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May 23, 2019

『シャドー・オブ・ナイト』 インドネシアの格闘技映画

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ネットフリックスのオリジナル作品はアメリカ映画が圧倒的に多いけど、ネット配信に進出した国々でそれぞれにオリジナル映画をつくったり配給権を買ったりしている。だから、日本ではあまり見る機会のない国の映画(主にエンタテインメント系)を見ることもできる。『シャドー・オブ・ナイト(原題:The Night Comes For Us)』はインドネシアのアクション映画。

インドネシアやマレーシア、ベトナムには「シラット(プンチャック)」と呼ばれる伝統武術がある。素人の見た目では、ブルース・リーの中国拳法に関節技を加えたような実践的格闘技。実際に、軍隊や警察に取り入れられているらしい。この映画の主な役者は、シラットの男女の武術家たち。彼らが映画の冒頭から終わりまで入れ替わり立ち替わり死闘を繰り広げる。血糊の海、首や指がちぎれ内臓が飛び出し、そのすさまじさと残虐さは半端じゃない。かつての香港カンフー映画を、うんとどぎつくした感じ。

イトゥ(ジョー・タスリム)は、東南アジアに広がる麻薬組織トライアッドの殺人部隊の幹部。ある村で村人を虐殺したとき、レイナという少女を助けたことから、逆にトライアッドから命を狙われることになる。イトゥを殺すために、イトゥの昔の仲間で、やはりトライアッドの構成員としてマカオにいたアリアン(イコ・ウワイス)が呼び戻される。アリアンを筆頭に、腕に覚えのある何十人もの団員が次々にイトゥの命を狙う。イトゥはレイナを守りながら、3人の仲間とそれに立ち向かう……。

もともとシラットによる格闘を見せる映画だから、リアリズムじゃない。昭和の時代劇でヒーローが何十人もの敵をばったばったと斬って捨てたように、次々に襲いかかる相手を血みどろになりながらも叩き伏せる。そういう「お約束」の世界。インドネシアの観客はそれを楽しんでるんだろう。女対女の格闘を見せるために、レイナを守る仲間たちが危なくなると、どこからともなく黒づくめの謎の美女が現れてイトゥの仲間に加勢し、敵の女格闘家との戦いになる。謎の女の正体は、遂に明かされない。物語の整合性なんかどうでもよく、そんな説明をしている暇があればシラットの格闘を少しでも多く詰めこもうという姿勢が、いさぎよいといえばいさぎよい。

格闘の背後に写るのは、近代化しつつあるインドネシアの都市風景。高速道路や港や倉庫、イトゥが住む、ちょっと古びた感じのビルのアパート。そして海や自然風景。そういった点景が、いいアクセントになっている。

最後はお約束通り、かつての仲間であるイトゥとアリアンの対決になる。カッターの刃が口中から皮膚を破って外へ突き出たり、これまたすさまじい格闘になって、けりがついたと思ったら、さらにまた次がある。僕はカンフー(シラット)映画のファンではないし残虐趣味もないので、そのサービス精神に辟易しつつも、中国(香港)映画やハリウッドがワイア・アクションからVFXへの道をたどったのに、インドネシアのシラット映画が肉体と肉体のぶつかりあいにとことんこだわっているのに(経済的事情もあるだろうが)好感を抱いたりもした。

僕は見ていないけど、シラットをふんだんに盛り込んだアクション映画『ザ・レイド』(2011)が世界の映画祭で評判になった。ジョー・タスリムとイコ・ウワイスは、この映画でも主演を務めていたシラット格闘家。それ以来、シラット映画は盛り上がり、日本でも何本か公開されたようだ。

監督はティモ・ジャント。若い監督だけど、深みのある映像と切れのいい演出に才能を感ずる。

 

