« 『ビジランテ』 血と憎悪の物語 | Main | 上野・谷中・南千住を歩く »

January 01, 2018

今年の映画 MY BEST 10

Ma_rosa

今年もそんなにたくさんの映画を見たわけじゃないけど、年末のお遊びとしてベスト10を選んでみました。

1 ローサは密告された
今年はフィリピン映画の秀作が多かった。手持ちカメラが夜のマニラのスラムを走りまわる、骨太な人間ドラマ。密告と憎悪の連鎖のはてに、主人公が揚げ団子をほおばり生きる意思を露わにするのが感動的。

2 バンコクナイツ
バンコクに吹きだまった「沈没組」の日本人を通して見る、この国のリアルな姿。ロードムービーふうな後半では現実がふっと宙に浮き、ありうるかもしれないアジアが見える。

3 ブレード・ランナー 2049
リドリー・スコットとドゥニ・ヴィルヌーヴが見事に融合した。前作の美学を受けつぎつつ、ヴィルヌーヴらしい不安と懐疑の映画。ラスト、砂漠のロサンゼルスに降る雪が忘れられない。

4 オン・ザ・ミルキーロード
久方ぶりに会ったクストリッツァの世界に酔う。バルカンの陽気なリズムにのせて人間も動物も、戦争も愛も、ひとつの世界に融けてゆく。50代半ばになったモニカ・ヴェルッチが美しい。

5 マンチェスター・バイ・ザ・シー
ずいぶん古風な映画だけれど、風景も人間もじわっと染みてくる。離婚した夫と妻、叔父と甥、微妙な人間関係の微妙さを見事にすくいとった。

6 パターソン
ジャームッシュ健在。内容もスタイルも、映像で描いた詩。ニュージャージーの小さな町で、何も起こらない日々が、いちばん素晴しい。

7 立ち去った女
もう一本のフィリピン映画。冤罪で服役した女性の復讐譚を長回しカメラで見せる。路上に生きる貧しい人々の肖像と、哲学的つぶやきの取り合わせが新鮮な驚き。

8 お嬢さん
植民地朝鮮の支配・被支配の関係を、官能の支配・被支配に変換してみせた。被植民者のねじれた欲望、密室の暴力と笑い、濃厚なエロティシズムがいかにもパク・チャヌク。

9 エル ELLE
パリのブルジョア社会で繰り広げられる倒錯のゲーム。冷たい表情を崩さないまま欲望とエゴイズムを露わにするイザベル・ユペールがすごい。

10 彼女の人生は間違いじゃない
主人公は福島と渋谷を往復しながら、原発事故の補償金をパチンコにつぎこむ父との暮らしと、デリヘル嬢の日々。その内面は説明されず、切実さだけが伝わる。

番外(新作ではないけれど)
台北ストーリー 台湾ニューウェーブの幕開けを告げる傑作。
リュミエール! 最初の映画にはすべてがある。

ほかにリストアップした映画は、『午後8時の訪問者』『ノクターナル・アニマルズ』『密偵』『三度目の殺人』『彼女がその名を知らない鳥たち』『夜空はいつも最高密度の青空だ』『ホワイト・バレット』『静かなる叫び』『網に囚われた男』『変魚路』といったところ。一年間、おつきあいいただいてありがとうございました。


|

« 『ビジランテ』 血と憎悪の物語 | Main | 上野・谷中・南千住を歩く »

Comments

ELLE、評判が両極端だったので敬遠しちゃったんですが、やはり観なくちゃですね...

Posted by: onscreen | January 06, 2018 11:23 AM

明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします。
うわ~「ローサは密告された」が来たか!!とのっけからですみませんが、そうですよね、そうでした!私もこれを入れるべきでした!この作品の力には相当やられましたもの。
東京国際映画祭で、このメンドーサ監督に師事している監督の初長編作品「アンダーグラウンド」が上映されたのですけれど、そちらも良かったですよ。機会があれば是非ご覧になってください。

Posted by: ここなつ | January 06, 2018 05:29 PM

雄さんこんにちは。
ベスト拝見しました。
1,2,7,10は観てなくて残念です。
昨年は韓国映画をベストに入れなかったのですが、レベルが高くて面白い作品ばかりでしたね。
いつも雄さんの鑑賞リスト参考にさせていただいています。
今年もよろしくお願いします^^

