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October 26, 2018

『僕の帰る場所』 二つの祖国

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Passage of Life(viewing film)

日本は移民を認めていないけれど、合法非合法の外国人労働者なしに国が回らなくなっていて、実質的には移民受け入れ国になりつつある。しかし建前の上では彼らは移民ではないので、その狭間でさまざまな問題が起こる。矛盾のしわ寄せは当然ながら法的に不安定な在日外国人にくる。また難民についても、例えば去年の難民申請者数は約2万人だが、難民として認められたのはわずかに20人、認定されなかったが在留を認められた者を含めても65人にすぎない。

日本=ミャンマー合作映画『僕の帰る場所(原題:Passage of Life)』に登場するのは在日ミャンマー人の家族。夫のアイセ(アイセ)は難民の認定を申請中で、審査の結果が出るまでは日本に滞在することができる。その間、本当は働いてはいけないらしいが、アイセはホテルのレストランで働いて拘束されたりもしている。妻のケイン(ケイン・ミャッ・トゥ)は不安定な暮らしに精神のバランスを崩し、国に帰りたいと訴える。夫婦には小学生のカウン(カウン・ミャッ・トゥ)と弟のテッ(テッ・ミャッ・トゥ)の子供がいる。二人は日本語しかしゃべれず、ケインにビルマ語を習っている。

一家の日々の生活がドキュメンタリーのようなタッチで描かれる。拘留が解かれ久しぶりに家へ帰ったアイセに子供たちが甘える。子供たちが寝た後、夫婦は深刻な表情で話し合う。会話シーンでは2台のキャメラで定番の切り返しショットなど使わず、手持ちのキャメラ1台でセリフごとに左右にキャメラが振られる。資金が乏しいせいもあるだろうけど、あえてこういうスタイルを取っているのかもしれない。

アイセが日本人支援者と入管に出かけるシーンもあるけれど、観客に難民申請についての細かな説明はせず、ともかく外国人に扉を閉ざしていること、職員がぶっきらぼうで不親切なことだけを伝える。アイセはそれに対して、辛抱強く穏やかに対応する。

映画はこのまま進むのかと思ったら、ケインが国に帰ることを決め子供たちとミャンマーに戻ったところから、がらりとタッチが変わる。このままいけばアイセの一家を通して在日ミャンマー人の生活と入管法・難民認定の壁といった社会問題を訴える映画になったろう。ところが、ミャンマーが舞台になる後半で、実はこの映画の主役はカウンとテッの兄弟、なかでも兄のカウンであることが分かってくる。

ヤンゴンの母の実家に着いたカウンは拗ねて、日本に帰りたいと繰り返す。日本の小学校でクラスメートと仲良く学校生活を送っていたのだ。ある晩、カウンはクラスメートからの餞別を持って、家を飛び出す。路上で拙いビルマ語で「空港はどっち?」と聞くと、路上の物売りからは「日本人かい?」とからかわれる。少年にとって見知らぬ街の夜のショットが素晴らしい。路上をさまよい歩く、不安と好奇心がないまぜになったカウンの表情も素晴らしい。昔、ヴェンダースのモノクロームの映画でこんな感情を掻きたてられたことがあったなと思い出す。カウンの少年らしい意思的な表情からは、『誰も知らない』の柳楽優弥を思い出す。

兄弟は母のケインに連れられ、農村にある父方のおばあちゃんの家を訪れ、温かく迎えられる。日本人学校にも行けることになる。最初、故国へ拒絶反応を起こしたカウンだが、少しずつミャンマーの生活になじんでくる。

映画は人間がきちんと描かれていなければつまらない。何かを訴えるにしても、その人間を通してでなければリアルなものにならない。この映画はカウンという少年を通して、移民の問題を考えさせられる。監督の藤元明緒はこれが長編デビュー作で、脚本も書いている。二つの祖国を背負って成長していくであろうカウンを、こんなふうに造形した力はすごい。


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