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April 23, 2019

『鋼鉄の雨』 韓国の政治エンタテインメント

Steel-rain

Steel Rain(viewing film)

南北分断を逆手にとって政治・アクション・友情の物語をエンタテインメント映画に仕立てるのは、いまや韓国映画の得意技。ネットフリックス・オリジナル(韓国で公開された後、ネットフリックスがグローバル版権を獲得)『鋼鉄の雨(原題:강철비)』もそんな一本だった。数年前の北による核実験とミサイル発射、アメリカによる先制攻撃論、韓国の大統領選挙・政権交代といった政治情勢をうまく取り入れ劇画っぽく誇張しながら、男と男の友情物語になっているのが面白い。

主人公は北朝鮮偵察総局の工作員オム(チョン・ウソン)と韓国の大統領府外交安保首席クァク(クァク・ドウォン)。

オムは上司の偵察総局長から、軍にクーデターの計画があると知らされ首謀者を殺すよう命じられる。北の党委員長「一号」は核ミサイルを開発したがそれを使おうとせず、米国との交渉の道具にしていることに軍の強硬派が反発しているらしい。

「一号」が出席する開城工業団地の式典で、オムが軍幹部を暗殺しようとしていると何者かによるヘリ攻撃があり、「一号」は重傷を負う。オムは歓迎に動員された少女二人と「一号」を助け、混乱に乗じて韓国国境内に逃げ込む。オムは近くの町の産婦人科に押し入り、居合わせた女医に「一号」を治療するよう脅す。女医はクァクの元妻である医者の友人で、やがて元妻とクァクも産婦人科でオムと顔を合わせることになる。

やり手の工作員らしく切れのいい格闘アクションを見せるオムと、仕える大統領からいまひとつ信頼されず、小太りでつい愚痴が出るクァクと、「バディ・ムービー」の定番ともいえる対照的な二人のやりとりが分かってはいるけど楽しめる。クァクの娘も、北で密かに聞いているオムの娘もG-DRAGONの歌が好きで、車のなかに流れる音楽が対立し喧嘩していた二人の感情を和らげる役目を果たす。

任期末の韓国大統領は、この際、北をつぶしてしまおうという強硬派。新しく選ばれた大統領は南北融和派。現大統領は米国に攻撃を要請し、米国は核搭載機を発進させる。搭載機が北に達するまで猶予は十数時間。クァクは新大統領と協力しながら、「一号」を治療してオムとともに北に戻そうと試みる。北の軍強硬派の工作員が、「一号」を暗殺しようと攻撃してくる。オムの上司である偵察総局長が事態を収拾に地下トンネルで韓国にやってくるが、これが実は……と、どんでん返しもあり。

この映画は文在寅政権下の2017年に公開されているから、当然のことながら全体として南北融和という大筋のなかで物語が進行していく。でも部分的には、北の軍強硬派が核ミサイルをぶっ放し自衛隊のイージス艦が日本海上でこれを迎撃、核爆発が起こるとか 刺激的な描写もある。最後に「かくして韓国も核武装しましたとさ」という結末になるのは、(日本の一部にそういう勢力があるように)韓国の一部にもそうした願望があることの表れだろうか。監督はヤン・ウソク。

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