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June 22, 2019

ノウゼンカズラ咲く

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庭のノウゼンカズラが咲いた。梅雨の季節、大ぶりな朱色の花が、どこか艶めかしい。手の届かないところに咲いているので、落ちてきた花をひろい、白のムクゲとともに水を張った皿に浮かべて楽しむ。

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June 17, 2019

『デザインのひきだし』活版・凸版特集

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『デザインのひきだし 37』の特集「活版・凸版印刷でモノ感あふれる紙ものづくり」が面白い。ここでいう活版とは鉛活字を組んで刷った印刷のことで、凸版とは活版の書体をもとに1ページ分をひとつの凸版樹脂版や金属版にして刷った印刷のことを指している。

いったんは産業として絶滅したかに見えた活版印刷が、このところ見直されている。そこにはデザイン的な側面と、手工業ともいえる「ものづくり」の側面がありそうだ。見直されている理由はふたつあるように思う。

ひとつは、活版の書体の多様さ。展覧会のポスターを見ていて、あ、これは活版の書体を使ってるな、と感ずることがある。明治以後、日本の活版印刷はさまざまな書体の活字を開発してきた。楷書体、宋朝体、ゴチック体、教科書体などで、特に明朝体は書籍や新聞雑誌に採用されたことで、いくつもの会社が手がけた。例えば現在の大日本印刷は、秀英明朝と呼ばれる端正で美しい明朝を開発した秀英舎が発展したものだ。ひとつの書体の活字を開発するには数万字の字母を(かつては手書きで)描かなければならないから、大変な手間と時間がかかる。戦後、写植やDTPの時代になって、新しい写植用書体やデジタル用書体が開発されたが、活版印刷用書体の多様さにはかなわない。

いまひとつは、活版(凸版)印刷は活字にインクを塗り印圧をかけて紙に印刷するため、うんと印圧をかけ厚手の紙を使って刷ると、印刷された字に沿って凹面が生まれる(逆に糊を入れたインクを使って凸面をつくることもできる)。その凹凸が面白い効果を生んで、紙を使ったいろんな手工芸品や便箋・名刺なんかに利用される。

この特集は、活版印刷や凸版印刷の基礎知識やドイツにある活字鋳造所のルポなど記事も充実している。でも、いちばん面白いのはいろんな活版・凸版印刷をやっている会社を紹介しながら、その実物10点ほどを付録としてつけているところだ(初版限定)。例えば、うんと圧をかけて凹面を指先で確認できるコースターや、イラスト。周囲に花形活字をあしらった領収書。3色刷りした細密イラスト。インクを盛り上げて凸面をつくるバーコ印刷の見本。和紙への印刷。和菓子の掛け紙などに使われるグラデーション印刷。「プレスを効かせた凸版印刷にオススメ 紙見本帳」までついている。

なんだか、子供のころ『少年』や『少年画報』の10大付録に胸をときめかせた記憶が蘇ってきて楽しい。

 

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June 15, 2019

ぶどう棚

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今日は朝から一日雨の予報。午後には激しく降るらしい。縁側からぶどう棚を見ると、弦に雨露が光っている。種ありのデラウェア。40年前に植えたのが、いったん枯れて新しい芽が出て、まだ実がなる。市販のものにはかなわないが、十分に甘い。

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June 14, 2019

『ザ・テキサス・レンジャーズ』 ボニーとクライドを殺した男

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ネットフリックス・オリジナル映画『ザ・テキサス・レンジャーズ(原題:The Highwaymen)』は、1930年代のアメリカで銀行強盗を繰り返し「義賊」めいた人気者になったボニーとクライドを、射殺したテキサス・レンジャーズの側から描いたもの。2人を主人公にした『俺たちに明日はない』は1970年代アメリカ・ニューシネマを代表する映画だったけど、『ザ・テキサス・レンジャーズ』は対照的に地道な作風で、2人を追うレンジャーズの追跡を事実に基づいて冷静に描いていく。原題のThe Highwaymen(man)は路上の追いはぎの意味で、車を駆ってテキサス各地に神出鬼没に出現したボニーとクライドをそう呼んだのだろう。

ついでに言えばテキサス・レンジャーズは1823年に設立されたテキサス州の警察・司法権を持った組織で、開拓時代からカウボーイのような格好で治安維持に当たっていた。が、20世紀に入って大恐慌時代に縮小され、女性州知事ミリアム・ファーガソンが1933年に廃止した。映画は、その数年後から始まる。

ボニーとクライドが銀行を荒らし回り、警官を殺し、彼らを追うハイウェイ・パトロールは翻弄されている。業を煮やした知事ファーガソン(キャシー・ベイツ)は解散したテキサス・レンジャーズの伝説的なレンジャー、フランク・ハマー(ケヴィン・コスナー)をいやいやながら呼び出して捜査に当たらせる。相棒は、かつてハマーの下で働いたアル中のゴールト(ウディ・ハレルソン)。

