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June 17, 2019

『デザインのひきだし』活版・凸版特集

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『デザインのひきだし 37』の特集「活版・凸版印刷でモノ感あふれる紙ものづくり」が面白い。ここでいう活版とは鉛活字を組んで刷った印刷のことで、凸版とは活版の書体をもとに1ページ分をひとつの凸版樹脂版や金属版にして刷った印刷のことを指している。

いったんは産業として絶滅したかに見えた活版印刷が、このところ見直されている。そこにはデザイン的な側面と、手工業ともいえる「ものづくり」の側面がありそうだ。見直されている理由はふたつあるように思う。

ひとつは、活版の書体の多様さ。展覧会のポスターを見ていて、あ、これは活版の書体を使ってるな、と感ずることがある。明治以後、日本の活版印刷はさまざまな書体の活字を開発してきた。楷書体、宋朝体、ゴチック体、教科書体などで、特に明朝体は書籍や新聞雑誌に採用されたことで、いくつもの会社が手がけた。例えば現在の大日本印刷は、秀英明朝と呼ばれる端正で美しい明朝を開発した秀英舎が発展したものだ。ひとつの書体の活字を開発するには数万字の字母を(かつては手書きで)描かなければならないから、大変な手間と時間がかかる。戦後、写植やDTPの時代になって、新しい写植用書体やデジタル用書体が開発されたが、活版印刷用書体の多様さにはかなわない。

いまひとつは、活版(凸版)印刷は活字にインクを塗り印圧をかけて紙に印刷するため、うんと印圧をかけ厚手の紙を使って刷ると、印刷された字に沿って凹面が生まれる(逆に糊を入れたインクを使って凸面をつくることもできる)。その凹凸が面白い効果を生んで、紙を使ったいろんな手工芸品や便箋・名刺なんかに利用される。

この特集は、活版印刷や凸版印刷の基礎知識やドイツにある活字鋳造所のルポなど記事も充実している。でも、いちばん面白いのはいろんな活版・凸版印刷をやっている会社を紹介しながら、その実物10点ほどを付録としてつけているところだ(初版限定)。例えば、うんと圧をかけて凹面を指先で確認できるコースターや、イラスト。周囲に花形活字をあしらった領収書。3色刷りした細密イラスト。インクを盛り上げて凸面をつくるバーコ印刷の見本。和紙への印刷。和菓子の掛け紙などに使われるグラデーション印刷。「プレスを効かせた凸版印刷にオススメ 紙見本帳」までついている。

なんだか、子供のころ『少年』や『少年画報』の10大付録に胸をときめかせた記憶が蘇ってきて楽しい。

 

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