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April 30, 2019

平成最後の光

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午後6時32分。わが家の庭。

この1週間、微熱がつづき、免疫力が下がる時期であることもあって、まったく家の外に出られなかった。毎日見ていたのは縁側からの庭の新緑。微熱ある目で見る、ドウダンやつつじ、ヒバの新緑、カエデの赤紫の若葉が雨に濡れてひときわ美しく感じられた。

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April 23, 2019

『鋼鉄の雨』 韓国の政治エンタテインメント

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Steel Rain(viewing film)

南北分断を逆手にとって政治・アクション・友情の物語をエンタテインメント映画に仕立てるのは、いまや韓国映画の得意技。ネットフリックス・オリジナル(韓国で公開された後、ネットフリックスがグローバル版権を獲得)『鋼鉄の雨(原題:강철비)』もそんな一本だった。数年前の北による核実験とミサイル発射、アメリカによる先制攻撃論、韓国の大統領選挙・政権交代といった政治情勢をうまく取り入れ劇画っぽく誇張しながら、男と男の友情物語になっているのが面白い。

主人公は北朝鮮偵察総局の工作員オム(チョン・ウソン)と韓国の大統領府外交安保首席クァク(クァク・ドウォン)。

オムは上司の偵察総局長から、軍にクーデターの計画があると知らされ首謀者を殺すよう命じられる。北の党委員長「一号」は核ミサイルを開発したがそれを使おうとせず、米国との交渉の道具にしていることに軍の強硬派が反発しているらしい。

「一号」が出席する開城工業団地の式典で、オムが軍幹部を暗殺しようとしていると何者かによるヘリ攻撃があり、「一号」は重傷を負う。オムは歓迎に動員された少女二人と「一号」を助け、混乱に乗じて韓国国境内に逃げ込む。オムは近くの町の産婦人科に押し入り、居合わせた女医に「一号」を治療するよう脅す。女医はクァクの元妻である医者の友人で、やがて元妻とクァクも産婦人科でオムと顔を合わせることになる。

やり手の工作員らしく切れのいい格闘アクションを見せるオムと、仕える大統領からいまひとつ信頼されず、小太りでつい愚痴が出るクァクと、「バディ・ムービー」の定番ともいえる対照的な二人のやりとりが分かってはいるけど楽しめる。クァクの娘も、北で密かに聞いているオムの娘もG-DRAGONの歌が好きで、車のなかに流れる音楽が対立し喧嘩していた二人の感情を和らげる役目を果たす。

任期末の韓国大統領は、この際、北をつぶしてしまおうという強硬派。新しく選ばれた大統領は南北融和派。現大統領は米国に攻撃を要請し、米国は核搭載機を発進させる。搭載機が北に達するまで猶予は十数時間。クァクは新大統領と協力しながら、「一号」を治療してオムとともに北に戻そうと試みる。北の軍強硬派の工作員が、「一号」を暗殺しようと攻撃してくる。オムの上司である偵察総局長が事態を収拾に地下トンネルで韓国にやってくるが、これが実は……と、どんでん返しもあり。

この映画は文在寅政権下の2017年に公開されているから、当然のことながら全体として南北融和という大筋のなかで物語が進行していく。でも部分的には、北の軍強硬派が核ミサイルをぶっ放し自衛隊のイージス艦が日本海上でこれを迎撃、核爆発が起こるとか 刺激的な描写もある。最後に「かくして韓国も核武装しましたとさ」という結末になるのは、(日本の一部にそういう勢力があるように)韓国の一部にもそうした願望があることの表れだろうか。監督はヤン・ウソク。

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April 10, 2019

『アウトサイダー』 J・レトの花田秀次郎

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The Outsider(viewing film)

1950年代大阪を舞台にした米国製ヤクザ映画。主演は『ダラス・バイヤーズクラブ』でアカデミー助演男優賞を得たジャレッド・レト、監督は『ヒトラーの忘れもの』が話題になったデンマーク出身のマーチン・サントフリートとくれば、どんな映画か見たくなるってもの。ネットフリックスが『アウトサイダー(The Outsider)』の世界独占配給権を買ったのも、その異色の組み合わせにあったかもしれない。

見ていて、過去のいろんな映画の断片や記憶が呼び起こされた。『ブレードランナー』『ブラック・レイン』『仁義なき戦い』『キル・ビル』『アウトレイジ』、そして『昭和残侠伝』などなど。