彼らは馬から車に乗りかえ、「鞍はこんな固くなかった。ケツが痛い」とぼやきながら車に寝泊まりしてボニーとクライドの足跡を追う。老いぼれ2人のやりとりは典型的なバディー・ムービーの設定とはいえ、にやりとさせる会話もなく、どこか悲しい。ハマーはかつて警告なしで数十人の違法労働者を殺した非情な捜査官だが、ゴールトはそんなハマーについていけない。そんなハマーの伝説を語るゴールトは、ハマーへの畏怖をもっているが、半面、自分の弱さを隠そうとしない。そんなゴールトの弱さを、ハマーは仕方のない相棒といった目で眺めている。

2人は地図を片手にボニーとクライドの故郷の町や州外の仲間の故郷を回り、彼らに遭遇しようとする。平坦なテキサスの田舎道が延々と映しだされる。2人の行く先々には、家を失って路上やキャンプで生活する大恐慌時代の人びとの姿がある。流行の30年代ファッションを身につけたボニーとクライドも、もとはといえば食えなくて盗みを働いたことから悪事に手をそめた。

この映画で、ボニーとクライドが出てくるシーンは背後から、あるいはフルショットで撮影されていて、殺されるラストシーン以外ほとんど顔がアップで映らない。ハマーとゴールトにとって彼らは「義賊」なんかでなく、ハマーが殺した違法労働者と同じ名無しにすぎない。ボニーとクライドの顔が映らないことは、そのことを象徴しているだろう。『俺たちに明日はない』はロードムービーの傑作と言われるけれど、そしてこの映画にもそこここに道は出てくるんだけど、この映画には無軌道な若者の人生とそこへの共感があるのでなく、淡々と義務を遂行した老いぼれ2人が走らせる車の砂ぼこりが舞っているだけだ。最後に2人が互いを信頼するショットがあって、やっと普通のバディ・ムービ―として終わる。

監督は『ルーキー』のジョン・リー・ハンコック。

 

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June 12, 2019

紫陽花に薄日

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雨が止み、庭の紫陽花に薄日が差してきた。わが家には3種類の紫陽花があり、これはいちばん儚げな薄紫の花弁。去年は枝を切りすぎてほとんど咲かなかったが、今年は満開だ。

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June 06, 2019

泰山木の花

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通っている病院の入口にある泰山木に巨大な花が咲いていた。直径20センチ以上ある。はじめて見た。モクレン科なので、白木蓮の花のおばけみたいなもの。病気を持っている身から見ると、ずうずうしいほどの生命力を感ずる。

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June 04, 2019

『ガン・シティ』 スペインの歴史ハードボイルド

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『ガン・シティ(原題:La Sombra de la Ley)』はスペインのネットフリックス・オリジナル作品。原題は「権力の闇」とでも訳すのだろうか。1921年のスペインを舞台にした政治ミステリー映画。

スペイン内戦が勃発する15年前に当たる。スペイン内戦はジョージ・オーウェルの『カタロニア賛歌』やヘミングウェイの『誰がために鐘は鳴る』で有名だけど、その15年前のスペインの政治情勢なんて外国人にはとんと分からない。しかも、やがて内戦につながる勢力が入り乱れて複雑怪奇。

バルセロナで軍の列車が何者かに襲われ、大量の銃が奪われる。バルセロナ警察のレディウ警部(ビセンテ・ロメロ)が捜査をはじめると、マドリード警察からウリアルテ(ルイス・トサル)が派遣されてきて、ともに捜査に当たることになる。工場ではアナーキストが主導するストライキが行われている。リーダーのサルバドールは穏健派だが、その娘のサラ(ミシェル・ジェネール)と恋人のレオンは暴力によって革命を起こそうとする過激派。街ではキャバレーを経営する男爵が工場主の資本家とつるみ、裏世界ともつながって怪しげな商売をしているらしい。

レディウ警部と部下は武器強奪はアナーキストの仕業と見、容疑者を拷問の末に殺害してしまう。一方、ウリアルテはアナーキスト・グループとも男爵とも情報交換して真相を探ろうとする。ストライキの工場労働者が警官と衝突したとき、ウリアルテはサラを助けてサラの信頼を得る。ウリアルテは、リーダーのサルバドールが男爵の手下に命を狙われた際もサルバドールを助ける。レディウ警部は、マドリッドから来たウリアルテの狙いが何なのか疑問を抱く。映画を見る者にもその正体はわからない。

アナーキストが力を持ち、騒然とした政治情勢。アナーキストと警察の対立をあおる勢力もある。キャバレーの頽廃的なショー。魅力的な歌姫ロラもいる。建築途上のサグラダ・ファミリアがちらりと映ったりする(もちろんVFX)。1920年代の風俗、服装や車がノスタルジック。武器強奪は誰の仕業なのか、ウリアルテの正体は何なのか。二つの謎が徐々に明らかになってゆく。

当時のスペインは軍がクーデタを起こし、軍による独裁政権の下で左右の対立が激化していた。植民地のスペイン領モロッコで反乱が起こって戦争状態がつづき、ウリアルテの背中にはそこで負った火傷の跡がある。心身の傷を負い一人で行動するウリアルテは、ダシール・ハメットやチャンドラーの小説のヒーローに近い。やがて内戦へと至るスペインの時代状況を背景にした異色のハードボイルドを楽しみました。監督はダニ・デ・ラ・トレ。

 

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