山下洋輔と森山威男
山下洋輔と森山威男。1960~70年代初頭に疾走した山下洋輔トリオの二人が一緒に演奏するのを聞くのは四十数年ぶり。「中央線文化としてのフリージャズ~僕らは1970年に何を考えていたのか」(9月9日、座・高円寺2)にブック・ナビの相棒〈正〉君と行ってきた。二人とも当時の山下トリオを聞いている。
これはただのコンサートでなく、社会経済学者・松原隆一郎のプロデュース・司会による映像とトークと演奏。まずは山下と森山が中央線沿線に住み、ジャズと出会ったことが映像で紹介される。トークで浮き彫りになる、現代音楽に影響されたりナベサダ仕込みのバークリー・メソッドで理論的にフリージャズに接近した山下と、クラシックやフォービートに飽き足らず直観的にパワー全開を求めてフリージャズに行きついた森山の対照的なアプローチが面白い。共通していたのは、スイングするフリージャズを目指したこと。
次いで二人がそれぞれの手の内を明かす。森山が童謡の「故郷」を口ずさみながら、どうドラムを叩くかを実演。右手と左手の拍子のズレによって、独特の持続感が生まれる。次いで山下が、手くせがどんなふうに自分のフレーズになっていくかを実演。そんなふうに「音楽の秘密」を言葉にした後で、山下作曲の「キアズマ」を二人で。演奏が始まれば一瞬にして50年前の二人に戻り、二人とも70代後半のはずなのにあの時代の激しさと熱気とパワーがそのまま再現されて客席は陶然。いや、興奮した夜でした。
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