柳澤寿男監督特集へ
柳澤寿男監督がつくった記録映画を回顧上映する特集が開かれている(~2月16日、渋谷・シネマヴェーラ)。この日の上映は『風とゆききし』(1989)と短篇集、上映後のトークは映画評論家・山根貞男(右)と記録映画監督の小林茂。
柳澤は戦前、松竹京都撮影所に入所、映画監督としてデビューしたが、戦後、記録映画に転向した。岩波映画などで多くの記録映画、PR映画をつくった。後にフリーとなり、1960年代から障害者にカメラを向け「福祉映画5部作」を自主製作。『風とゆききし』はその5作目に当たる。
『風とゆききし』はリサイクルと在宅福祉をドッキングさせた障害者福祉活動を4年に渡って追ったもの。自立しようとする障害者の姿が感動的だが、障害者の意思が反映されない運営にもカメラを向けている。今はドキュメンタリーのスタイルがずいぶん変化しているけれど、据えっぱなしで長回しする現在に通ずるようなスタイルも見える。
『風とゆききし』の助監督を務めた小林監督の話が面白かった。柳澤監督は岩波映画で土本典昭や黒木和雄の先輩に当たる。土本、黒木といった記録映画の巨匠が柳澤監督の前では直立不動だったこと、一方、柳澤監督は二人の後輩を尊敬し、刺激を受けたことなど。いい話でした。
僕は生前の柳澤監督に二度会っている。仕事ではなく、冬、京都の自宅で炬燵に入ってぼそぼそと雑談した。生真面目な話しぶりが記憶に残っている。どれだけ観客がいるか心配しながら会場に行ったけど、ほぼ満席。こういう地味な映画に人が集まるのは嬉しい。
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