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ブルースの語りと歌に酔う
ネットフリックスのオリジナル作品『スプリングスティーン・オン・ブロードウェイ(原題:Springsteen on Broadway)』は、ブルース・スプリングスティーンが2018年にブロードウェイの劇場で開いたライブのドキュメント。これが素晴らしい。
シンプルな舞台にグランドピアノが1台。ブルースが登場し、アコースティック・ギターとハーモニカ、時にピアノを弾きながら歌と語りで自分の音楽人生を回顧する(1曲だけ、妻のパティがギターと歌で共演)。
ブルースはニュージャージー州の小さな町で工場労働者の息子として生まれた。7歳で初めてギターを手にしたときのこと。地元のヒーローだったロックンロール・バンドへの憧れ。寡黙な労働者である父への尊敬と反発。父親が通うバーへ初めて足を踏み入れたときのこと。地元の仲間と組んだバンド。やがて詞を書き、曲をつくるようになる。題材は身近な家族、仲間、ストリート、工場、小さな町の風景。
それにしてもブルースの語りの見事さに驚く。周到に準備されたものと思うけど(エンドロールにwritten by Springsteenとあった)、それを感じさせない自然な語り口とユーモア。なにより彼が選ぶ言葉のセンスが見事だ。その間に挟まれる名曲の数々。ベトナム帰還兵に話を聞いてつくった「ボーン・イン・ザ・USA」は、聞きなれたEストリート・バンドのロックンロール・バージョンでなく、ブルースのシンプルなギターで聞くと、こんな悲しい曲だったのかと改めて気づく。
アメリカの健全な魂と民主主義への信頼。最後はやはりニュージャージーの思い出、故郷の伐採されてしまった大木の記憶と家族への思いで終わる。こういう歌い手を持っているアメリカという国は、やはり捨てたもんじゃない。
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