『ブレードランナー』はリドリー・スコットらしい美学的なオリエント趣味の映画という意味で。『ブラック・レイン』を経由して、『アウトサイダー』もその延長上にある。『ブラック・レイン』とこの映画は大阪が舞台ということで共通しているが、映像的にも影響を受けているんじゃないかな。『ブラック・レイン』は冒頭、機上からながめる阪神工業地帯の工場群と煙突の煙が印象的だったけど、この映画でも似たショットが繰り返し出てくる。

元米兵で日本で犯罪を犯し服役中のニック(ジャレッド・レト)は、囚人仲間に殺されそうになった清(浅野忠信)を助けたことから、大阪のヤクザ白松組組員である清の引きで客分となる。白松組は年老いた親分(田中泯)をオロチ(椎名桔平)が補佐しているが、大阪に進出してきた神戸のヤクザに押され、小競り合いがつづいている。ニックは白松組の先兵となり、親分の信頼を得て杯をもらう。

対立するヤクザ組織の抗争という設定は、言うまでもなく『仁義なき戦い』や『アウトレイジ』を下敷きにしてる。椎名桔平など、『アウトレイジ』からそのままこの映画に移ってきたみたい。設定だけでなく、指を詰めるシーンも共通。『仁義』では指を詰めるシーンにはコミカルな味があったが、こちらはまるで羊羹でも切るようにスッと指を切り落とす。

ニックは清の妹(忽那汐里)と愛し合うようになるが、オロチも妹に執心している。オロチは白松組を見限り、神戸の組織と手を結ぶ。親分が命を狙われ、清も命を落とす。ニックは、妹を守るためにと清から手渡された日本刀を手に、、、。

『仁義』や『アウトレイジ』は熱気あふれる映画だったが、この映画は登場人物も声高に叫ばず、全体に静かな印象がある。それはニックが口数少なく、無表情でいることと関係しているだろう。この主人公の人物造形のモデルは、僕の見るところ『昭和残侠伝』の高倉健ではないか。ジャレッド・レトは役になりきることで有名な役者だけど、でも文化的な基盤を僕らと共有しているわけではない。高倉健の無口と無表情に、僕らは憤怒や悔恨といったいろんな感情が満ちあふれているのを理解するけど、ジャレッド・レトからは無口と無表情以上のものを感じられない。

だから作り手の思いとしては高倉健の花田秀次郎でも、ジャレッド・レトのニックの生きざまにすっと一本筋が通っているように見る者に受け取れない。最後の殴り込みも、花田秀次郎はがんじがらめの日本的しがらみをぶった切ることで見る者にカタルシスを与えたが、ニックのそれはオロチの裏切りによって清が死んだことへの個人的怨恨を晴らすためのように見えてしまう。ラストでニックが妹と抱き合うのも、その印象を強くする。カタルシスは来ない。

いまひとつ残念だったのは、そういうものから切れた『ブラック・レイン』から30年もたつのに、観光客レベルのオリエンタル趣味(大衆演劇ふうの心中劇や相撲、刺青、日本刀──これは『昭和残侠伝』というより『キル・ビル』)が出てくること。逆に驚いたのは、1954年の大阪という設定を不自然に感じさせないロケをしていること。実際に大阪で撮影したようだけど、路面電車の走る市街などはどこだろう。夜、山の麓の市街を電車が光をあふれさせて走る、神戸らしきショットも印象的だ。

あれこれ言ったけど、ともあれ楽しめる映画ではありました。

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April 05, 2019

妙行寺のモッコク

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30分歩いて妙行寺まで散歩。妙行寺には向かいの金毘羅堂に樹齢1100年の大カヤがあるが、境内にもう一本、樹齢600年のモッコクがある。太い幹は途中で枯れたらしく、現在は樹高7メートル。夏には黄白色の花が咲くそうだが、まだ見たことはない。妙行寺は鎌倉中期に建立された市内有数の古刹。モッコクは1407年にこの寺が臨済宗から日蓮宗に改宗されたとき植えられたとの伝説がある。

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「正元二年」(1260)の銘がある板石塔婆。

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寺の近くを流れる鴻沼水路の桜。風があり、桜吹雪が頬をなでる。

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April 04, 2019

『バスターのバラード』 コーエン流「西部開拓史」 

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The Ballad of Buster Scruggs(viewing film)