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May 13, 2019

『セレニティ 平穏の海』 青い海の非現実

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マシュー・マコノヒー、アン・ハサウェイ、ダイアン・レインと魅力的な役者がそろっているのに、『セレニティ 平穏の海(原題:Serenity)』はアメリカ国内では興行的にこけてしまったようだ。ネットフリックスが海外配信権を手に入れたのは、そのことと関係があるのかどうか。

こけた理由は映画を見ればすぐに分かる。ミステリーといっても、特に謎があるわけではない。クライマックスにいたるサスペンスも、普通のエンタメならじわりじわり盛り上げるところを、ほんの一瞬の描写であっけなく通りすぎてしまう。確かに、肩透かしをくらった感は否めない。でも、だからといってつまらない映画ではなかった。

映画全体が、これが現実なのか非現実なのか、よく分からないつくりになっている。怪しげな登場人物が、「これはゲームの一部なんだ」というセリフを繰り返す。その人物が、バグが生じたようにいきなり画面から消えてしまったりする。その奇妙なテイストが捨てがたい。

ディル(マシュー・マコノヒー)はフロリダ沖の島(架空)で釣船の船長として、何かから隠れるように暮らしている。彼は巨大マグロを何度か釣りかけたが失敗し、「ジャスティス(正義)」と名づけたそのマグロを釣ることに情熱を燃やしている。ある日、元妻のカレン(アン・ハサウェイ)がディルの前に現れる。元妻はディルとの間に生まれた子供を連れて裕福な男と再婚したが、夫の暴力に耐えられない、釣りが趣味の夫を釣船に乗せ、沖で事故に見せかけ殺してほしいとディルに頼みこむ。ディルは新しい父親に心を開かない息子のために、その依頼を承諾する。

一方でディルが巨大マグロを「ジャスティス」と名づけたり、釣船の名が「セレニティ(平穏)」だったりする非現実感に対して、バハマ諸島あたりをイメージしているのかアフリカ系住民が住む色彩豊かな港町のストリートのリアル感がとてもいい。港に一軒だけのバー兼レストランの、いかにもそれらしいオーナー。バーの定席にいつも座っているアフリカ系の老人。港が見える家に住む、ディルの愛人コンスタンス(ダイアン・レイン)との束の間の情事。コンテナを改装したような、ディルの殺風景な家。ひとりだけスーツにネクタイで、ディルにつきまとう釣具会社の謎めいたセールスマン。

元妻の夫を殺すことを心に決めたディルが、島の地図を取り出して広げる。島の周囲の海域にはバハマ諸島があるはずだが、地図にはただ海が広がっているだけ。ふっと入りこむ非現実。

監督のスティーブン・ナイトは脚本家として知られ、クローネンバーグの『イースタン・プロミセズ』も彼の手になる。そうと知って、このテイストも納得。現実と非現実のからくりは最後に明らかになるけれど、青い海と、脳内の妄想がうまく絡みあって、サスペンスとは別の味わいの映画でした。

マシュー・マコノヒーがいいな。

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May 08, 2019

5時間の点滴

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今日の治療は5時間の点滴。腕に針を刺された状態で昼食を食べ、本を読み、i-phoneで音楽を聞く。聞きながらうとうとするのに最適の音楽はダイアナ・クラールのどよんとしたヴォーカルか、延々と刻む同じリズムに乗せたシャーデーのセクシーな低音と判明。点滴の後は、もう一つの治療が待っている。待ち時間もあり、家を出たのが朝7時半、帰ってきたのは午後6時だった。明日も、多少時間は短いが同じ治療が待っている。

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May 06, 2019

ミニ畑で勝手に成長

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10日ほど体調が悪くほったらかしだった庭の畑で、野菜が勝手に成長していた。

小松菜とシュンギク。10日前はまだ小さかったのが、小松菜はそろそろ収穫できそうなほど。奥はハーブのバジルとレモングラス。

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トマトの芽も大きくなってきた。

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いつも連休明けに芽を出すゴーヤも。

 

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