Posted by: 真紅 | January 07, 2018 11:11 AM

onscreenさん、コメントありがとうございます。

「ELLE」は実に面白く見ました。好みなんです、こういう映画。日本で言えば谷崎潤一郎か江戸川乱歩の世界ですかね。

Posted by: | January 07, 2018 10:52 PM

ここなつさん、コメントありがとうございます。

去年は3本のフィリピン映画、どれも面白くて迷いました。なかでも「ローサ」でした。
「アンダーグラウンド」はここなつさんのレビューを読んで気になっていました。見る機会があるといいのですが。

Posted by: | January 07, 2018 10:55 PM

真紅さん、コメントありがとうございます。

韓国映画、「密偵」も「哭声」もよかったですね。好みからいうと「お嬢さん」でしたが。

「マンチェスター」のていねいさ、空気感も大好きです。じわーっと染みてきて、あとにのこる映画です。

真紅さんの感性にはいつも刺激を受けます。
今年もよろしくお願いします。

Posted by: | January 07, 2018 11:01 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 今年の映画 MY BEST 10:

» NEW YEAR 2018 & 2017_BEST MOVIE (お気に入り洋画・日本映画) [映画雑記・COLOR of CINEMA]
2017年 洋画・日本映画ベスト10 断り書き : カウリスマキ監督『希望のかなた』大林宣彦監督『花筐/HANAGATAMI』と評判の瀬々監督『8年越しの花嫁』未見 ●2017年_洋画お気に入りベスト [Read More]

Tracked on January 03, 2018 03:33 AM

» 2017年の映画ベスト10! [映画批評的妄想覚え書き/日々是口実]
  『The NET 網に囚われた男』   『ネオン・デーモン』   『男と女』   『哭声/コクソン』    『草原の河』   『光』   『ウィッチ』   『パターソン』   『あゝ、荒野(前篇、後篇)』   『南瓜とマヨネーズ』          (観た順に10作品)  少し遅れてしまったけれど2017年の10本を。  『The NET』はご贔屓のキ...... [Read More]

Tracked on January 04, 2018 01:28 PM

» 2017 真紅のthinkingdays Best 10 of the movie [真紅のthinkingdays]
 昨年の劇場鑑賞は132回。6回リピート鑑賞し、旧作を4本鑑賞しました。 新作は122本観ています(前年比108.9%)。洋画102本(83.6%)、邦画20本(16.4%)。 前年に比べて邦画が減っています。2016年は邦画が大豊作だったからな~。 自宅では38本(再見含む)。全部で170本(前年比123.2%)鑑賞です^^  2017年に劇場鑑賞した新作映画からベスト10を選...... [Read More]

Tracked on January 07, 2018 11:10 AM

» 2017 MY BEST MOVIE TOP 10 [日々“是”精進! ver.F]
詳細はφ(.. ) https://plaza.rakuten.co.jp/brook0316/diary/201712250000/ スター・ウォーズ/最後のジェダイ オリジナル・サウンドトラック [ (オリジナル・サウンドトラック) ]価格:2916円(税込、送料無料) (2017/12/25時点) ... [Read More]

Tracked on January 08, 2018 06:32 AM

» 2017年マイベスト45(おまけで第13回シネマ停留所映画賞) [或る日の出来事]
「ベスト10」だけでは、つまらない! 全部に順位をつけましょね! という、毎年毎年恒例のお遊び。 [Read More]

Tracked on January 08, 2018 07:35 AM

» 今年のベスト1・・・映画編 [あーうぃ だにぇっと]
年末にあたり今年も映画鑑賞の総括を試みることにした。 [Read More]

Tracked on January 08, 2018 08:44 AM

» 2017年映画ベスト20 [シネマ・ジャンプストリート 映画のブログ]
明けましておめでとうございます!(2回目) 遅ればせながら、2017年マイベスト映画を発表します。 総括 2017年に日本でお目見えとなった映画のうち、鑑賞本数は80本。(鑑賞作品は後述) うち60本が洋画、20本が邦画と、例年に比べ邦画が少なめ。 2016年は近年稀にみる邦画の当たり年でしたが、2017年は興行的にも作品の質としても、洋画が少し上回っていた一年だっ...... [Read More]

Tracked on January 09, 2018 09:20 PM

« 『ビジランテ』 血と憎悪の物語 | Main | 上野・谷中・南千住を歩く »