January 06, 2020 11:56 AM

いつもベスト10でお世話になっております。2019年のブロガーが選んだベスト10が完成しました。ぜひご覧くださいませ~。では、今年もよろしくお願いします。

Posted by: aq99 | January 20, 2020 08:08 PM

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