コーエン兄弟の『バスターのバラード(原題:The Ballad of Buster Scruggs)』は、もともと6本のテレビシリーズとして企画されたらしい。でもネットフリックスが配給権を買ったことで、6本をまとめて1本の映画にした。だから6本のテイストもスタイルもばらばらだけど、それが逆にオムニバス映画としての面白さになっている。コーエン兄弟のいろいろな面──陰鬱さやブラックユーモアや残酷さや、残酷を突き抜けたあっけらかん──を楽しめる。兄弟が脚本を書き、演出したコーエン流「西部開拓史」だ。

第1話はミュージカル仕立て。流れ者の凄腕ガンマンがウェスタンの名曲「クール・ウォーター」を口ずさみながら、酒場で次々に立ちはだかるカウボーイを殺してゆく。ところが、1対1の決闘であっけなく殺されてしまう。殺されたガンマンは背中に羽が生え、天使になって天に上ってゆく人を食ったラスト。

第2話は、荒野にポツンとある銀行でカウボーイ(ジェームズ・フランコ)が強盗に変身する。ところが銀行員がなぜか強く、カウボーイは捕まって絞首刑になりそうになる。やっと逃れたと思ったら、今度は牛泥棒に間違えられて絞首刑になるというオチ。

第3話は沈鬱だ。主人公は馬車を駆り町から町へ流れる旅一座の男(リーアム・ニーソン)。出し物は、男がロンドンで買った両手両足のない青年の一人芝居だ。青年はシェークスピアばりのセリフを語り、「人民の人民による人民のための政治を絶やしてはならない」とリンカーンの演説を繰り返す。だが客は少ない。窮した男は、足し算できる芸をもつ鶏を買うが、青年が足手まといになって、、、。

第4話は、それまでとはテイストが異なる。人跡未踏の谷(コーエン兄弟はじめてのデジタル撮影が見事)にやってきた金鉱掘りの老人(トム・ウェイツ)が金脈を掘りあてる。なるほど金脈はこんなふうに探していくのか。ところが老人は彼をつけてきた男に襲われる。老人は反撃。トム・ウェイツのキャラクターもあって、この挿話は美しい風景のなかで、ほのぼのした感じになっている。

第5話は、いちばんストーリー性が豊かで、いわゆる西部劇ふう。オレゴンを目指す幌馬車隊。旅の途中で兄が病死した娘は案内人の男を頼り、やがて結婚の約束をするまでに。ところが先住民の襲撃に遭い、殺されると早とちりした娘は自ら命を絶ってしまう。

第6話は、駅馬車のなかのセリフ劇。馬車の屋根に死体が載っているのがミソだ。この死体は、二人の賞金稼ぎが殺したお尋ね者。イギリス人とアイルランド人の賞金稼ぎらしからぬ身なりの二人が、ガチガチの老婦人と罪と潔白をめぐって議論し、老婦人は怒りで発作を起こしてしまう。山だしの漁師やフランス人の男がそれをなだめる。宿に着き、賞金稼ぎは死体を持って階段を上ってゆくが、果たしてあとの3人は? 

見終わって、死者累々という印象を持つ。実際、西部開拓史はそのように無数の死者の上に成り立っているのだろう。それを歴史や社会性といった側面でなく、死をめぐる残酷と皮肉のドラマに仕上げているのがコーエン流ということか。

 

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April 03, 2019

調公園で

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調宮に隣り合った調公園で。「一杯呑んだらいい気持ちになっちゃってね。いま、お隣の若い人といろいろ話してたところなんですよ」

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調宮の春祭

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30分歩いて調宮へ。境内へ入ると笛と太鼓の音が聞こえる。今日は五穀豊穣を願う春祭で、本殿で祈念の行事が行われたそうだ。

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April 02, 2019

桜散歩

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1週間の治療が終ったので、今日からは遠出の散歩に。寒の戻りで気温が下がり桜が散っていないので、毎年訪れる桜を見ながら別所沼まで。

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ご近所の庭にある桜。この向かいにカフェがあり、毎年お茶を飲みながら桜見物していたけれど、残念なことに去年閉店してしまった。コーヒー豆を焙煎して売っている店だったが、人通りが少ない道なので無理だったのか。

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10分ほど歩いたところの空地に見事な桜が7本ある。高層マンションが建てられるので伐られるかと心配したが、桜の一角は公園として残されたようだ。

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別所沼の桜。別所沼は桜の季節になると近隣の住民が花見に訪れる。今日も寒い曇り空だけど、家族づれが何組も。桜はそんなに年輪を重ねたものではないが、公園の片隅にひっそりと見事な桜が2本ある。毎年、これを見るのが楽しみ。

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一瞬だけ陽が射した。

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