和菓子店の廃業
小熊英二『日本社会のしくみ』を読んでいたら、1980年代以降、非正規雇用者は一貫して増えているが、よく言われるようにその原因として正規雇用者が減ったわけではなく、その数はあまり変わっていないという記述があった。それでは非正規雇用者の増加はどこからきたのかといえば、そのぶん自営業主と家族従業者が減っているという。
その現象は大都市圏よりも地方都市で目立つけれど、ここ首都圏の浦和でも自営業の廃業が相次いでいる。先日は、自宅まで集荷配送してくれるクリーニング店に店を閉めると言われ、さてどうしたものかと思案している。経営者は僕より少し若く、趣味はバンド。うちへ来るといつも音楽の話で盛り上がるが、奥さんが仕事に疲れ、本人も車を運転していて何度か危ないことがあったという。跡継ぎはいない。
今日は駅前商店街を歩いていたら、和菓子店に廃業の貼り紙があった。線路の反対側なので買うことはあまりなかったが、ガラス戸を開けると店内は暗く、声をかけるといつもおばあさんが出てきた。
わが家がよくいく近所の和菓子店は健在だけど、ここも子供は別の職業に就いている。経営者夫婦は僕と同世代で、子供はうちの娘と小学校で同級生だった。製造販売している和菓子店の朝は早く、開店時間に品物を並べるには毎日午前3時半に起きるという。「いつまで続きますかね」と、このごろはやつれの目立つおかみさん。毎日売り切りの商売だから、もちろん防腐剤なんか入っていないし、午後も少し遅くなると桜餅とか葛梅とか季節の和菓子は売り切れてしまう。いつまでも続けてほしいけれど、歳のことを考えると無理は言えない。
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